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地下鉄サリン実行犯の死刑囚Yと交流する作家の「私」。こんな「いい人」がなぜ? オウム真理教の真実を追ううち、自身が制御できなくなり…人のグロテスクな自我を抉る衝撃のノンフィクション・ノベル。
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Posted by ブクログ
田口ランディ『逆さに吊るされた男』河出文庫。 地下鉄サリン事件の実行犯・林泰男死刑囚との交流をもとに描いたノンフィクション小説。 バブル経済が終焉を迎え、世間が再び経済的な混乱に喘いでいた暗い時代。1995年3月20日の朝のラッシュアワー時に発生した地下鉄サリン事件は死亡者14人、負傷者約6,3...続きを読む00人と多くの犠牲者を出した世界でも類を見ないカルト宗教団体による無差別テロ事件。当時は同年1月に発生した阪神淡路大震災と共に非常な衝撃を受けた。そんな事件の実行犯の語る事件の裏側と実行犯の思考が生々しく描かれる。未だに犠牲者の多くが後遺症に苦しみ、オウム真理教の残党は細々と活動を続け、公安がそれを監視し続けている。事件は未だに継続中なのだ。 地下鉄サリン事件の5人の実行犯。4人は死刑が確定したが、1人は何故か無期懲役となる。罪の重さと与えられた罰の重さ……生と死に関わる重大な判決の明暗を分けたのは『反省』。主人公の作家の羽鳥よう子は兄を失い、夫とも離婚し、作家として自立を目指す中、林泰男死刑囚と交流を続け、真実を追ううちに次第に自身を制御出来なくなっていく。 小さなヨガの研究団体として始まったオウム真理教は教祖をはじめとする教団幹部の欲望を満たすために奇蹟をでっち上げ、カルト化していく。この世で自分たちに叶わぬものは無いと自らを洗脳した挙げ句に暴走を始めた教団は、欲望や奇蹟の成就を阻害する敵である国家と世間に対して無差別テロという形で牙を剥く。解脱を目指しながら、欲望を満たそうとする宗教団体の矛盾。複雑なカルト教団の事件を裁判員裁判という形式で、裁判の素人に裁かせようという不合理さ。 本体価格880円 ★★★★★
これは、死刑囚との交流という形をとった、不思議な「私小説」だった。文庫版で巻末に、執行後に追記されたあとがきがあったおかげで、現実に戻れた。人が未知なるものに巻き込まれていく感覚を疑似体験した思い。
この人の文章はやっぱスキだな と思っていつも読んでいるのだけれど、その理由がわかったのが本書。この人はとても人間らしく、またそれを隠すことなく、名前を変えた主人公としてそれを表現する。目次もなく数字で区切られたchapterの領域が終わる終盤、そこで描かれているのは魔境。本書でもよく登場する言葉で、...続きを読む魔境については自分にも思い当たるフシがあり圧巻のgrooveに涙をにじませながら読み進めた。映画のエンドロールのような余韻が残る重厚な良書。
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