【感想・ネタバレ】谷崎潤一郎のレビュー

あらすじ

室町時代の瀬戸内海、宝物をめぐって海賊や遊女、幻術使いたちが縦横無尽に躍動する幻の長篇エンタテインメント活劇「乱菊物語」。「妹背山婦女庭訓」「義経千本桜」「葛の葉」などの浄瑠璃や和歌と、母恋いを巧みに織り交ぜて綴る吉野探訪記「吉野葛」。女性への思慕を夢幻能の構図を用いて描く「蘆刈」。王朝文学に材を取った奇譚「小野篁妹に恋する事」、異国情緒に彩られる「西湖の月」、エッセイ「厠のいろいろ」を収録。巨人が紡いだ豊饒幻妖な物語たち。

解説=池澤夏樹
年譜=千葉俊二
月報=桐野夏生・皆川博子

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Posted by ブクログ

谷崎潤一郎氏の著作をたぶん読んだことがありませんでした。
文章の量・一文に含まれる単語の量が多く、なかなか
読むのが辛いところもあるのですが、読み進めていくと
のめりこんで、面白く読み進められていく内容でした。
『乱菊物語』は、やはり続きが読みたくなります。
エンターテイメント性が高く、非常に面白い内容です。
『吉野葛』『蘆刈』は、谷崎氏の女性感みたいなものが
わかるような気がします。

収録されているものすべてにおいて、物語性がすごく
濃い内容で面白いと思います。
細雪なども読んでみようかと思いました。

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2017年01月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

何といっても「乱菊物語」の面白さに尽きる。これほど面白いと思った小説はあまりないと感じたほどだ。前編で唐突に終わってしなっているにも関わらず、である。

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2016年08月13日

Posted by ブクログ

『春琴抄』『痴人の愛』『瘋癲老人日記』『陰翳礼讃』といった傑作・佳作が収められてないのがおおいに不満である。谷崎潤一郎の全集としてはお薦めできない本だ。筑摩の日本文学全集の方をお薦めする。『蘆刈』『吉野葛』の掲載は評価できる。これも再読だが、『厠のいろいろ』で知人が名古屋は「なかなか文化が進んでいる、市民の生活程度も大阪や京都に譲らない、自分はそれを何に依って感じたかと云えば、方々の家へ招かれて行った時に、厠の匂を嗅いでそう思った」とあるのは苦笑する。さすが潤一郎さんだ。おそらく潤色ある記述でおもしろい。

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2019年03月20日

Posted by ブクログ

痴人の愛位しか読んだことなく、特に好きでもなかったのですが、この間弥生美術館の展示を見て、あと森博嗣の本の冒頭で、ちょっと気になり。

乱菊物語。
普通の作品だったら、もっと時代小説ぽくなるのでしょうが、そこがエンタメになっていて、少女と女性が全く古臭くないとこが、もしかして谷崎のすごいとこなんだろうか…と初めて気付きました!
ちらっと出てくる遊女に姫君の姪御の描写やら、果ては戦闘の似合うカップルと、あれ、これが文豪の描写力のすごさなのか、と。

陽炎御前と海龍王にぐっときて、これからこの二人の話に移るのね…というところで…。谷崎おめ最後まで書きゃあ!と内心叫びました。
鏡花ほどではないまでも、生身ながら割と霊性な女性の描写で谷崎を見直しました。

吉野葛。
普通の文章ながら割と鏡花の母恋の崇高さに近いんじゃん、と。(どこまで上から、且つ鏡花基準…)

蘆刈。
もうね、どんだけ理想の女性なの!
初めて森博嗣以外の小説で紅子さんらしさを感じ、こんな昔っから紅子さん並みの女性を描いてたのね、とこれまた谷崎を見直しました。(基準!)

