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Posted by ブクログ
2020年09月03日
ダックワース(ペンシルベニア大学教授・心理学者)が提唱する「グリット」理論(著書:「やり抜く力」)を、脳科学者の立場から解説した本。
「グリット」とは、本書によれば、「困難があっても続ける力。情熱を持って取り組む粘り強さ」と定義している。
これまでは「成功」の要素が、才能、知能指数など、先天的な...続きを読む要素によるものとされてきた考え方を覆す有力なものとして、この「グリット」という指数を取り上げ、それを脳科学の視点から補強している。
一つの根拠として、高いIQを持たずとも成功している者は世に多数おり、それらの人々は、グリット(すなわち続ける力)により成功を手にしているという。
さらに、脳科学の「支配する私(脳の前頭前野の働きによる)」と「支配される私(前頭前野以外の働きによる)」の視点から、グリットを高めるには前頭前野の鍛えがポイントであり、前頭前野は成長してからでも鍛えがきくということを述べている。
何事かを為すときに前頭前野が働くが、しばらくすると前頭前野以外から「苦しい、止めたい」という気持ちが起こる。そこでさらに継続することにより、前頭前野は鍛えられ、前頭前野以外の働きをコントロールできる力がついてくるという。続ける力を高めることで、全体が高まっていくのだという。
次に、「続ける力」を身につけ、結果を出していくための具体的な手法を紹介している。
以下、メモ的に列記。
・「指示待ち」は、「支配する私(前頭前野)」が鍛えられない。
・難しそうな課題→課題の中身は変えられなくても、「いつやるか」は自分で決められる。
・「グリット」は一つのことをやり抜く指数だが、マルチに進め、それぞれをやり抜いてゆけばよい。
・「やる気」に頼るな(「やる気」は変動する)。
・完璧主義は捨てよ(継続が途切れたらまたリトライ)
・無駄、邪魔も新たなアイデアやチャンスの源
・目標など公表せず内に秘めよ(秘めた力)。
・他人の評価を報酬とせず、自分で決めたことへの達成感を報酬とせよ。
・「一万時間の法則」(マルコム・グラッドウェル)
※一万時間(努力する時間)は、エキスパート(となれるかどうか)の分界点
・脱単一知性の時代:何かができない人は何かができる
・フォーカス・イリュージョン(条件が整わないと幸せになれないという考え方)に惑わされるな
・いやな仕事→タイムプレッシャー(時間を決めてやり切る)を活用
後半は、「挫折との付き合い方」「子どもの継続力の伸ばし方」などについて、著者の考え方がまとめられている。
誰でも、いつからでも、努力により「続ける力」を鍛えることができるのであり、誰にも「成功のチャンス」があるという、誰もがポジティブになれる本である。