書店員のおすすめ
寝込みを襲っておきながら「忘れろ」と言い捨てて去っていくドライな美人受け・神谷と、目覚めたら同期に襲われていたという非常事態にも関わらず「お前とつきあえ」と言えちゃうガサツな強面攻め・梶。色々こじらせてそうなアラフォーエリート同士の恋愛、押し寄せるエモの予感で、読む前からすでに熱いものが胸にこみ上げてきます。
1人で生きていけたはずの男同士がかけがえのない存在と出会って、それに気づかないふりをしようと足掻いたり、不慣れな感情の揺れ動きに苦しんだり、あえて爛れたやり取りをしてみたり……。そんなエモーションを抑制の効いたドライなタッチで描くことにかけて、里つばめ先生の右に出る者はいないはず。
一読してすぐに「きゃーーかわいーーー♡」と萌え転がる感じではないかもしれませんが、読み込むほどにじんわりと萌えが広がっていくような、スルメ系の魅力にあふれています。かと思えば、不意に挟まる公然イチャイチャ(会議中の耳打ち)なんかもあるので、結局萌え転がってしまうのかもしれません。
本作は『GAPS』シリーズ、『DOGS』シリーズに次ぐ、里先生の人気作『俺が好きなら跪け』(すべて大洋図書)のスピンオフです。マイペースかつ執着系な攻め・加藤×プライドが高いけどほだされ系な受け・松田のフレッシュな恋愛がキュートで、本作とは好対照。里先生のA面とB面を楽しむような気持ちで読み比べてみてください。