【感想・ネタバレ】メルロ=ポンティ入門のレビュー

あらすじ

われわれはこの世界に生きており、現代の歴史に属している。それにしては、そのことがぴんとこない。世界や歴史と無関係に、ささやかな人生がここにある。だからといってとるに足らないことなど何一つなく、ものごとを考えて決断する時には、歴史の論理の中を、同じ世界の他者たちとともに生きる。現実的とはどういうことで、真実を語るとはどのような意味か。メルロ=ポンティ哲学をひもときながら、われわれのもとに到来する出来事を真剣に取扱う姿勢について考える入門書。

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コースで言うところの前菜

入門書としてはあまり評価できない、というのが第一印象であろう。
これは著者のエッセイである。いつまで経ってもメルロ=ポンティについての解説や解釈などは登場せず、著者の実体験に基づいた様々な「出来事」を淡々と記述し、その支えのためにメルロ=ポンティがたびたび顔を出す。
だから入門書としてはあまりお勧めできない、と言うのが正直な意見である。
だが、メルロ=ポンティの思想を「コース」と例えるなら、この書物は非常に上品な「前菜」だと言えるであろう。
食欲を刺激させられ、まるでこれからくるスープやメインを取りたくなるかのような、そんな書物。
そうしてはたと気付かされるのだ。
そうだ「学問」とは、ただ受動的に知を受け取ることではない。
自らの興味や好奇心を刺激され、そこから自らの意志で向かおうとする、それが「学問」に対する、あるべき姿勢ではないのだろうか、と。
「人生とは何か」と言う根源的かつ原始的な問いに、我々は船木氏に誘われる。もっと学ばなければ、いや、もっと学びたい、と言う意欲に駆り立てられる。
「知覚の現象学」や「意味と無意味」をただ機械的に消化し、「知識を蓄えた」などと傲慢になるだけでは「意味」がないのだ。
この意欲、コースを平らげてもなお食べ続けようとするあくなき意志、本書は、そんな思いを十二分に焚き付けてくれるのだ。
だから入門書としてはお勧めできないかもしれないが、自らの背中を押し、メルロ=ポンティ、そしてそこから派生する数多の「学問」への冒険心を駆り立てる、素晴らしい一冊である。


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2022年01月19日

Posted by ブクログ

読み終えました。
次は、『知覚の現象学』です。
(2015年09月18日)

2回目です。
2007年2月12日に、一度、読んでいます。
(2015年09月02日)

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2015年09月18日

Posted by ブクログ

メルロ=ポンティの入門書のはずですが、著者もあとがきで認めている通りにメルロ=ポンティの考えと著者の考えとが混在してしまっていて、メルロ=ポンティの思想を系統立てて理解するのには分かりにくくなっています。しかし、「なぜ、そういう問いを立てるのか」という観点から哲学的な諸問題を論じているので、それはそれで面白いと思います。ただ、本書を購入する人間の動機を考えると、もうちょっと親切であってもいいかなという気はします。むしろメルロ=ポンティの思想をある程度理解している読者向けか。

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2011年11月14日

Posted by ブクログ

メルロ=ポンティの解説ではなく、根源的な「問い」に対して、メルロ=ポンティとともに考察していく、という体裁。哲学とは根源に向かい、そこから生きる力を得ていくものであることを実感した。書名と内容の乖離はあるが、内容的には非常に良書。

