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「科学のこころ」を本棚に──スタンダードブックス第4巻は雪研究の第一人者・中谷宇吉郎。代表作「立春の卵」、高野文子氏が取り上げ反響を呼んだ「天地創造の話」など13篇収録。
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Posted by ブクログ
「雪を作る」。なんてステキな言葉だろうと。もちろん、雪の良い面も悪い面もあるのだろうけど、人間と自然という中で、受け入れるべきあれやこれやがふんだんに。 雪の話ばっかりなのかと思ったけど、そうでもなく。それもそれで面白かった。 何よりも、解説にあるとおり、ある意味ドライな書き味がよいのかもしれない...続きを読む。 昨今の現状を考えるからこそ、若い方たちに「科学」は面白いと読んでもらいたいなぁと。
目次 ・自然の恵み―少国民のための新しい雪の話 ・雪の話 ・雪の十勝―雪の研究の生活 ・雪を作る話 ・雪後記 ・大雪山二題 ・天地創造の話 ・立春の卵 ・線香花火 ・琵琶湖の水 ・茶碗の曲線―茶道精進のある友人に ・イグアノドンの唄―大人のための童話 ・簪を挿した蛇 雪の研究で有名な研究者、中谷宇...続きを読む吉郎の随筆。 師の寺田寅彦も文章家としても有名だが、中谷宇吉郎の文章もなかなか。 余計な修飾などない簡潔な文章なのに、柔らかな温かみのある文章。 雪の結晶が持つ美しさに魅せられて、十勝の山小屋に住み込んで、毎日何時間も雪の写真を撮り続けるのである。 防寒もほとんど意味のないような厳寒の北海道の冬。 戦争前の頃だと、今よりもっと北海道は寒かったろう。 機材や荷物を抱えて馬そりで山を下りるとき、彼はすでに翌年の雪山を楽しみにしているのだと思う。 何しろ体調を崩して5年ほど北海道に来られなかったのだが、治った途端に北海道にやってくるのである。 もう、いいんじゃない?なんてことにはならないらしい。 “科学が戦争の役に立つのは事実であるが、それは科学の本然の姿ではない。科学は自然と人間との純粋な交渉であって、本来平和的なものであるからである。そういう意味での科学は、自然に対する脅威の念と愛情の感じとから出発すると考えるのが妥当であろう。” 雪は、美しくもあり、平和でもあるのである。 科学の伝道師でもある著者の文章は、センス・オブ・ワンダーに満ちている。 “顕微鏡写真で形を知ったり、本を読んで分類の名前をおぼえたりすることよりも、自分の眼で一片の雪の結晶を見つめ、自然の持っている美しさと調和とに眼を開くことの方が、ずっと科学的である。非科学の代表は、自分のすぐ眼の前にある自然の巧みを見ないで、むやみと名前や理論などだけを言葉でおぼえることである。” うーん、耳が痛い。 昭和新山ができるさまを、天地創造をこの目で見られることの喜びにたとえ、「立春の日には卵が立つ」という世界的に有名となった珍説を、実験と計算を通して論破し、線香花火の美しさを科学的に解き明かし、美しい文章で表現する。 ちなみに火球を作って、そこから火花が飛び散る花火は日本の線香花火だけなのだそうです。 とても気持ちのいい文章ばかりで、心が美しく洗われたような気持ちがいたしました。
面白かった。 まず、文章が平易で朗らかだ。そして話題が豊富。 本業の雪についての話は、科学的で実際的。 とても興味深かった。 一方で、立春の卵や琵琶湖の水の話など、一見他愛の無いことに注目し、理知的な観点から警告を発する手腕は流石。感心した。 先読の寺田寅彦に岡潔の姿も垣間見え、その関係性を想像する...続きを読むのも楽しかった。 このシリーズはやはり良い。 さて、次は誰を読みましょうか。
折しもノーベル賞を受賞した大隈先生が会見で基礎科学の大切さを説かれたところですが、科学へのまなざしの在り方について半世紀以上前に同じように丁寧に語った中谷先生。 栞のラスコーの壁画についての言及は目を丸くして驚いてしまった。まさに科学と自然に対するあるべき姿勢を体験させてもらったと思う。
中谷宇吉郎先生は、小林秀雄の『考えるヒント』の冒頭、常識で、小林秀雄の質問に科学者として答えている方。 雪が仕事かもしれないが、後半、雪以外の文章が特に面白い。 ○天地創造の話、◎立春の卵、○線香花火、○琵琶湖の水、茶碗の曲線、イグアノドンの唄。
雪博士こと、中谷宇吉郎のエッセイ。 1936年に大学の低温実験室にて人工雪の製作に世界で初めて成功。1940年代に北大に低温科学研究所が設立されることが決まり、1943年に主任研究員に。その頃の事が書かれていて、中谷は、実験室の中と外の温度差が身体的にキツくて、若い学生に任せたみたいな記載があった...続きを読むから、老年の話かと思ったが、まだ40代。今と年齢の感覚が随分違う。 師匠であった寺田寅彦との思い出も綴られる。そうだ、寺田寅彦から中谷宇吉郎に辿り着いたのだった。「雪は天から送られた手紙」。なんだか詩集のようだ。そして、雪の降る北海道で研究や作業に没頭する、その静かな情景や日常には憧れるものがある。昔の話だが、古さを感じない、味わい深い一冊であった。
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中谷宇吉郎 雪を作る話
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