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2016年09月26日

Posted by ブクログ

この本の半分以上を占める[乱菊物語]は 未完成の作品で前編しか読むことができないのが残念だが、完成していれば政村の生涯から見て悲劇で終わる結末になっていたのだろうか?
未完とはいえ流石に谷崎潤一郎だけあって大衆文学も素晴らしく面白い。

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2016年05月21日

Posted by ブクログ

・何かと物議を醸してゐるらしき池澤夏樹=個人編集「日本文学全集 15」(河出書房新社)は 谷崎潤一郎である。私が一瞬「残菊物語」かと思つてしまつた「乱菊物語」を中心に、「吉野葛」「蘆刈」等を収める。谷崎を全集で読むなどとは考へたことも ないので、私は谷崎全集の全貌を知らない。従つて、「乱菊物語」などといふ作品も知らなかつた。これは「残菊物語」の姉妹編か何かかと思ふほどの無知である。だから、これを収めることを一種の英断ととらえる人がゐる一方で、こんな作品を中心に編むなといふ人がゐるのも、私には全く分からないことである。全集には編集者の個性が出てゐて良いと思ふものの、収める作品には一定の質は必要だよなとごく常識的なことを考へるのが関の山、ならば読んでみようと「乱菊 物語」を読むことにした。
・この作品は大衆小説ブームの昭和5年に新聞に連載されたが、上のみで未完。それでも本書の三分の二を占める。読後感はおもしろいの一言、見事なエンター テインメントであつた。難しい理屈はいらない。谷崎にもこんなのがあつたのだと思ふばかりである。物語は「二寸二部四方の筺の中へ収まる十六畳吊りの蚊帳」(11頁)と美女かげろうを中心に展開してゐるらしい。あちこち横筋に入つていき、いろいろな人物が登場するので、おもしろくはあつても本筋を忘れてしまひさうである。そこは新聞連載大衆小説といふことであらう、細かいことにはこだはらずに筆のおもむくままに書かれていく。そんな中に谷崎らしい語彙や語法が散りばめられてゐる。その反面、人物造形はいかにもそれらしい人物ばかりといふ気がする。机龍之介や早乙女主水之介のやうな特異なヒーローは現れてゐない。この先に出てきさうな気もするが、未完である、谷崎がさう展開するつもりであつたかどうか。こんなのが出てきた後に本書では「吉野葛」と「蘆刈」 が来る。昭和5年と7年の作、つまり「乱菊」とほぼ同じ頃の作品である。ところが雰囲気も文体も全く違ふ。その落差(と言つては失礼か)に驚く。片や所謂純文学、片や大衆小説、この差に尽きるのだらうが、それにしても谷崎はこの2種を実に手際よく書き分けてゐる。さすが谷崎、プロの物書きである。「吉野葛」「蘆刈」に初期作の雰囲気はない。「吉野葛」はエッセイかと思はれる雰囲気に終始する、ハッピーエンドの優れた作品である。「蘆刈」はその文体の息の 長さに改めて驚く。本当に久しぶりに読み直した。これも良い作品である。男のいつ終はるともしれない話しぶりは読んでゐて疲れる。しかし、あの内容にはああいふ話し言葉の息の長い文体が必要なのである。相手は世間離れしたお姫様である。お姫様のことを普通の男が普通に話したのでは普通のお話にしかならない。へたをすれば大衆小説にもならない。谷崎は「源氏」あたりを考へながらあんな文体であの物語を書いたのであらう。それでこそあの夢幻ともつかぬ物語が 可能になる。あの雰囲気に明晰さは不要である。これはつまり大衆文学の単純明快を求める雰囲気とは逆である。同じ頃にあんな全く違ふ内容と文体の作品を谷 崎は書いてゐたのである。本書の第一の利点はここにある。誰も見向きもしないやうな大衆文学の未完作を中心に一巻を編む。しかもほぼ同じ頃の有名作をそこ に入れる。この落差を確認するのは実におもしろい。作家の多様性を手つ取り早く知ることができる。かういふ文学全集の一巻は、時に個人全集に優るおもしろさをもつ。そんなわけで私は本書をおもしろく読んだ。惜しむらくは「乱菊物語」が未完であつたこと、事情があるらしいが残念であつた。どこかから完結編が出てこないか……。

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2016年04月10日

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