出版社に入社し、受付嬢をすることになる新入社員みのりの目を通して、仕事とは何ぞや?ということが淡々と描かれる。一流の出版社に入社しても仕事とは楽しい、面白いことばかりではなく、『つまらないことでも我慢できること、そしてその我慢のなかでも何かを忘れないことではないか』とみのりは思うのだけれど、やせ我慢
...続きを読むのように思うのではなく、例えばものを書く仕事も受付嬢も、事務の仕事も全てが相対化されている。その相対化のされかたがさすが、夏石鈴子さん!という感じ。ただ、若い女性でこんな風に思える人は少ないだろうなあと思わされるが、やはり仕事の対象(会社の内の人間や、人ではなくものであっても)に素直に向き合って、いらっしゃいませとその都度ちゃんと言える気持ちがあるかどうかという当たり前のことが多分一番大事なのだ。ただ、夏石鈴子さんの持ち味である真っ当さは恋愛小説のほうがいいような、「バイブを買いに」や「家内安全」のほうが個人的には好みです。