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その日、人形作家・上原眸(ひとみ)の元に届いたのは、四十年来の友人・大江茜(あかね)の訃報だった。「あたくしの美意識」に基づき、八十歳を目前に自殺を遂げた茜。母である前に一人の女として愛欲に忠実に生き抜いた彼女の人生を、その手記や家族からの手紙、そして自らの過去を重ねて振り返りながら、眸は女の生と性の深淵に思いを馳せる。九十歳を過ぎた著者が円熟の筆で描く、爛然たる長編小説。
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Posted by ブクログ
83歳の主人公の元に、79歳の知人の訃報が届く。 その通知には書かれていないが、自殺らしい。 本書は、故人の手記や家族からの手紙を基に40年来の日々を振り返った主人公の想いが綴られている。 老人と言われるであろう年齢の女の生と性は、未経験者にとってなかなか受け入れ難いコトかもしれないが、自分がその...続きを読む領域に達したときに何を想うだろう? 寂聴さんの作品はたくさん読んできたけれど、さすがに全盛期ほどの生々しさは感じられなかった。しかしながら、91歳(現96歳)でここまで性愛を書ける文筆力は凄まじい。
何気なく手に取った本。そして茜という女性に惹かれて、気がついたらとても愛おしくなっていた。今まで読んだ小説の中でも一位を争うくらい印象に残った人物。 元々寂聴さんは源氏物語で知り、彼女の小説を読んだのは本作が初。馴染みのある源氏物語の話題がたびたび出てきて嬉しかった。又、文章から寂聴さんの知的な...続きを読むお人柄や豊富な引き出しが伝わってきて、彼女が紡ぐ文章が好きだな、と思った。はじめはただ「茜という人が亡くなったのだな」としか思わなかったが、だんだん茜という人物の魅力に惹かれていく自分がいて、最後は彼女の死への無念さが残った。けれど複雑な感情は一切ない。 とても、余韻に残っている。
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