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高度に発展した経済数学の本質を、70点に及ぶ図・グラフを中心に、直観的に理解していきます。本書では、「確率・統計編」として、正規分布曲線ができるメカニズムを学び、確率統計論で最も重要な原理とされる、中心極限定理の不思議に触れ、教養としてのブラック・ショールズ理論を身につけていきます。
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Posted by ブクログ
すごく良かった。ブラックショールズ理論の概略の理解を目的地にして、確率論の勘どころみたいなものを読み物として教えてくれる。これまで確率論にほとんど興味を持てなかったのだけれど、興味を惹かれるようになった。 学生時代に読んでおけば数学の学び方になったかもしれない。 190404
先行の「マクロ経済学編」に続く今作のテーマは「正規分布」。前著同様、自然科学に対する西洋科学のスタンスが、経済という人文系分野の現象を理解するメソッドにも適用されているという含意が底流にある。本著では、天体等の自然現象を観察して得られたデータのバラツキを、データそのもの持つ「バイアス」と、ノイジーな...続きを読む「ランダムネス」に分解して理解することがが可能であることが示され、その思想が金融工学で扱われる「ブラック・ショールズの公式」に目に見える形で(数式を見ればそうなっている、ということがわかる形で)取り入れられていることが紹介されている。他の方のレビューにもある通り、本著の方が論点がシンプルで理解しやすい。 数式をほとんど使わない初・中級編、やや数式が頻発する上級編という構成も前著を踏襲。基本的に上級編まで読んだ方がより理解が深まるとは思うが、ブラックショールズを論じる上で必須と思われる「テイラー展開」がほぼ端折られているので、結局上級編を飛ばしても直感的理解にはさほど影響しないかも(テイラー展開をまともに扱われたら私などの手にはとても負えなくなるが)。それでも、相対的なオーダーの大小を大胆に利用してバイアスとランダムネスを切り分ける「伊藤のレンマ」の解説は一読の価値あり。一般に精緻だと思われている数学が、現実世界に適用される場合には意外なほどの寛容さを見せることの驚きを経験できる。 他には、例えば様々な現象の分布状況を足し合わせると、それぞれの分布のバイアス部分が相殺されて純粋な正規分布が残されるという「中心極限定理」が、人間の顔写真を無数に重ね焼きしていくと徐々に平準化され最後には美女・美男子が現れるという話が想起され面白かった。この辺り、前作の「ミクロの集積→マクロ」とも繋がっている気がしなくもない。また「神」が定めて人間が変えられない部分と、人間が扱える部分を峻別するスタイルが、如何にもキリスト教的「西欧」だなあと思った。
一応理系の大学院を卒業しているものの、基礎的な統計学の勉強から逃げてきたので、本当に初歩的なところも理解できていないことに、なんとなく後ろめたさというか、世の中も重要なことから逃げているような気がしていた。 そんな中ひょんなことから統計学の勉強に手をつけるようになり、数年前に購入していた本書を再度...続きを読む手に取ってみた。あらためてしっかりと読み始めてみたけれど、めちゃくちゃ面白い。 自分の中で「とにかく世の中のたくさんのことは正規分布で表現できることが多い」くらいの理解し保てていなかったことに対して、パチンコやベルトコンベヤーなどの巧みなメタファーを用いて本質的な説明をしてくれる。ゾクゾクするほど面白い。 なるほどな。二項分布というものにおいて、その確率を50%として、nをどんどん増やしていくと正規分布になるのだな。
文系挫折経済学科出身修士にはベストな難易度。 語り口が面白いし、ストーリーテリングに全振りしたが故に枝葉は捨てていることもちゃんと書かれている。
近著「世界史の構造的理解」が面白かったので、既刊本を著者買いした。結論としては買って正解だった。 当方(文系)の能力不足により、上級編は「科学読み物」になってしまったが、確率・統計の基本を書名通り直観的に解説した初級編・中級編が非常に有益だった。 正規分布、標準偏差等の概念が真の意味で理解でき...続きを読むるようになったし、トレンドとボラティリティの違いも使える知識として記憶に残った。文系でも「実用書」として読む価値あり。
