小川国夫のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
三部からなる連作中篇。人生の苦悶に行き当たったとき、ある者は自らを殺め、ある者は他者を殺め、またある者は人間存在を逸脱して馬に転身し……馬 に、転 身 し ! 冒頭からいぶし銀な文体と内容が展開されるところ、第二篇では突然のぶっとんだ、怪奇的な脱皮におののかされた。
物語は海辺の集落が舞台。命のやりとりはすべて海に面した崖や岩場で繰り広げられるし、彼らの思考は波に弄ばれているような、風に煽られているような、そんな逼迫した趣がある。
とにかく人の心のあり様は重苦しく、海も黒黒と不気味である。
ただ、人物ひとりひとりの心理を細やかに描く一方で、広大な太平洋、原初としての海の存在感が圧倒的で、人の生のあはれというものを感じずにはいられない。
また、はじめ二篇は三人称小説でごりごり攻めてくるのだけど、最後の一篇だけ今度は村娘の一人称語りに転じ、つまり急にころっとかわいげがでてくるのも印象的。終末的に暗い情景に、好きな人に抱きかかえてもらえるなら怪我もうれしい、なんて思ってる自分おかしい、と胸キュン独白が飛び出してくるからいろんな意味で胸に迫る。 -
Posted by ブクログ
シチリア・ギリシャのオートバイ旅行体験を
志賀直哉ふうの「筋のない小説」としてあらわした連作に
加えて、戦時下すごした灰色の青春もの数点
昭和32年に私家版として500部製作したが一冊も売れず
同人誌を通じて島尾敏雄に拾い上げられるまで、8年かかったという
執筆時期から、日本流ビート・ジェネレーションと見ることも
可能かもしれない
「枯木」 どんな理不尽も神の与えた試練だから受け入れなくてはならない えー 「貝の声」 間男に見間違えられたことがきっかけで おっさんと少し仲良くなる 「エリコヘ下る道」 オートバイ事故の被害者と加害者が ともに死にかけて互いを思いやる 「重い疲れ」 夕方までに目的地を目指す急ぎの旅だが いくつかの出会いはあった 「ナフプリオン」 子供の頃に聞いた伝説の地がいまここにあると知った 「寄港」 港町でつまらないものを売りつけてくる乞食にぶちきれた 「スイスにて」 スイスでは会話のテンポがゆっくりになった 「シシリー島の人々」 知らない人にガソリンを分けてもらったが 宿屋ではぼったくられそうになりずうずうしい子供につきまとわれる 「エレウシスの美術館」 日本人とドイツ人がギリシャの美術館で知り合う 「アポロンの島」 各国からミコノス島に集まった若い旅行者と共に自由を満喫する しかし後事を恐れて欲望に身を任すことはできない 「海と鰻」 著者の実家は有力な商家なので 周辺住民はつまらぬことにも気を使ってくるのだった 「箱船」 喧嘩の加勢かなにかを頼みにパシリが来る話 よくわからん 「東海のほとり」 親友が人妻と仲良くやってるような気がする しかし自分はどちらに嫉妬してるのかよくわからない 「雪の日」 実家の工場で働いてたやつに命令される夢をみた これだから戦争は嫌なんです 「お麦」 死に掛かってる友人を見舞って 変な夢の話を聞かされる 「夕日と草」 生活の不安と男性嫌悪 「動員時代」 不良の仲間を抜け出して徴兵のがれの道を選んだ自分はなんにも間違ってない ナメんな 「海の声」 他国言語を学んでも使い道がなきゃ宝のもちぐされ 教師にでもなるしかない 「遊歩道」 旅に理由が必要か? 男の子は冒険のロマンが好きなんだ 「大きな恵み」 家畜消費の帳尻合わせにもロマンが必要 これは闘牛のお話だよ 「ボス」 悪のロマンチストたちが腹をさぐりあう 「大きな森」 仲間が増えることは自分をバカにする人間が増えることだ その現実に耐えられない