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『果しなき流れの果に』『復活の日』『日本沈没』――。日本SF史に輝く傑作の数々を遺した小松左京の原点は、戦中戦後の動乱期を過ごした旧制中学・高校時代にあった。また京大人文研とのつながりから、大阪万博にブレーンとして関わった顛末とは。幻の自伝的青春小説と手記によって、そのエネルギッシュな日々が甦る。若き日の漫画家デビューなど、新事実も踏まえたオリジナル編集版。(解説・小松実盛、加藤秀俊)
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Posted by ブクログ
年譜が圧倒的ですね。すごい行動力。 目次 はじめに 第一部:やぶれかぶれ青春記 やぶれかぶれ青春記 「青春記」に書かれなかったこと ――漫画家としての小松左京……小松実盛 第二部:大阪万博奮闘記 ニッポン・七〇年代前夜 万国博はもうはじまっている 小松左京と走り抜けた日々……加藤秀俊 年譜
「やぶれかぶれ青春記」。1969年に受験雑誌『蛍雪時代』に連載されたというのだから驚きだ。学生運動が最高潮に達していた頃である(東大の入試も中止になった)。読んだ高校生・浪人生には相当なインパクトがあったかもしれない。 「青春記」には、戦中と戦争直後にかけての、旧制中学から旧制高校のことが赤裸々に綴...続きを読むられている。破天荒、過激な行状、壮絶ともいえる経験。そして教育への不信、国家への不信、政治への不信。あきらめと打たれ強さ。ペシミズムとオプティミズムが交錯する。小松左京の作品の持ち味はこの時にできあがったのかもしれない。中学時代の友人には高島忠夫も登場する。 ところが、この「青春記」には書かれていないことがある。小松は旧制高校の時に漫画家としてデビューし、京大生時代にはモリ・ミノルのペンネームで3冊の漫画本を出しているのだ。小松はこの過去を封印していた。なぜ封印していたのか? 2018年に出たこの文庫版には、次男の小松実盛氏の手記が収録されている。タイトルは「「青春記」に書かれなかったこと――漫画家としての小松左京」。謎を解いてくれる貴重なボーナストラックだ。
近年、再評価の小松左京氏。 短編と中篇の間の小品を、無理矢理くっつけたっぽい一冊。 でも感謝したい、こうして書籍化していただけたことに。 それだけ二作共に楽しかったです。
小松左京氏のといえば、日本SF界の巨匠、ベストセラー作家とか知の巨人とか称される。その小松氏がまだ若かりし頃のお話。 この本の前半は、蛍雪時代に掲載された「やぶれかぶれ青春期」。旧制中学、旧制高校、そして新制大学の学生時代を振りかえっている。連載当時は、戦争体験者というか実際に戦場に赴いた人...続きを読むも多かった時代。ホントーに貴重な話が載っている。あと小松氏のご子息の一文『「青春記」に書かれなかったこと』は必読。 後半の「大阪万博奮闘記」も、これまた貴重な話が載っている。小松氏のか「限りない知性」とでもいうべきものが見てとれる。もとネタのひとつ「万国博覧会資料」は、現物が確認できていないとのこと。やっぱり貴重だ。
筆者である小松左京の、エネルギッシュで熱量溢れる書きっぷりが感じられます。 戦中時代を生き抜いた筆者による回顧録と体験談で、万博の裏事情がよく分かった。
前半は、戦中期を中心とした学生時代の話。正直あまり愉快な話ではないが、旧制中学時代のエピソードなどからは、著者の怪物ぶりが伝わってくる。漫画家としてのエピソードが一切出てこないことは、ご子息の解説にもあるが、ブルドーザーとも称される著者の意外な屈託が感じられ、興味深い。後半の万博の話は、大阪万博の影...続きを読むの部分とも言え、後世に残す意義は大きい。著者の感じた万博の難しさは、次の大阪博にも生きるものと思う。これを機に、著者のノンフィクションを含む膨大な著作が、もっと入手しやすくなることを切に願います。
巨人、スーパーマン小松左京の肉声の雰囲気があふれでる。北杜夫『どくとるマンボウ青春期』に通じる終戦直後の高校生のドタバタ青臭さと、高度成長期に京都学派の重鎮たちと未来を刻印しようとするコーディネーターあるいはプロデューサーもしくはエバンゲリストとしての顔。SF小説家という括りにいれるには大きすぎる小...続きを読む松左京に圧倒され、共感する。
