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Posted by ブクログ
SFの翻訳・評論・創作・企画・編集など、オールラウンダーとして疾駆した福島正実の、甘く苦い回想録。
30歳の時に初代編集長としてSFマガジンを創刊、軌道に乗せる。しかし、ある事件を機に40歳で早川書房を退社。1976年没、享年47。
私も福島が編集するSFマガジンをなめるように読んだひとりだ。当時、SFという新しさだけでなく、あの雑誌にはとてつもない緊張感と魅力が漂っていた。いま思うと、それは編集長であった福島その人の緊張感、できうるかぎりのものを提供しようとする彼の張りだったのかもしれない。その後、編集長が森優にかわり、表紙や誌面の雰囲気は一変した。
福島が目指したのはプロとしてのSFだった。プロになろうとする人たちには、アマの心を捨てて、プロの自覚と責任感と厳しさを要求した。それゆえ、アマチュア心を大切にしたい人々とは対立するようになった。
福島は日本のSFを切り拓き、地ならしをした。彼がいなければ、いまの日本のSFはまったく違ったものになっていたかもしれない。ところが、仲間みなと走っていたつもりだったのに、気がつくと自分だけがひとりどこともないところを走っていた。回想録の終わりのほうからは、そうした孤独・寂寥感が伝わってくる。
この回想録は、亡くなる1年前からSFマガジンに隔月で連載されたもので、1967年までの出来事を書いたところで絶筆。その回想は生き生きとしていると同時に、いまだなまなましい。書き急いだようにも感じられる。迫り来る自分の死を予感していたのかもしれない。
文庫版の表紙に飾られた彼の横顔。熱のこもった真摯な眼差しがとてもいい。
Posted by ブクログ
巻末の『著・訳書目録』を見ると、若いころに読んだ本がちらほら。ずーっと昔に私にSF好きの種を植え付けたのはもしかしたらこの人なのかも知れないなあ。他の人が書いた本で、この人の仕事の仕方について独善的だとか結構厳しい言い方をしているのを読んだけど、何はともあれこの人を抜きに日本SFを語れないのは確かでしょう。高橋良平の本の雑誌での連載の内容とちょうど時期があっていて興味深いし、大好きな野田昌宏にちょぴっと触れているところもうれしいし、満足の一冊。それにしても、この表紙の表情の素敵なこと!若々しくて、生き生きとしていて。こんな顔して仕事したいもんだ。
Posted by ブクログ
昭和30年代,日本の文学にSFというジャンルが芽生えかけてきた時代に,早川書房でSFマガジンを創刊し,初代編集長としてSF界を叱咤激励し,自らも翻訳,執筆,企画に八面六臂の活躍を見せた福島正美の回想録.
回想しているのは1950年代末から1967年までで,残念ながら本人が1976年に47歳で早逝したために,未完となってしまっている.
思えば,10代から20代にかけて読んだ古典SFは,福嶋正実の訳のものが多かった.「夏への扉」「鋼鉄都市」「幼年期の終わり」「不死販売会社」・・・ Wikipediaで調べてみると,とんでもない仕事量であり,これに加えてSFマガジンの編集をしていたのだから恐れ入る.当時から「固い訳だなあ・・・」と感じていたが,この仕事量ではしょうがないか.
本書には小松左京や星新一,筒井康隆が頻繁に登場する.彼らも福島正実に見い出されたようだ.回想からは彼のSFにかける情熱が伝わってくるが,一方,数年後にそれを振り返る彼の文章は冷静でもある.それでも,そこで起こっていたことを描く文章を通じて,この時代,まだ人々は未来を信じていた(これはSF的な意味ではなく)ことが見えてくる.
恐れ入ったのは,アシモフが1966年に予測した21世紀の内容で,かなり当たっている.
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