小川国夫のレビュー一覧
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三部からなる連作中篇。人生の苦悶に行き当たったとき、ある者は自らを殺め、ある者は他者を殺め、またある者は人間存在を逸脱して馬に転身し……馬 に、転 身 し ! 冒頭からいぶし銀な文体と内容が展開されるところ、第二篇では突然のぶっとんだ、怪奇的な脱皮におののかされた。
物語は海辺の集落が舞台。命のやりとりはすべて海に面した崖や岩場で繰り広げられるし、彼らの思考は波に弄ばれているような、風に煽られているような、そんな逼迫した趣がある。
とにかく人の心のあり様は重苦しく、海も黒黒と不気味である。
ただ、人物ひとりひとりの心理を細やかに描く一方で、広大な太平洋、原初としての海の存在感が圧倒的で、人の -
Posted by ブクログ
シチリア・ギリシャのオートバイ旅行体験を
志賀直哉ふうの「筋のない小説」としてあらわした連作に
加えて、戦時下すごした灰色の青春もの数点
昭和32年に私家版として500部製作したが一冊も売れず
同人誌を通じて島尾敏雄に拾い上げられるまで、8年かかったという
執筆時期から、日本流ビート・ジェネレーションと見ることも
可能かもしれない
「枯木」 どんな理不尽も神の与えた試練だから受け入れなくてはならない えー 「貝の声」 間男に見間違えられたことがきっかけで おっさんと少し仲良くなる 「エリコヘ下る道」 オートバイ事故の被害者と加害者が ともに死にかけて互いを思いやる 「重い疲れ」 夕方までに目