Posted by ブクログ
2016年12月31日
年末で、「ク」から始まる2文字が付くほど忙しいさなか、寸暇を惜しんで読み耽りました。
国際テロ組織「IS」に13か月間もの長い間、拘束されたデンマークの写真家、ダニエルの、過酷と言えばあまりに過酷な体験を、つまびらかに書き下ろした衝撃のノンフィクション。
ISの拷問は酷いもので、たとえばタイヤの穴に...続きを読むダニエルの曲げた膝を押し込み、タイヤから突き出た膝の裏側に棒を通して身動きが出来なくしたうえ、パイプのようなもので容赦なく叩きのめします。
あるいは、ダニエルの手錠と天井に取り付けたフックをつなぎ、完全に身体が伸び切ったまま何日も放置します。
過酷な拷問に耐え切れず、ついにダニエルは自殺を試みますが、それも未遂に終わります。
脱走も試みますが、それも敢え無く失敗に終わり、さらに過酷な拷問を受けることになります。
常に死と隣り合わせの極度の緊迫感に包まれ、読んでいて何度も胸が塞ぐ思いがしました。
やがてダニエルは、自分と同じように誘拐された他の欧米人たちと厳重な監禁下で共同生活を送ることになります。
人質同士で励まし合いながら、いつか解放されることを信じて、運動をしたりゲームをしたり、できるだけ一定のリズムで生活を送ろうと努めます。
一方、ダニエルを何とか救い出そうと、ダニエルの家族と、ダニエルの家族から依頼を受けたテロ対策を専門とする民間コンサルタント会社社長のアートゥアが奮闘します。
ISから日本円で2億円余りもの莫大な身代金を要求され、東奔西走する家族の姿に同情を禁じ得ませんでした。
本書はこのように、ダニエルと、ダニエルの家族およびアートゥアの大きく2つのパートで、同時進行で展開します。
一人ひとりの人物が、何を思い、どう行動したかを実に詳細に調べ、優れた読み物に仕立て上げているのは、「読者を引き付け、この不条理な世界の現実に関心を持ってもらいたい」という強い熱意の表れでしょう。
さて、身代金の額に近付くにつれ、ダニエルに対する暴行はにわかに激しさを増します。
特に、ダニエルら人質たちが「ビートルズ」と名づけたイギリス出身のテロリストたちの暴力は執拗で、酷薄なものでした。
警棒で何十回と太腿を強打され、ついにダニエルは叫び声を上げます。
「やめてくれ。脚がつぶれる!」
ダニエルの家族は、ようやくISの求める身代金を集めることが出来ました。
アートゥアがISに指示された場所に出向いて身代金を引き渡し、数日後にダニエルは解放されます。
「落ち着いて排便ができることがあまりにうれしくて涙がこぼれた」
というダニエルの言葉に、人質生活の苛烈さを改めて噛み締めました。
ただ、そこから先に、さらなる地獄が待っていました。
ISに誘拐されて一緒に過ごした仲間が、砂漠の真ん中でのどを掻き切られて次々と殺されたのです(その残酷な映像はYoutubeにアップされました)。
同じ境遇に置かれながら、一方が生き残り、もう一方が死ぬと、生き残った方の人間は自らを恥じるのだそうです。
これほど残酷なことがあるでしょうか。
本書を読んで、世界の現実の一端をまざまざと見せつけられました。
今やテロ組織の代名詞となったISの実態を知る上でも貴重な資料なのではないでしょうか。
今年読んだ本の中で、間違いなく最高度の衝撃。