船木亨のレビュー一覧
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コースで言うところの前菜
入門書としてはあまり評価できない、というのが第一印象であろう。
これは著者のエッセイである。いつまで経ってもメルロ=ポンティについての解説や解釈などは登場せず、著者の実体験に基づいた様々な「出来事」を淡々と記述し、その支えのためにメルロ=ポンティがたびたび顔を出す。
だから入門書としてはあまりお勧めできない、と言うのが正直な意見である。
だが、メルロ=ポンティの思想を「コース」と例えるなら、この書物は非常に上品な「前菜」だと言えるであろう。
食欲を刺激させられ、まるでこれからくるスープやメインを取りたくなるかのような、そんな書物。
そうしてはたと気付かされるのだ。
そうだ「学問」と -
Posted by ブクログ
メルロ=ポンティの解説ではなく、根源的な「問い」に対して、メルロ=ポンティとともに考察していく、という体裁。哲学とは根源に向かい、そこから生きる力を得ていくものであることを実感した。書名と内容の乖離はあるが、内容的には非常に良書。
以下、気になった記述
・人生に意味はない。なぜなら、意味というのは人生の中にあるものであって、人生そのものについて語れるような概念ではないからである。
・「われわれは意味の刑に処せられている」
・正義の味方がパロディにされた原因に、TVという傍観者的なメディアの存在が考えられる。
・TVは、それを見ている多数者を思い出させるような独特のコミュニケーションをしてくる -
Posted by ブクログ
「メルロ=ポンティ入門」というタイトルですが、メルロ=ポンティの哲学に現われる独創的な概念をわかりやすく解説することをめざした本ではありません。本書では、著者自身がメルロ=ポンティの思想という視点に立つことで、倫理学上の問題についてのどのような光景が見えてくることになるのかということを語った本であり、すぐれた哲学的実践の試みだということができるように思います。
著者はひとまず、人間の自由を高調したサルトルの実存主義に対するメルロ=ポンティの位置づけを、通説にしたがって紹介しています。そこでは、具体的な状況や他者に取り囲まれつつ、そのなかで創発的な行為をおこなうわれわれのありようを語ることが、 -
Posted by ブクログ
序章
1 哲学に入門する
2 実存主義
3 メルロ=ポンティの思想
4 人生の意味
5 人間は意味の刑に処せられている
第一章 ヒーロー
6 となりの火事のこと
7 ヒーローになるとは
8 現代の正義
9 歴史の終焉?
10 歴史に一体化する
11 生身のヒーロー
12 ヒーローの理由
13 出来事のモラル
14 決断
第二章 愛
15 小さな出来事
16 マキアヴェリ再考
17 日常生活に埋もれて
18 愛のはじまり
19 時間と歴史
20 真の愛と偽の愛
21 形而上学的欺瞞
22 愛の精神分析
23 性
第三章 思考と実践
24 間身体的なもの
25 準意識的なもの
26 あきらか