小松左京はデビューが31歳であり、遅咲きのSF作家といってよい。しかし、ここからわずか8年後には万博のサブプロデューサーを務めることになる。小松の30代は恐ろしく濃密なものである。 先に8年後と書いたが、万博とのかかわりはそれより前である。本書の年表に従うと、未来学研究会を発足し梅沢忠夫らと各国へ...続きを読む万国博の視察に行くのは1966年、小松は35歳だ。いまのぼくは、万博開催を迎えたときの小松と同年齢だが、自分が梅沢忠夫などと丁々発止のやりとりをできるとはまったく思えない。 本書の話をすると、前半は小松の学生時代を振り返るエッセイ、後半は万博に携わった顛末である。直接的なつながりがあるわけではない。 だが、共通する部分はある。小松の万博への関わり方は、いまとなっては公的なイベントに積極的に関わった小松左京という印象もなきにしもあらずだが、本書を読むと印象はかなり違う。むしろお上とは喧嘩ばかりしているし、冷ややかな視線さえ持っている。 小松の学生時代は戦時中が含まれている。学生時代と万博に関わっていた時代のつながりは一見わかりにくいが、通して読むとたしかにつながっている。 教師=万博協会=国家と、生徒=未来学研究会=大衆は対になっている。だから、生徒と教師は対立するし、協会と研究会は喧嘩もする。梅棹らと囲んでいる会合も、学生らが徹夜で話してるような雰囲気がある。 万博の顛末では、理念の重要性について幾度となく語られる。これは2025の大阪万博でも批判的に取り上げられたものである。2025年の万博には理念がない。当事者らは「ある」というのかもしれないが、少なくとも理念が大衆に伝わっていないことはまちがいないと思う。 2025年の万博が成功か失敗かを判断する能力はぼくにはないし、あったとしてもいまはまだ判断できるタイミングではない。ただ、1970年の万博が成功し、そのかげには小松らの活躍があったことは疑い得ない、そう思わせてくれる一冊だった。
石毛直道さんの「座右の銘はない」に小松左京さんについて、たぐいまれな独創力と構想力を備えて、考えたことを実現できる天才として梅棹忠雄と並び称されている。 万博公園に民族学博物館ができた経緯に岡本太郎さんや小松さんの思いがあったことを知った。 さて、本書。 前半は戦中戦後の青春期。 昭和ヒトケタの僕...続きを読むの父母も戦中に軍国主義で平気で生徒を殴っていた教師が戦後「元々民主主義の人間です」と云っていた奴を罵っていた。そんな卑怯な教師は沢山いたんだな。 恐ろしいのは戦災孤児。僕はテレビ漫画のタイガーマスクぐらいしかイメージがなかったが、4つから7つぐらいのチビ達が大人にタバコの火をおっつけ、驚いた大人に因縁をつけ、レンガで頭を殴り、鉄棒で突き倒され、身ぐるみはがしてしまう。 小松さん自身も6つの男の子と4つの女の子からピストルで撃たれたそう。 もう二度とこんなことがないようにという文に同感する。 前半の最後はたった1年の旧制三高のある意味傍若無人な自由な日々を素晴らしく豪華なものと誇ってページを終わる。 後半は万博との関わり記。元々は梅棹忠夫氏、加藤秀俊氏との私的な勉強会「万国博を考える会」。京大人脈から拡がりを見る。通産省からは反体勢力と認識されるが、のちに取り込まれる。 小松氏達のテーマづくりが無かったら、万博はつまらない見本市になったんだろうな。そして今大阪がやろうとしている万博はつまらいものになるだろうし、観に行こうとも思わない。 とり・みきさんの漫画に小松が登場する。交友範囲の広い人なんだなと思っていたが、自身もマンガをかいていたということが明らかにされている。 知的ブルドーザーという評も聞いたことがある。もっと小松さん周辺の人脈をあさってみようかな。
SF界の怪物、小松左京を形成したものはこの戦中戦後の動乱期の経験にあることを確信した。また、御子息がなぜか漫画家小松左京の話を封印していることについての身内ならではの解説が必見。
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やぶれかぶれ青春記・大阪万博奮闘記(新潮文庫)
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