【感想・ネタバレ】未踏の時代のレビュー

あらすじ

1959年12月、〈S‐Fマガジン〉が創刊された。初代編集長は福島正実。それまで商業的に成功したことのなかったSFを日本に根づかせるため、彼の八面六臂の活躍がはじまる。アシモフ、クラーク、ハインラインに代表される海外のSF作家を紹介するとともに、小松左京、筒井康隆、光瀬龍などの“新人作家”を世に出し、SFのおもしろさ、その可能性を広く紹介してゆく……SF黎明期における激闘の日々を綴る感動の回想録。

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Posted by ブクログ

SFの翻訳・評論・創作・企画・編集など、オールラウンダーとして疾駆した福島正実の、甘く苦い回想録。
30歳の時に初代編集長としてSFマガジンを創刊、軌道に乗せる。しかし、ある事件を機に40歳で早川書房を退社。1976年没、享年47。
私も福島が編集するSFマガジンをなめるように読んだひとりだ。当時、SFという新しさだけでなく、あの雑誌にはとてつもない緊張感と魅力が漂っていた。いま思うと、それは編集長であった福島その人の緊張感、できうるかぎりのものを提供しようとする彼の張りだったのかもしれない。その後、編集長が森優にかわり、表紙や誌面の雰囲気は一変した。
福島が目指したのはプロとしてのSFだった。プロになろうとする人たちには、アマの心を捨てて、プロの自覚と責任感と厳しさを要求した。それゆえ、アマチュア心を大切にしたい人々とは対立するようになった。
福島は日本のSFを切り拓き、地ならしをした。彼がいなければ、いまの日本のSFはまったく違ったものになっていたかもしれない。ところが、仲間みなと走っていたつもりだったのに、気がつくと自分だけがひとりどこともないところを走っていた。回想録の終わりのほうからは、そうした孤独・寂寥感が伝わってくる。
この回想録は、亡くなる1年前からSFマガジンに隔月で連載されたもので、1967年までの出来事を書いたところで絶筆。その回想は生き生きとしていると同時に、いまだなまなましい。書き急いだようにも感じられる。迫り来る自分の死を予感していたのかもしれない。
文庫版の表紙に飾られた彼の横顔。熱のこもった真摯な眼差しがとてもいい。

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2025年05月07日

Posted by ブクログ

作品自体は非常に古いものですが、今回の文庫化を機に読んでみました。
非常に興味深く読むことが出来ました。
日本のSFの夜明けの為に尽くしていた著者の功績に改めて感謝したいと思います。

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2018年10月29日

Posted by ブクログ

巻頭言のことばがいちいちがーんとくる。色々な意味で、すごい熱と力を感じる本。想像でも小説でも、常に現実とつながっていなくてはならない、そういう有り様でなければ意味がない、というところに改めて気付かされた気分。若さ故か、勢いと直截さの絶妙な文体が良い。「ぼくは、いやだ。」この言葉の威力。

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2010年06月06日

Posted by ブクログ

存命なら81歳、1929年2月18日に樺太で生まれたSF小説家・評論家・翻訳家。雑誌「SFマガジン」の初代編集長。


・・・・・書きかけ・・・・・

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2011年09月14日

Posted by ブクログ

1976年に書かれた60年から67年までの
SFマガジン初代編集長による創刊時の回想にして未完絶筆
書かれた時期が示すように自伝的回想というより
40年前現在進行のSFにまつわる評論
著者のSFという仕事であり
それ以上の情念また人生というものの対象への思いが
現在でも通じ
もちろん当時の時代資料としても読めるが
成立経緯上から論としてまとまりにかける仕事であるのは残念
そして50年前があまり昔のことに感じられない自分の感覚はどうかと思った

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2019年01月11日

Posted by ブクログ

早川書房といったら福島正美、SFファンならおなじみの名前だ。1929-1976 50歳前で亡くなったことになる。それにしてはなんと膨大な仕事の量よ。

回想録からは日本のSF界の草分けとしての困難な道筋がうかがえる。72年あたりから星新一とか小松左京を文庫本で読みだしたが、この二人とはまた違った人生であったんだな、という感じだ。

巻末に氏の編纂、著作、翻訳の全仕事が載っている。

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2012年06月21日

Posted by ブクログ

巻末の『著・訳書目録』を見ると、若いころに読んだ本がちらほら。ずーっと昔に私にSF好きの種を植え付けたのはもしかしたらこの人なのかも知れないなあ。他の人が書いた本で、この人の仕事の仕方について独善的だとか結構厳しい言い方をしているのを読んだけど、何はともあれこの人を抜きに日本SFを語れないのは確かでしょう。高橋良平の本の雑誌での連載の内容とちょうど時期があっていて興味深いし、大好きな野田昌宏にちょぴっと触れているところもうれしいし、満足の一冊。それにしても、この表紙の表情の素敵なこと!若々しくて、生き生きとしていて。こんな顔して仕事したいもんだ。

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2011年08月06日

Posted by ブクログ

SFマガジン初代編集長であり、『夏への扉』『鋼鉄都市』などの翻訳者でもある著者が急逝する直前まで書いていた、60年代の日本SF夜明けの回顧記。
熱くて、苦くて、ヒリヒリする。

世の中にまだないものを新たに創り出す、機知や行動力をもって何かを築くことができるという雰囲気が強い時代だったのだろう。

現代の未踏の地はどこにあるのだろう。

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2010年02月20日

Posted by ブクログ

昭和30年代,日本の文学にSFというジャンルが芽生えかけてきた時代に,早川書房でSFマガジンを創刊し,初代編集長としてSF界を叱咤激励し,自らも翻訳,執筆,企画に八面六臂の活躍を見せた福島正美の回想録.
回想しているのは1950年代末から1967年までで,残念ながら本人が1976年に47歳で早逝したために,未完となってしまっている.
思えば,10代から20代にかけて読んだ古典SFは,福嶋正実の訳のものが多かった.「夏への扉」「鋼鉄都市」「幼年期の終わり」「不死販売会社」・・・ Wikipediaで調べてみると,とんでもない仕事量であり,これに加えてSFマガジンの編集をしていたのだから恐れ入る.当時から「固い訳だなあ・・・」と感じていたが,この仕事量ではしょうがないか.
本書には小松左京や星新一,筒井康隆が頻繁に登場する.彼らも福島正実に見い出されたようだ.回想からは彼のSFにかける情熱が伝わってくるが,一方,数年後にそれを振り返る彼の文章は冷静でもある.それでも,そこで起こっていたことを描く文章を通じて,この時代,まだ人々は未来を信じていた(これはSF的な意味ではなく)ことが見えてくる.
恐れ入ったのは,アシモフが1966年に予測した21世紀の内容で,かなり当たっている.

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2022年12月10日

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