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Posted by ブクログ
何故朝日新聞の記者だった著者が全くの未経験から猟師とコメ農家を始めたのか。
生きるということは、食うということ。他者の命をいただくということ。当たり前のことなのに、世間大多数の人は普段全く意識しないテーゼ。
スーパーやコンビニで既に用意された「モノ」ではなく、自らの手で直接「他者の命」を調達することで、そのテーゼに意識的になることに決めた。
そんな著者の思考の流れ、感情の動き、何を大事にするかなどがとても丁寧に記されている本作。
流石朝日新聞記者、筆がすごく上手い。描写が巧みで教養の高さが感じられる。好きなタイプの文章だった。
政治的なスタンスの濃さや若干の説法じみた物言いを感じなくもないが、かえってそれが適度な距離感で読めて良かったかもしれない。
これはたまに読み返したくなる、良い本だった。
Posted by ブクログ
半農半Xを地で生きている著者が、自身の狩猟や米づくりの経験をもとに、生きること、経済、戦争・平和などについて思索をしたものをまとめたエッセイ。実際の狩猟や精肉の描写やコメ作りの実際の体験談から、半農半X(ライター)、自然資源を活用した生き方、贈与経済による人間関係の形成、物質文明へのアンチテーゼの提示・人間の能力の維持、資本主義から半歩ズレた生活、オルタナティブな生計手段を複数持った生活の提示などなど、内容は多岐に渡る。著者は、正に私が実現したい生き方を実践している人だ。
他方で、この生活のアプローチだけでは、開発途上国の環境問題や社会問題、地球規模でのエネルギー問題、国家間の戦争・安全保障の課題を解決することはできないということもよくわかる。例えば、アフリカのマラウイでは、エネルギー革命が起きていないための薪炭利用による森林破壊や、生産性の低い農業や産業がないことによる労働人口の農業への集中による土地の乱開発、産業がないことによる高等教育人材の受け皿がない問題とそれによる教育の不振などなどの課題がある。これらには、やはり産業の育成、生産性の向上、ガスや電力といった代替エネルギーのインフラ整備など、経済発展による課題の解決が必要だ。また、地球規模の環境問題の解決のためにも、イノベーションによる再生可能エネルギーの開発・普及なども必要だと思う。また、戦争抑止力の観点からは、経済成長による武力の維持なども必要だろう。こうした課題に対応するには、資本主義経済による経済発展を持続可能な開発に変えていくことが必要であり、その手段が、SDGsやESG投資、持続可能な調達なのだと思う。
著者のような、半農半Xの生き方を是として憧れているし、自分も実践したいと考えているにも関わらず、持続可能な開発による資本主義経済の発展に相当拘っている自分がいることに気が付かされた。
だがしかし、本当にSDGsやESGなどの仕事に、自身はこれ以上関わりたいのだろうか。なんだか胡散臭いし、やりがいを感じられなくなっているのが本音なのではないのか。そうした資本主義・成長モデルに自分がこだわっている一方、その中で生きることに、違和感を感じてそりが合わなくなり、いい加減、辟易してやる気をなくしているのが自分の本音ではないのかとも思う。
正直、悩む。二つの価値観の中で、身が割かれる。まだ自分の生き方を決めきれない。このままでは、動けない。どうすればよいのか。
そんな中、著者の提示してくれた「ばっくれる」という姿勢が、自分の道を示してくれるような予感がする。そりが合わなくなったその場から、逃げる(180度違う方向に進む)のではなく、真面目さや真剣さを放りだして、明後日の方向へ鼻歌を歌いながら、ふらふらと進む「ばっくれる」という姿勢。「ばっくれる」ということは、目的地への地図など持たず、自分でもわからぬままどこかへ向かうという姿勢だと著者は説く。そんな姿勢で、自分も次の生き方を探ってみたいと思う。
半農半Xの、Xを何にするか。願わくば、何等か持続可能な開発に少しでも貢献できるXを見つけて、今の仕事と東京から「ばっくれたい」と思う。
それにしても、こうした半農半X・田舎での定常経済での暮らしの本には、文化人類学が出てきて、贈与論が語られるのが興味深い。資本主義の貨幣経済へのアンチテーゼとしての贈与経済が、周縁の田舎ではまだ生きているということなのだろう。
Posted by ブクログ
社会からリアリティがなくなっている。その通りだと思う。「動物は可哀想だから車でひけないけど植物は踏んでも悲しくないから菜食主義が良い」とか「可哀想だから獣を殺すな」とか「電気を使いまくってるのに原発反対だ」とか何言ってんだ?と思うけど、頭でっかちになってリアルが見えていないんだろうなと思う。社会はもっと複雑だし、断片的にしか見えていない物事の先を想像することが大事だと思う。
まぁでもリアルがなくなるのも仕方ないとも思う。高校卒業まで過疎中の過疎のような農村で育ったがそこはリアルで溢れていた。しかし大学で東京に出てからはリアルを失った。そりゃそうだ。都市は人工の産物でノイズは極力消される。自分が消費しているものがどう生産されてきたか想像する必要がなくなる。
都市での生活が長くなってリアルが年々恋しくなる。思考や行動が効率化され想像力や社会との繋がりが希薄になってきていることが恐ろしい。この本はリアルを取り戻すためのオルタナティブを示してくれていると思う。血を見たくないから猟はしたくないけど野菜や米をつくる生活に戻りたいなと思う。獣を獲れないかわりに、「いただきます」は忘れたくない。
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