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Posted by ブクログ
目次
・自然の恵み―少国民のための新しい雪の話
・雪の話
・雪の十勝―雪の研究の生活
・雪を作る話
・雪後記
・大雪山二題
・天地創造の話
・立春の卵
・線香花火
・琵琶湖の水
・茶碗の曲線―茶道精進のある友人に
・イグアノドンの唄―大人のための童話
・簪を挿した蛇
雪の研究で有名な研究者、中谷宇吉郎の随筆。
師の寺田寅彦も文章家としても有名だが、中谷宇吉郎の文章もなかなか。
余計な修飾などない簡潔な文章なのに、柔らかな温かみのある文章。
雪の結晶が持つ美しさに魅せられて、十勝の山小屋に住み込んで、毎日何時間も雪の写真を撮り続けるのである。
防寒もほとんど意味のないような厳寒の北海道の冬。
戦争前の頃だと、今よりもっと北海道は寒かったろう。
機材や荷物を抱えて馬そりで山を下りるとき、彼はすでに翌年の雪山を楽しみにしているのだと思う。
何しろ体調を崩して5年ほど北海道に来られなかったのだが、治った途端に北海道にやってくるのである。
もう、いいんじゃない?なんてことにはならないらしい。
“科学が戦争の役に立つのは事実であるが、それは科学の本然の姿ではない。科学は自然と人間との純粋な交渉であって、本来平和的なものであるからである。そういう意味での科学は、自然に対する脅威の念と愛情の感じとから出発すると考えるのが妥当であろう。”
雪は、美しくもあり、平和でもあるのである。
科学の伝道師でもある著者の文章は、センス・オブ・ワンダーに満ちている。
“顕微鏡写真で形を知ったり、本を読んで分類の名前をおぼえたりすることよりも、自分の眼で一片の雪の結晶を見つめ、自然の持っている美しさと調和とに眼を開くことの方が、ずっと科学的である。非科学の代表は、自分のすぐ眼の前にある自然の巧みを見ないで、むやみと名前や理論などだけを言葉でおぼえることである。”
うーん、耳が痛い。
昭和新山ができるさまを、天地創造をこの目で見られることの喜びにたとえ、「立春の日には卵が立つ」という世界的に有名となった珍説を、実験と計算を通して論破し、線香花火の美しさを科学的に解き明かし、美しい文章で表現する。
ちなみに火球を作って、そこから火花が飛び散る花火は日本の線香花火だけなのだそうです。
とても気持ちのいい文章ばかりで、心が美しく洗われたような気持ちがいたしました。
Posted by ブクログ
この間、長野県へ行く仕事があり、そこで見た雪の結晶に驚かされた。
きれい、を通り越した不思議な精緻さに感動することが出来たのは、以前から中谷宇吉郎に触れていたこともある。なので、この随筆を読むのが、なんだか嬉しかった。
「自分の眼で一片の雪の結晶を見つめ、自然の持っている美しさと調和とに眼を開くことの方が、ずっと科学的である。非科学の代表は、自分のすぐ眼の前にある自然の巧みを見ないで、むやみと名前や理論などだけを言葉でおぼえることである。」
「科学の発達は、原子爆弾や水素爆弾を作る。それで何百万人とかいう無辜の人間が殺されるようなことが、もし将来この地球上に起ったと仮定した場合、それは政治の責任で、科学の責任ではないという人もあろう。しかし私は、それは科学の責任だと思う。作らなければ、決して使えないからである。」
雪に関する話も面白く、幻想的ですらあるが、二部にある「天地創造の話」「立春の卵」「線香花火」「琵琶湖の水」も、面白い。
普段、なんとなく、大雑把に考えているところを、それは突き詰めると嘘だよ、と切られてしまう鋭さがあるからだ。
また、そこには多分に寺田寅彦の姿も見える。
この時代の科学者たちが見つめた眼は、今も受け継がれているのだろうか。
そうである一方、科学的に考えないものごとの良さも語れるのだから、この人の随筆は、やはり味わうべき名作であると言える。
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