最新の経済学が物理数学と密接につながっていることがよくわかった。まさか変数分離が出てくるとは予想もしなかった。前著よりもこちらの方が読みやすく、意味深い。トレンドとボラティリティを忘れずに。
統計学を噛み砕いて分かりやすく教えてくれそうな本であってくれ!と思いながら手に取った。 正規分布に関する説明はかなり分かりやすく、今までの本の中で一番しっくりきた。正規分布とは何かというところの理解は統計学を学ぶ上で土台となるので、今後の学習にプラスになったはず。 誤差には2種類ある。 一定方向...続きを読むに現れ、予測しやすいもの=トレンド 左右均等に現れ、神の手によるもの=ボラティリティ 現代はトレンド要素がなくなり、ボラティリティの世界らしい(ITは例外であると思う。ハード面の豊かさかな)。 ボラティリティの世界とは、誤差が左右均等に現れる世界であり、いろんな事象が正規分布に従う。 以前「その数学が戦略を決める」で、絶対計算が優位になっていく世界について知ったが、それもボラティリティの世界であるからこそ。 もう一冊くらい統計の本読んで、必要性を理解したら自然に統計の勉強が捗ると信じている笑 To 統計学は最強の学問である
物理学と経済学の橋渡しとなる考え方を教えてくれる本の第2部「確率・統計編」。 ブラック・ショールズ式の理解をゴールに進む誌上レクチャーは、段々と見えないものがおぼろげに姿を現すという快感が得られる。
ブラックショールズ方程式の"気持ち"を噛み砕いて説明してくれる。著者のイメージは独創的で新たな考え方を与えてくれる。
面白かった。頭でイメージを描きながら読むといいかもしれない。以下、要約。 ❶初級編 ①確率統計論が本格的に進化したのが19世紀である。ガウスの貢献が大きい。ニュートン力学が17世紀に始まったことを考えると発展は遅れている。 ②ガウスの思考を辿ることが確率統計論を本質的に理解するのに必要と考える...続きを読む。ガウスは確率論を真正面から考えていたのではなく『誤差』を基準に考えていた。そして、この誤差を考えて導き出したのが『正規分布曲線』である。 ③誤差というものは2つに分類できる。1つは『一定方向に出る誤差』、もうひとつは『+方向と-方向に同じだけ出る誤差』である。前者は逆方向に修正かければ良いので問題にならない。ガウスが扱ったのはランダムに動く後者である。 これを株価の考えに落とし込むと、前者が『トレンド』といわれるものである。後者が『ボラティリティ』である。 そして、ブラックショールズは『ボラティリティ』を中心に扱うオプション価格の算式であり、ボラティリティが時間と共に拡大することを利用して利益を上げることを考えるのである。 ④標準偏差を考えるにあたり重要なのが2つ。1つは平均がどこか、もう1つがバラツキ具合(平均からの距離)である。 ⑤正規分布において、σは中心線から変曲点までの長さで表現する。 ⑥e*-x^2が正規分布を表す基本形であり、釣鐘型の曲線となる。 ❷中級編 ①確率論を学ぶのに重要な概念は3つ。1つめは最小2乗法、2つめは中心極限定理、3つめは確率過程とランダムウォークである。 ②最小2乗法とは、得られたデータが誤差でばらついて本当の値がわからない時、その真の値を割り出して、誤差を最小にするための手法である。 ざっくりいうと、中心がどこにあるのか測るために使う。 ばらつきが正規分布に基づくのであればその中心(平均)からの距離の2乗は最小になる。2乗する理由は精度が上がるからである。感覚的にも、中心に近いデータは数が多いが誤差が小さくなる一方、中心から遠いデータは数が少なく誤差が大きい。そのため、中心からの差を2乗することでデータのばらつきを測る精度を上げるのである。 ③様々な確率分布はたくさん集めて重ね合わせると、結局、正規分布に行きつく。ポアソン分布、ベキ分布、二項分布などは正規分布をベースに特殊化を行ったり、バイアスをかけた形で成り立っている。もっとも、二項分布は正規分布とはニワトリと卵のような関係で、試行回数が少ないと二項分布になるし、試行回数を無限回に近づけると正規分布になるからである。 ④経済予測する立場としては中心極限定理は極めて有用である。