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漢字の宿題が苦痛だった人も多いでしょう。小中学校では約二千字の漢字一つひとつについて、筆順、とめ・はねなどの字形、音読みや訓読み、部首などを習います。しかし、漢字を学び、楽しむために本当に大事なものとはなんでしょう。漢字学の第一人者が、漢字の意外な成り立ちや読み方の歴史、部首のふしぎなど、学生時代に知っておけばよかった知識を伝授し、真に必要な知識を解説、さらに望ましい漢字教育を提言します。
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Posted by ブクログ
確かに再入門である。齢五十年有余年を重ねてなお漢字についてこれ程知らないことがあったとは衝撃である。 文と字の違い、会意と形声、意符の成立ちなど、この本を手に取らなければこんな大事な事を知らずに生を終えるところだった。
漢字に関する知識を新たにする。学校の授業時間に割り振って大事なことを学ぶ。一時間目:漢字の数、二時間目:とめ・はね・はらい、って、そんなに大事なの?、三時間目:音読みと訓読みについて、四時間目:筆順について、五時間目:部首の不思議、六時間目:学校教育と常用漢字について、ホームルーム:新しい時代と漢字...続きを読む。
良書。漢字について少し考えたことがある人なら、一度は疑問に思ったことについて、一通り説明をしてくれる。 漢字は何種類あるのか? 漢字の字形に正しい字形はあるのか? 漢字にはどうして様々な読み方があるのか? 筆順はどうして生まれたのか? 部首とは何なのか? 常用漢字とは何か? このあたりの6つの話題が...続きを読む取り上げられる。 個人的には、とめ・はね・はらいの字形と、筆順の教育に対する筆者のスタンスが好きだった。 歴史的に遡ると、「正しい字形」「正しい筆順」なるものは存在しないという結論になる。「木」という文字一つとっても、有名な書家でも縦画をはねて書いた人は多くいるし、書道字典によっては、むしろはねている方が多かったりするもののもある。 筆順についても、「右」と「左」の書き順がお隣の中国では、どちらも横画から書く例を挙げて、必ずしも正しい筆順などないことが示される。私たちがよく学校で習い、この部分何画目でしょうというクイズが出される筆順は、1958年(昭和33年)刊行『筆順指導の手びき』によるものであるそうだ。終戦直後の漢字改革にあって、教育現場の混乱を避けるために文部省が作った指針のようである。それがいつしか「正しい筆順」として権威をもつようになったのだそうだ。 いずれにせよ、字形と筆順に、こうでなくてはいけないという決まりはない。ただ、筆者は、文字が他人に何かを伝えるために生まれたものである。だからこそ、「土」と「士」、「末」と「未」のように、点画の長さや位置で意味の変わってしまうものは、しっかりと書き分ける必要があるし、歴史的に能率的だと考えられた筆順の知恵については敬意を払う。そのうえで、ただ一つの正しい字形と筆順に拘らずに、読みやすく、伝わりやすい字を書くことが大切だと言う。 筆者は、最後に、創作漢字コンクールと、「萫」と書いて「ハーブティ」とふりがなを振っていたカフェを例に出して、これからも新しい漢字が生まれるかもしれないということまで言っている。漢字について、その成り立ちの歴史をしっかりと理解したうえで、どこまでが許容されるべきで、どこは違っていてはいけないのか。そうしう漢字に対する心構えを身につけれる一冊だった。 学校現場等で、子どもの漢字指導に関わる人には、特に、ぜひとも読んでほしい本である。
<目次> はじめに 1時間目 漢字の数 2時間目 とめ・はね・はらい、ってそんなに大事なの? 3時間目 音読みと訓読みについて 4時間目 筆順について 5時間目 部首の不思議 6時間目 学校教育と常用漢字について ホームルーム 新しい時代と漢字 <内容> 予想通りの本で喝采した。それは...続きを読む、とめ・はねなどの問題と筆順の問題だ。以前から文字は他人が見て読めるように(もちろん丁寧に)書けることが大事で、とめ・はねなどや筆順は(ある程度)いい加減でもいいと感じていたからだ。著者によると、超有名な中国の書家などの文字も筆順は違うらしい。結局は戦後すぐに文科省(のある人が)個人的な指針として作ったものが一人歩きしたらしい。 また、以前から謎だった「法」「演」「漢」が「サンズイ」であることも解決した。結局は旧字体がとても大切である(「法」は本来「灋」。古代の裁判で羊がうそをついた人間を角で突き、川に流されることから)、ということだ。それによって本来の意味がわかるのだから。私は漢字の意味をとらえれば、さまざまな熟語(たとえば歴史用語なども)も間違えることなく書けるようになる、と考えているので、やっぱり我が意を得たりだった。
