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太郎はいま,身をやつした民族学者となって,旅に出る.縄文土器を発見し,東北,沖縄,そして韓国へ.かつてパリで民族学を学びバタイユらと親交を深めた太郎が,類まれな感性で見出した日本とは.その道行きを鮮やかに読み解き,思想家としての本質に迫る.Bunkamuraドゥマゴ文学賞,芸術選奨文部科学大臣賞受賞作.
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Posted by ブクログ
20年ほど前にみすず書房から、また2010年頃ちくま学芸文庫からシリーズ本として岡本太郎の本が刊行され、今でも文庫本の『今日の芸術』などは書店で良く目にするが、彼は現在、どのように評価されているのだろうか。 彼の絵を見てもあまり自分の好みではないなあと感じていたのだが、何冊か彼の本を読んだときに...続きを読むは、その感性・直観の鋭さに大いに感心したことも印象に残っている。 本書は、主として岡本太郎の著作を通して、<思想家>としての太郎にその本質を見出そうとする試みである。 太郎の思想形成に何と言っても大きかったものは、太郎のパリ体験だと著者は言う。1929(昭和4)年、18歳のとき、父母の渡欧に同行した彼は、その後パリで一人暮らしを始め、1940(昭和15)年の帰国まで滞在した。当時のパリは文化、芸術の中心であり、パリが世界だった。そこで彼は、抽象芸術運動やシュルレアリスムに触れ、バタイユ、クロソウスキー、カイヨワなどと交流する。そして、マルセル・モースに民族学を学び、ミュゼ・ド・ロム(人類博物館)で世界中の地域から収集された民族資料に接し、「想像を超えた人間の生き方の多様性、その凄み」を知らされる。 以上を前史として、帰国そして敗戦を経ての太郎について、いわゆる縄文土器の発見から、日本紀行三部作/『日本再発見』『沖縄文化論ー忘れられた日本』『神秘日本』へと展開していく太郎の道行を追いかけていく。そのキーワードとなるのが ”身をやつした民族学者” 。太郎は東北、沖縄、そして韓国と旅をし、そこで人間の営みを見、眼差しを向け、思いを語る。太郎の日本紀行は、「世界的であると同時にローカルな新しい伝統」創出のための試行錯誤の現場と化していったのだと著者は述べる。芸術や思想における世界性とは、それぞれの拠って立つ生の現場から繰り広げられてゆく、民族や風土の泥にまみれた闘いの中から獲得されてゆくものではなかったか、それを太郎は信じようとした、と(401頁)。 改めて、岡本太郎の本を再読してみたくなった。
生活や営みがあり、そこに命や生があるからこそ惹かれるものや動物的・本能的・神秘的な存在としての人間というのも然り。岡本太郎さんの作品や言葉が私の心を掴んだのもそういう根源的な事があるからなんだろう。そして日本を離れたからこそ思う日本についても。
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岡本太郎の見た日本
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