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人間が考えることなど動物は何もかもお見通しなのだ。二十八年間の会社員生活を終え自由の身となった小説家。並外れた美貌を持ちながら結婚に破れた女優。「鳥獣戯画」を今に伝える名刹を興した高僧。父親になる三十歳の私。恋をする十七歳の私。語りの力で、何者にもなりえ、何処へでも行ける。小説の可能性を極限まで追い求める、最大級の野心作。
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Posted by ブクログ 2018年04月04日
この作家のことを知っている訳ではないが、私小説のようなプロローグは自身が過去に何処かで経験した幾つかの場面を組み合わせて再現したものなのだろうな、と直感する。話の展開の妙ではなく切り取られた一つの場面に内在する数多の感情の一つ一つに意味を見出そうする文体は保坂和志を彷彿とさせる。自分自身が気付いてす...続きを読むらいなかった感情が何処から湧いてくるのか、それを探って言葉に投影してみる。ジャームッシュのオムニバスの中の短篇映画の一つを根掘り葉掘り解説したらこうなるとでも言うように。しかし、前後関係も何もかも無視して絡み合う融合した複数の感情(それを感情という言葉にした瞬間に言い表したい事の半分は指の間をすり抜けてこぼれてしまうように思うけれど)を解きほぐす事など出来るわけも無く、窮屈な言葉の表象に手放しで託してしまうことになる。それは創造による補遺を必要とし、省略によって因果律を成り立たせ、辛うじて物語の体裁を保ってはいるが元になった説明不可能な想いそのものではない。それ故、この小説の中で語られる、如何にも作家本人の経験談のようなものはすべてフィクションであるとも言えるし、かつ、作家の視点から見たの事実なのだと捉えて良いような気がする。 面白いのは、そこに他人の感情が絡み合って来ることを作家が見逃さないこと。その赤の他人の感情も引き受け、その過去をも言及(想像)する。それは次第に時を遥か隔てた過去の人物の来し方にも波及し、一体この小説はどこへ向かって行くのだろうと読者を訝しがらせるが、恐らく、あのプロローグの場面へと引き取られて行くのだろうことも、また、想像に難くない。 読んでいる時には自分自身の脳細胞がそれ程刺激を受けているようにも感じなかったけれど、いざ感想を記そうとすると次から次へと言葉が湧いてくる。存外、この不思議な小説に魅せられていたことを実感する。
Posted by ブクログ 2018年07月07日
あまりに過去に読んだことがない種の小説で、感想が書けませんでした。 幸い買って所有している本なので、近々もう一度読んでみたいです。
Posted by ブクログ 2018年01月30日
自伝風の小説.昭和の喫茶店がとっかかりとなって,美人と出会い京都から明恵上人へと広がって鎌倉時代から高校時代へと移りゆく,心象風景といった感じの物語.心の動きが少し言い訳がましいような気もするが,何に向かって心情吐露をしているのだろう,読者かしら.
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