文章も平易ですらすら読める上、何より分かりやすいのが良い。最近のクイズ番組とかで漢字の正しい書き順の問題が出ていたりするが、本書を読むとそういった問題の意味のなさが非常によく分かる。小学校の先生方は指導要項があって仕方がないのかもしれないが、小学生の子どもを持つ親を含め、本書には一度目を通しておくと...続きを読む、子どもたちの漢字嫌いが多少なりとも減るのではないだろうか。これまでの教育指導の原点がどこにあったのか、も含めて漢字教育や漢字自体の考え方など、まさしく漢字再入門書として必携とも言える。
漢字再入門 楽しく学ぶために 著者:阿辻哲次 2013年4月25日発行 中公新書 漢字の数 日本で出版されている最大辞書「大漢和辞典」は5万305字。中国では「漢語大字典」全8冊に6万370字。「中華字海」には8万5568字。 中国は元素周期表も漢字 日本人が作った和製漢字は「国字」という。...続きを読む鯛、鰤、鰯、鮪、畑、榊、峠など 論語に使われている漢字は1355種類。詩人では李白が3560種、杜甫は4350種。日本の携帯電話で使えるのは6355種。 とめ、はね、は区別すべき? 例えば、「干」と「于」などは区別すべき。これは別字。しかし、木へんははねてもよく、手へんははねなくてもいい。これで×をつける先生は、漢字に自信がなく、印刷文字だけを頼りにしているからだろう。 木版を使った印刷文字の「明朝体」を作るときのデザイン上の問題で木へんはなねない、手へんははねるとなっただけであり、正しい形から逸脱しているものがある。印刷より正式とされた手書きの「楷書」を見れば、中国の有名書家の文字でも木へんをはねているものが多くある。 唐代の楷書の名手「顔真卿(がんしんけい)」が書いた「格」も木へんははねている。テストで×をつけられたら先生に「顔真卿(がんしんけい)」の文字を知らないのか、と言えばいい。 小学校の教科書は教科書体、中高は明朝体で印刷されている フォントのデザイン上の違いにより、「令」「比」「衣」「氏」など、混乱が起きている。教科書体だと「令」の下の部分はカタカナの「マ」となる。「比」の左側は教科書体だとカタカナの「ヒ」に近く、全体で4画だが、明朝だと5画に見える。衣、氏も、明朝だと一画多く見えるが、教科書体で書かれた画数が正解。 呉音、漢音、唐音 日本に読みかたが入ってきた時期による違い。5~6世紀ごろ呉音が入ったが、その後、中国の体制が変わって唐となり漢音が入ってきた。8世紀、桓武天皇は混乱を避けるために漢音に統一することを推奨した。しかし、日本においては呉音の一部が残った。 その後、平安中期に唐音が入る。唐代ではなく、宋、元、明、清代 「和尚」をなんと読むか? 鎌倉時代以後に伝わった曹洞宗、臨済宗、黄檗宗は「おしょう」、鎌倉以後に成立した浄土宗や浄土真宗も「おしょう」という唐音で読む。 平安時代に成立した律宗や法相宗、真言宗では「わじょう」と呉音。 天台宗や華厳宗は「かしょう」という漢音 書き順 時代や道具(筆、篆刻など)によって違う。日本と中国とも違う。 日本では「右」は「ノ」から、「左」は「一」から書けと習うが、中国ではどちらも「一」が普通。また、歴史上の有名書家は、右はどちらもあり。 学校では1958年に出た「筆順指導の手引き」を基準にしている。しかし、「本書のねらい」部分には、「ここに取りあげなかった筆順についても、これを誤りとするものでもなく、また否定しようとするものでもない」と書かれているにもかかわらずそれを無視して学校で教えている。 「魚」「燕」「点」の下の点々は、レッカ、レンガと考えるのは間違いだと思われる。全体が象形文字。 常用漢字表の文字は、日本人が日常生活で実際に使っているものばかりでなく、官庁の都合で入れたものがある。例えば、「朕」「御名御璽(ぎょめいぎょじ)」、「謄本」「禁錮」など。これらは高校までに教えなければいけないことになるけど、これを入試に出してもいいということになり、それはおかしい。 徳川光圀の「圀」は日本では使われているが、生まれた中国では使われていない。この漢字は、元々、則天武后が皇帝になって、「國」という字の中が惑につながるから不吉だとし、中を武后の「武」にした。すると。口の中に武が閉じこめられるのでダメとなり、世界全体を表す「八方」を入れた。
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