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雪の科学者にして名随筆家・中谷宇吉郎のエッセイを生物学者・福岡伸一氏が集成。雪に日食、温泉と料理、映画や古寺名刹、原子力やコンピュータ。精密な知性とみずみずしい感性が織りなす珠玉の二十五篇。
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Posted by ブクログ
雪の研究の第一人者の中谷宇吉郎博士のエッセイ集。主題は時代を感じるものが多いが、それを感じさせない鋭く理路整然とした書き方に引き込まれる。雪今昔物語、科学以前の心、私の履歴書、何かをする前に...が特に好き。
「なにかをする前に、ちょっと考えてみること」と「機械の恋」を特に興味深く読んだ。 協力体制のことや、整理整頓のこと。生活や仕事に役立つ助言がたくさんあった。
科学エッセイの名手福岡伸一が選んだ中谷宇吉郎のエッセイ集。有名な雪の研究、人工雪の製作とその過程を映画に撮る話、科学する心、古寺、歌舞伎等どのエッセイも歯切れが良く、眼差しが暖かい。寺田寅彦に始まる、日本の科学エッセイの精神をしっかり受け継ぎ、福岡伸一を含む後の世代に渡したのが良く分かる。
雪の研究で著名な中谷先生の随筆を福岡先生がチョイスしたアンソロジー。科学の心を平易な言葉で伝えようとしたもので、主観をできるだけ廃したかに見える文章が、実は雄弁であることに気づきます。いい本でした。
雪の研究に生涯をささげ、世界で初めて人工雪の生成に成功した中谷宇吉郎の随筆を、生物学者・福岡伸一がセレクトしたもの。編者の言葉として、「精密な知性とみずみずしい感性が織りなす珠玉のエッセイ」という表現があるが、まさにその通りだと思う。特に個人的に心を揺さぶられるのが、子供の頃のエピソードを綴った数々...続きを読む。なぜかキラキラと輝くようなまぶしさというか、ジンワリ湧き出るようななつかしさというか、不思議な温かさを感じるのは、やはり筆者の人間性のなせる技なのだろうか。時代の細やかな描写もさることながら、科学、気象、文化、コンピュータ、原子力に至るまで幅広いテーマが収められており、中でも原子の力が原爆という形で実用化されたことの意味を重くとらえた宇吉郎が、「原子力の開放が、人類の文化の滅亡をきたすか、地上に天国を築くか、(中略)それを決定するものは科学ではなく人間性である。」(昭和25年1月「未来の足音」より)と言っているのは、時代を考えると心に響く。しかも、この問題について、人類の半数を占め、子供を味方に持つ女性たちの任務は重いとさえ言っている。 人間だけにとって都合の良い便利さを求めてきた時代の曲がり角に立つ今、本来あるべき方向に向かって舵を切るには何が必要かを見つけるヒントを数多く与えてくれる随筆集といえる。
積読解消。前半は雪の結晶を天皇陛下がご覧になるという行幸について。戦争の前中後で中谷博士の周りで起きたことなどを肩肘張らずに書いている。どうして雪の研究をするにいたったか,旧制高校からの遍歴も興味深い。完全なエリート的人生でないところにも人間味を感じやすいのか。いわゆる神秘的なことに対する考えも興味...続きを読む深かった。科学者であるけれど,不可知として切り捨てるのではなく,その不可知な部分にある神秘を面白がっているように思える。科学の言葉を持たなかった時代も「行」として科学的概念や方法を生み出していたことも面白い。
雪の研究者中谷宇吉郎氏のエッセイ。 とても柔軟な心を持った人だなあと思った。 「本来の科学というものは、自然に対する純真な驚異の念から出発すべきものである。」(簪を挿した蛇) 科学教育というものは難しいね。
雪の研究者である中谷宇吉郎氏の科学にまつわるエッセイ。雪今昔物語の雪の結晶を天皇に見せる話。雪の結晶をスタッフと徹夜で準備して、身体の不調もなんとかやりきる。終わって、伊東に養生しにいく。ちょうど大雪予報の東京から、出張で伊東へ。こんな偶然あるだろうか。 昔ながらの生活、伝統は計算して、あるロジック...続きを読むで導き出される科学的な解釈ではない。筆者は、それを科学以前として、撲滅するのではなく、優しい眼差しでもって整理しておく。つまりは、すぐ否定せずとも淘汰されていくと考えている。すごいのは、これが昭和16年に書かれたものであることだ。科学を盲信し、戦争、テロ、無差別殺人、環境汚染、原子力。こうした負の部分をある種、導き出した科学、そして科学で説明不能な理論を予言しているかのようだ。AIが台頭し、いまは、きっと科学の次に来るものを探しているのだから。 本統の科学とは、不思議を解決するだけでなく、平凡な世界の中に不思議を感ずることも重要な要素。河童を知らない子供は可哀想だ。科学者として、この言葉は本当に素晴らしい。北海道の自然の中にあって、お寺回りやスキーなど、科学的でない活動にその魅力を感じ、視野だけでなく、行動の幅広さをもっともっと求めて行かなくてはと思わされる。
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