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『黒牢城』〈古典部〉〈小市民〉
飛躍し続けるミステリ作家、思考の軌跡
作家生活25周年記念エッセイ
日本で三番目ぐらいにうまい麻婆豆腐を作り、
丘の上の図書館に絶大な信頼を置き、
スコーンを食べ比べ、
私のものではない恋の思い出を持つ――
作家・米澤穂信がデビュー以来さまざまな媒体に記した文章に書き下ろしを加えたエッセイ集。
「好奇心は、仕事なのです」と言い切るそのこころはいかに……
博覧強記、千思万考、ビター&スイート、どの一篇も極上の味わい。
歴史好きも甘いもの好きも建物好きも、
そして米澤穂信好きのみなさま、ようこそ「談話室米澤」へ!
<目次>
〈談話室〉
目黒川の桜と共犯関係
都立中央図書館とレファレンス
東慶寺と解体されたアジール
落穂拾いと地の掟
全生庵と季節感
岸和田城と見えない恐怖
六義園と黄金時代
そこにマイセン
刀を見た話
絵を見た話
会見を聞いた話
青淵文庫と永遠性の喪失
スコーンと白米
スパゲッティとパスタ
蕎麦と牛乳
井の頭の恋
五稜郭と歴史のオルタナティブ
瑞泉寺と庭の哲学
高山陣屋と徳川の平和
チャプター・ワン
おちょぼさんと降り積もる時間
哲学の道と何かの道
金毘羅堂と両輪
最適解
〈キッチン〉
麻婆物語
炊飯道
鎮痛剤と夜の茶漬け
「さば」と「しめさば」
冬瓜とごぼう
人類の執着とチョコレート・セレクトショップ
新宿の小吃
食の正気
ほか、60篇以上を収録
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Posted by ブクログ
米澤さんのショート集。小説をずっと読んできたが、ここで随筆的、リラックスして力が入ってない文章もまた、素晴らしい世界観を与えてくれる。
サッカーの中村選手の引退会見で、原動力を聞かれて、うまくなりたいから、と答えたこと。そして、よそいきの理由がその次に続く、サッカーが好きだから。でも、うまくなりたいというのは、その仕事を続けるやっぱり原動力んだなと感じたという文章が印象的だった。誰しも、うまくなりたいじゃないですか、でもそれをうまくなりたいから続けて行くことって、結構大変だ。それは、好きこそ物の上手なれ、という慣用句にもあるとおりで、好きだからというのが理由なんだと思っていた。でも、うまくなりたいという衝動こそが、その原動力でいいんだという風に思うと、自分の仕事もまたそうなんだろう。スパゲッティの最近の復権を喜ぶ話もまた秀逸。パスタという言葉よりも随分前からスパゲッティはその市民権を得て、ロングパスタの代名詞として活躍してきたのに、なんだか古いという印象与えてだんだん肩身の狭い思いをし、言語的には淘汰されかかっていたという話。言葉に注目して世の中をみると、なんと面白いんだろうか。
キッチンというくくりの食に関するショートもなかなか。お米を炊くという行為を土鍋でやられているということも共通点ながら、冬瓜がすきというコラムでも四川飯店を想像させる。
もうひとつ、圧倒的な作品はマリオについて。なぜ、マリオが穴に落ちても、1−1のスタートからやり直せるのか、この自明とも言える事態を、シナリオ別に考察するというバカバカしい内容。でも、ぐっと引き込まれる。なぜなら、マリオが穴に落ちていく、このシュールな状況を、子供ながらにシュールだなと思っていたからだ。
日常の日の当たっていない、面白いことに光を当てるエッセイ的な要素を談話集として集めた素敵な作品でした。
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