マーケットなどは多種多様な要因が重なり合って数字が形成されていくが、この定理に基づけば様々な確率分布は結局、正規分布に集約していくと考えることができる。 例えると、様々な光が集約すると、白色になるように全てを合成すると正規分布になり、人間が扱いやすいものになるのである。 ⑤金融市場では正規分布に基づくモデルは古く使い物にならないという話もよく聞く。ただ、プログラム売買の弱みは、なまじマーケットにフィットするプログラムを使っていると、皆が同じものを使い始めて結局一方向にマーケットが振れやすくなってしまうのである。他者を出し抜こうという動きが出れば出るほど、この呪縛からは逃れることができない。 あらゆる分布の始祖は正規分布であり、様々なプログラムを作っても、数多く集めれば結局は正規分布から外れることはないのである。 ⑥時間的な拡散の幅は√t倍で拡散していく。これは2次元でも3次元でも同じである。標準偏差がσの確率分布をn個集めてそれらを足し合わせるとそれらを合計した確率分布は√n・σとなる。 この時間の平方根と標準偏差σを掛け合わせたものが確率過程を考える上でポイントとなる。 ° ⑦オプションを考えるにあたって時間的価値は非常に重要な概念だが、それは確率過程を考えるにあたって利益は時間tに比例する形で拡大すると考えているからである。 ⑧経済全体を『トレンド』と『ボラティリティ』に基づいて考えてみる。例えば、名目成長3%程度の経済成長を世界経済は『トレンド』として想定している。これは指数関数的な動きを想定しているので、物質的な動きが連動するとは現実的には考えにくい。そのギャップをインフレという形が埋めるしかない。そもそも、現代金融が金利の計算を複利計算を前提としており、経済全体の前提を指数関数的に捉えざるを得ない状況になっている。 『ボラティリティ』で大きな役割を果たすのが金融だろう。特に、リーマンショック以降は先進国は量的緩和を行い、資産高にすることで資産効果が成長率底上げにつながった部分はあると思われる。 ❸上級編 ①確率微分方程式の中核をなす理論は伊藤のレンマである。 ②今までやってきたことはdx=Adt+Bdwで表すことができる。つまり、Adtは『トレンド』にあたる部分、Bdwは『ボラティリティ』にあたる部分である。 ここで欲しい答えはxという独立変数があって、その影響で動くy、つまりy=F(x)があって、これが時間tの影響でどう動くかが知りたいのである。つまり dy=○dtのようなものが欲しい。 ③天体力学を扱う視点からは上記のAdtの部分の答えが欲しいのである。Bdwはノイズであり、何とかこれを除きたい。それを可能にしたのが伊藤のレンマである。 ④これを解くのに必要なツールが『テーラー展開』である。いわゆる、近似値をとるためにF(x)を微分していくものである。例えばdx=0.1の場合、dx^2=0.01、dx^3=0.001であり、使うのは最初の2つか3つであり、あとは無視できるのである。 上記のAdtの『トレンド』だけ抽出するツールとしてはうってつけである。 ⑤ケインズ経済学では最も役に立つツールが等比級数の和とテーラー展開の2つといわれている。 ⑥テイラー展開をしていく中で極小の値は切り捨て、拡散半径が時間的にどれだけ拡大するかの式、dw=√dtを使って書き換えを行うことにより、dtとdwに分かれた式の抽出を行うことができる。 Bdwは『ボラティリティ』を表す式で、この中には+と-が混在しているはずである。そこでBtw^2の2乗というものがポイントになり、絶対値として評価すると正規分布を表す式として活用できるのである。 ⑦この伊藤のレンマはx→y→zのように多段式になっている場合も活用できる。通常は先に進むと式が汚くなって前進不能になるが、伊藤のレンマで単純化することにより、前に進めるようになるのである。 ⑧最終的なブラックショールズの式に至るのに、重要なツールとしてフーリエ級数というものがある。これは、いろいろな三角関数の動きを使って目的となる関数を描こうとする試みである。 ❹測度とルベーグ積分 ①経済などは本質的にはデジタル(=買う、買わないの2択)などで表現されるものであり、いわば不連続なものである。 この不連続なデジタルをアナログに変換するためのツールが測度とルベーグ積分である。
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