以下、気になった記述
・人生に意味はない。なぜなら、意味というのは人生の中にあるものであって、人生そのものについて語れるような概念ではないからである。
・「われわれは意味の刑に処せられている」
・正義の味方がパロディにされた原因に、TVという傍観者的なメディアの存在が考えられる。
・TVは、それを見ている多数者を思い出させるような独特のコミュニケーションをしてくる。
・TVこそ、だれしも傍観者であるような、最も強力な現代の正義である。
・「歴史の与える状況のまえでは、われわれは自由な個人ではなくて、フランス人であったり、労働者であったり、相互にそれぞれの資格でしか働きかけあわない、もっと一般的で匿名的なひとである」
・「決断とは引き受けられた状況である」
・そうした議論(理屈っぽい問い)は、事情が切羽詰まっていない穏便なときに、理論的に考察する結果として生じるのであるが、実践における真実は、不可避的にそうした議論を虚しくさせる。
・わたしがわたしにとっての他者になるのに、時間が必要だ。
・疑惑という状態は、行為自身が疑わしいものであるかぎりにおいて、行為そのものから、やむをえざる勢いで沸いてくる。
・本来、他者とは、対象に帰属させる以前に、差異について意識されたもののことであり、むしろわたしのなかにあってわたしでなく、あるいはわたしのそとにあってわたしであるような、わたしを否定したりするところの存在である。
・「哲学はすべての事実、すべての経験に接しながら、ひとつの意味がおのずから獲得される豊穣な瞬間を捉えようとする。真実とは、存在するのはただ一つの歴史、一つの世界だということを前提しながら、これを事実としても成立させるような生成である。その真実の生成に対して、哲学はこれをわれわれのものとして取り戻し、あらゆる限界を超えて推し進めるのである。」
・意味は存在するものではなく、生成するもの。
・相手の運命に巻き込まれるのに躊躇するような半身の姿勢では、相手は自分の聞きたい助言しか、聞こうとはしない。
・世界の諸対象は、われわれがしぐさを相互に了解しているとき、そのしぐさを巡身体動作のネガティヴな形象として現れる。
・「われわれが発見したものは、意味という語の新しい意味である」
・構造主義
・語る主体とは、他なるものを他なるもののままに抱懐した、そうした奇妙な主体である。
・メルロ=ポンティのいう「ひと」は、利己的で無責任な匿名ではなく、出来事に出会うに当たって、これこれの社会的地位や思想や性や見せかけを超えて、ただの人間として立ち会っている、そうした普遍性を持った存在のことである。そこでは、みな剥き出しの身体をもっていて、おなじひとつの世界に属しており、ひとりひとりが自由に出来事に参画する、そのかぎりで出来事を捉え、そして語るひとである。--とりわけ、死に迫られるような極限的な状況では、そこに「ひと」が現れ、、まさにそのひとの存在が賭けられる。(P220)
・メルロ=ポンティのいう「わたし」とは、神ならもっているはずの絶対的視点を、決して獲得することはない。
・「時間を主体として、主体を時間として理解しなければならない」(P223)

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2017年10月08日

Posted by ブクログ

「メルロ=ポンティ入門」というタイトルですが、メルロ=ポンティの哲学に現われる独創的な概念をわかりやすく解説することをめざした本ではありません。本書では、著者自身がメルロ=ポンティの思想という視点に立つことで、倫理学上の問題についてのどのような光景が見えてくることになるのかということを語った本であり、すぐれた哲学的実践の試みだということができるように思います。

著者はひとまず、人間の自由を高調したサルトルの実存主義に対するメルロ=ポンティの位置づけを、通説にしたがって紹介しています。そこでは、具体的な状況や他者に取り囲まれつつ、そのなかで創発的な行為をおこなうわれわれのありようを語ることが、メルロ=ポンティのめざしたことだとみなされることになります。

しかし著者は、身体というテーマを掘り下げ、「両義性」などの概念を駆使しつつ実存主義と構造主義とのはざまに立つ思想家といった、既成のメルロ=ポンティ像をえがくのではなく、むしろわれわれがそのなかに立ちつつけっしてそのゆくえを見通すことのできない歴史のなかに立ちながら考えるメルロ=ポンティの思索のスタイルそのものにせまっていきます。そこで著者は、「ヒーロー」や「愛」といった独創的なテーマにそくして、粘り強い考察を展開することによって、メルロ=ポンティの思想のもつ有効性を示そうとしています。

本書を読んでメルロ=ポンティの哲学が理解できるようになるのかどうかよくわかりませんが、本書の議論そのものは非常に啓発的でおもしろく読むことができたように思います。

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2019年04月26日

Posted by ブクログ

実存主義について、生活の中での例など挙げながら説明してあります。
サルトルとの比較などもあるのでわかりやすいです。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

序章
1 哲学に入門する
2 実存主義
3 メルロ=ポンティの思想
4 人生の意味
5 人間は意味の刑に処せられている

第一章 ヒーロー
6 となりの火事のこと
7 ヒーローになるとは
8 現代の正義
9 歴史の終焉?
10 歴史に一体化する
11 生身のヒーロー
12 ヒーローの理由
13 出来事のモラル
14 決断

第二章 愛
15 小さな出来事
16 マキアヴェリ再考
17 日常生活に埋もれて
18 愛のはじまり
19 時間と歴史
20 真の愛と偽の愛
21 形而上学的欺瞞
22 愛の精神分析
23 性

第三章 思考と実践
24 間身体的なもの
25 準意識的なもの
26 あきらかなもの
27 おのずからなる疑惑
28 思考
29 うそ
30 まこと
31 超越
32 実践的認識

第四章 真実を語ることば
33 ことばの意味
34 ことばについてのことば
35 しぐさとしてのことば
36 意味の哲学
37 概念
38 ことばの起源
39 ことばと言語
40 言語の歴史
41 わたしは語る

終章
42 真実を語るしぐさ
43 主体
44 時間
45 現実性
46 すべてよし

あとがき

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2024年10月19日

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