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世界一周自転車旅行を計画した少年オリザは、1979年5月、いよいよ2年間の休学届を高校に提出し、世界へ向かって旅立った。親子関係、友情、異性、民族、貧困、人生、芸術……さまざまな問題にぶつかり、時に悩みながら記録した、劇作家・平田オリザの処女作にして、色褪せることのない傑作冒険旅行記!
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Posted by ブクログ
紀行文は読んでいて楽しい。 夜中に薄暗い部屋で読んでいると自分の拙い旅をよく思い出す。 そして、著者とその周りの友人の文章の巧さに驚く。これが教養か。 こんな堅くもユーモラスな文章書けるようになりたいなー
劇作家として活躍するオリザさんが十六歳の頃、高校を休学して1年余りアメリカ→ヨーロッパと旅した記録。友達との手紙のやりとりがいい。『深夜急行』に並ぶ紀行本の名作といってもいいと思う。 世界一周の予定をいとも簡単に、アメリカ→ヨーロッパ内巡回に変更してしまう柔軟さ、ヘタに旅の答えを出していないことが、...続きを読むかえって柔らかな強さを感じさせる。「栴檀は双葉より芳し」といったところか。旅の答えを出さなかったからか、オリザさんは今に至るまでずっと旅の途中なのだそう(文庫版あとがきより)。 ちなみに、読んだものは文庫化にあたり改題されたものだけど、もとのタイトルが奮ってる。『十六歳のオリザの未だかつてためしのない勇気が到達した最後の点と、到達しえた極限とを明らかにして、上々の首尾にいたった世界一周自転車旅行の冒険をしるす本』というのだ。
読んでみた一番大きく感じたことは「教養が前提条件である時代の文章だなぁ」……であった。 生まれてこのかた、毎年のように活字離れが進んでいると、聞いているが、昭和初期の文学においては、「基礎教養」が求められていたと思う。例えばそれはゲーテやニーチェ、詩や哲学書、あるいは資本主義や社会主義のような...続きを読む思想。 書き手は、読み手にこれらの基礎があるものとして文章を綴り、読み手は知らなけれれば恥じて教養を身につけようとする。 そんな時代があったと思う。 この本が書かれたのは1979年(正確には旅に出た年)、今から約30年ほど前だ。 著者が教養を前提とするのはともかくとして、著者と手紙のやり取りをする少年たちも、「教養を知らぬこと」を恥じと感じる気持ちがあるように感じた。ぶっちゃけると、私の10代と比べ、のきちんと人格のあるように思える。 今は変化の時代と言われ、新しい情報を知ることにやっきになり、基礎教養という言葉は忘れ去られているのではないか。知らなくても別に何とも思わない。そして書き手も、そのような読み手に向け、知らないことを前提として、認識させていく文章を書く。 今の方が読みやすいけど、時折こういうものを読むと「教養」について考えさせられる。 本文とあとがきの著者の姿勢の落差が面白い。
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