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誰のために? 何のために? 慣れない重労働に、疫病で死ぬ者200名、巨大な権力に捨身の抗議をぶつけて屠腹する者50名。未曾有の難工事は薩摩藩士の死屍累々の上についに完成するのだが――。泥海の中に潰え去った男たちの無念に、平時のいくさの惨酷さを見事に描き切った著者の代表作。
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Posted by ブクログ
平田が幕府からの短文による命に打ちのめされたのに始まり、また「もう自分はこれで自分は人生を終えるのだ」と悟る情景が続くように、 「武士としての心意気や絶望」や「幕府(あるいは村役)との折衝・勝負」が生々しくつづられている。一方で、美濃の地域の人々を想う様子も随所に描かれ、しかし他方で故郷である薩摩を...続きを読む想う(寂しく思う)様子も十分に記述されている。平時の戦との表現も印象的。感情に満ち、時代背景にも満ちた、とても充実した一冊を終えての読後感に浸っている。 今にして思えば、平田の「もう人生は終わり」との最初の思い(あきらめ)は、ある種の伏線だったのだなぁ。 (上巻にもほぼ共通したレビュー)
宝暦治水。職務上の責任をとり切腹した者が50名、疫病で命を落とした者が202名、さらに仲間に斬られた者、事故死した者、薩摩藩士はどれだけ辛かっただろう。予想通り、最後は奉行も果てるのだが、身の回りの世話をしていた少年・佐田恒弥も命を断つとは悲しすぎる。
不可能と思った大事業が完成形にいたりつつあるとき、その事業の担い手に、達成感とは別の感情が浮かぶ不思議さが伝わってきます。 困難な事業は、完成を迎えたときには携わった全員が「大事業を成功させ、苦労が報われた」と感じられることを望みます。しかし、それほど単純な状況ではない重々しさが現場にはあります。...続きを読む まるで自分がその場にいるかのように、決断と逡巡を読み手に強いる一冊です。
薩摩藩がなぜ美濃の地で治水工事を引き受けなければならなかったのか。 引き受けたはいいが,費用はどうするのか。 薩摩藩の苦悩を描きだした傑作。
水害対策と藩の弱体化を狙い、幕府が薩摩藩に命じた揖斐川・長良川・木曽川の三川の手伝い普請。すでに財政が逼迫している上の大工事に、藩を賭して立ち向かう薩摩藩士の姿が描かれる。史実であることが、よけい胸を打つ。 『お上からの辛いことも頑張れば達成できる。』のような道徳的な話ではなく、工事終了のカタルシス...続きを読むは描かれていない。むしろ、権力の横暴と公共事業に乗っかって私服を肥やす民衆への強く深い怒りと悲しみが物語を貫く。
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