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Posted by ブクログ
痴人の愛位しか読んだことなく、特に好きでもなかったのですが、この間弥生美術館の展示を見て、あと森博嗣の本の冒頭で、ちょっと気になり。
乱菊物語。
普通の作品だったら、もっと時代小説ぽくなるのでしょうが、そこがエンタメになっていて、少女と女性が全く古臭くないとこが、もしかして谷崎のすごいとこなんだろうか…と初めて気付きました!
ちらっと出てくる遊女に姫君の姪御の描写やら、果ては戦闘の似合うカップルと、あれ、これが文豪の描写力のすごさなのか、と。
陽炎御前と海龍王にぐっときて、これからこの二人の話に移るのね…というところで…。谷崎おめ最後まで書きゃあ!と内心叫びました。
鏡花ほどではないまでも、生身ながら割と霊性な女性の描写で谷崎を見直しました。
吉野葛。
普通の文章ながら割と鏡花の母恋の崇高さに近いんじゃん、と。(どこまで上から、且つ鏡花基準…)
蘆刈。
もうね、どんだけ理想の女性なの!
初めて森博嗣以外の小説で紅子さんらしさを感じ、こんな昔っから紅子さん並みの女性を描いてたのね、とこれまた谷崎を見直しました。(基準!)
Posted by ブクログ
・何かと物議を醸してゐるらしき池澤夏樹=個人編集「日本文学全集 15」(河出書房新社)は 谷崎潤一郎である。私が一瞬「残菊物語」かと思つてしまつた「乱菊物語」を中心に、「吉野葛」「蘆刈」等を収める。谷崎を全集で読むなどとは考へたことも ないので、私は谷崎全集の全貌を知らない。従つて、「乱菊物語」などといふ作品も知らなかつた。これは「残菊物語」の姉妹編か何かかと思ふほどの無知である。だから、これを収めることを一種の英断ととらえる人がゐる一方で、こんな作品を中心に編むなといふ人がゐるのも、私には全く分からないことである。全集には編集者の個性が出てゐて良いと思ふものの、収める作品には一定の質は必要だよなとごく常識的なことを考へるのが関の山、ならば読んでみようと「乱菊 物語」を読むことにした。
・この作品は大衆小説ブームの昭和5年に新聞に連載されたが、上のみで未完。それでも本書の三分の二を占める。読後感はおもしろいの一言、見事なエンター テインメントであつた。難しい理屈はいらない。谷崎にもこんなのがあつたのだと思ふばかりである。物語は「二寸二部四方の筺の中へ収まる十六畳吊りの蚊帳」(11頁)と美女かげろうを中心に展開してゐるらしい。あちこち横筋に入つていき、いろいろな人物が登場するので、おもしろくはあつても本筋を忘れてしまひさうである。そこは新聞連載大衆小説といふことであらう、細かいことにはこだはらずに筆のおもむくままに書かれていく。そんな中に谷崎らしい語彙や語法が散りばめられてゐる。その反面、人物造形はいかにもそれらしい人物ばかりといふ気がする。机龍之介や早乙女主水之介のやうな特異なヒーローは現れてゐない。この先に出てきさうな気もするが、未完である、谷崎がさう展開するつもりであつたかどうか。こんなのが出てきた後に本書では「吉野葛」と「蘆刈」 が来る。昭和5年と7年の作、つまり「乱菊」とほぼ同じ頃の作品である。ところが雰囲気も文体も全く違ふ。その落差(と言つては失礼か)に驚く。片や所謂純文学、片や大衆小説、この差に尽きるのだらうが、それにしても谷崎はこの2種を実に手際よく書き分けてゐる。さすが谷崎、プロの物書きである。「吉野葛」「蘆刈」に初期作の雰囲気はない。「吉野葛」はエッセイかと思はれる雰囲気に終始する、ハッピーエンドの優れた作品である。「蘆刈」はその文体の息の 長さに改めて驚く。本当に久しぶりに読み直した。これも良い作品である。男のいつ終はるともしれない話しぶりは読んでゐて疲れる。しかし、あの内容にはああいふ話し言葉の息の長い文体が必要なのである。相手は世間離れしたお姫様である。お姫様のことを普通の男が普通に話したのでは普通のお話にしかならない。へたをすれば大衆小説にもならない。谷崎は「源氏」あたりを考へながらあんな文体であの物語を書いたのであらう。それでこそあの夢幻ともつかぬ物語が 可能になる。あの雰囲気に明晰さは不要である。これはつまり大衆文学の単純明快を求める雰囲気とは逆である。同じ頃にあんな全く違ふ内容と文体の作品を谷 崎は書いてゐたのである。本書の第一の利点はここにある。誰も見向きもしないやうな大衆文学の未完作を中心に一巻を編む。しかもほぼ同じ頃の有名作をそこ に入れる。この落差を確認するのは実におもしろい。作家の多様性を手つ取り早く知ることができる。かういふ文学全集の一巻は、時に個人全集に優るおもしろさをもつ。そんなわけで私は本書をおもしろく読んだ。惜しむらくは「乱菊物語」が未完であつたこと、事情があるらしいが残念であつた。どこかから完結編が出てこないか……。
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小説・文芸
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