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昭和三十四年、五粒の種を託され京都・舞鶴へ向かった少年・光太と、喘息を抱え海辺で育つ姉・皐月。昭和の漁村の営み、高度経済成長に伴う家業や相続の変化、巨大な資産の謎、そして大人になる痛みと喜び――。舞鶴湾に降り注ぐ光は、家族の記憶と人生の航路を時代を超えて照らし続ける。夢と希望を与えてくれる傑作長篇小説。
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Posted by ブクログ
地図を眺めながら読んでしまい、いつか舞鶴を訪れたいと思ってしまう。すてきな風景や風土、美味しい食べ物、つながりの強い家族、うらやましい境遇などにあふれている。
昭和から令和への人生一代記。感情の安定した朴訥とした語り口。宮本さんのお人柄もそうなのだろうか? 光太は舞鶴にやってきた。すき焼肉800gと5つの種を預かって。舞鶴には姉の皐月ちゃんがいて、なぜかというと喘息持ちで祖父母に預けられていたのだ。プロパンガスが来て、風呂に取り付けられる。 ツルばあち...続きを読むゃんの誕生日に皐月と光太は木を植える。皐月はヤマボウシ、光太はコブシ。五老ヶ岳に登る。ここからの舞鶴湾の眺めが一番美しい。父母がやってきて駅まで迎えに行く。父は新車を買うという。父は日野ルノーを購入、事務所と工場を整備して、7人雇う。 伊勢湾台風が来て、一帯は停電になり、皐月の喘息発作が治らなくて入院になったが、その日は救急車が絶えずに眠れなかった。情報が入って来ず、テレビアンテナがあっても飛ばされてしまう。伊勢湾台風で舞鶴もすごい被害に見舞われた。その後皐月ちゃんのおじいちゃんが来て、京都で高校生をやるように画策する。光太は父が皐月ちゃんと血が繋がっていないのを忘れていた。 皐月ちゃんが京都の高校に進学して、家から火が消えたようになる。大学も京都へ。だけど皐月ちゃんは父と舞鶴に帰る。大学を辞めるという。
非常に読後感が良い。舞鶴というところは私の人生の中でも光っている、思い入れのある場所なので、「湾」という題名からなんとなく舞鶴を思い浮かべたが、見事に当たった。舞鶴湾の美しさを知る人は読んで欲しい。
美しい場所から生まれる美しい家族の話。 大きな事件が起きるわけではない。舞鶴という場所で生まれ育った主に姉弟の物語。 ここで生まれ育ったわけではないけどそんな幼少期があったような、あるいはそこに憧れを抱くような美しい記憶。 振って湧いた僥倖はシンプルに羨ましい。 これほど伸びやかに生きられたら、と...続きを読む思う。
美しい舞鶴湾のお話。最近行ってないな。よくドライブしたな。五老ケ岳よく行ったな。 かなり近くて風景が目に浮かぶのでつい買ってしまったやん、 昭和高度成長期、五粒の種を託され舞鶴に向かう少年光太の語りで物語は進む。腹違いの姉皐月と、祖父のタワシじいちゃん。その従兄弟のマジ—、そのお嫁さんであり姉妹...続きを読むのツルカメばあちゃん、レーダーの会社の社長である父と母… 高度経済成長の真っただ中に美しい田舎の漁村で成長していく光太と皐月。血縁家族の共同生活がまた楽しい。朝鮮特需や高度成長期の昭和時代に長閑な漁村で生活を営む人々のその時代時代の人情味溢れたエピソードの数々は昭和の時代のおおらかさとか、平成の時代の慌ただしさとか、令和のなんとも混とんとした時代を彷彿とさせる。時折出てくる喘息の吸入器とか知らないが伊勢湾台風のお話。興味深々。大金を得るも冷静な光太と皐月。年代が行ったり来たりしたので話がときおり惑いながらも良き時代を回顧した久しぶりの宮本輝さんの長編小説は主人公がいつも謙虚で創造させる風景が宮本輝でした。舞鶴にまた行ってみよう。スカイタワーの海軍カレーと蒲鉾食べなきゃ 宮本輝はやっぱり好きかな
もう何年ぶりになるだろうか?というくらいに久しぶりの宮本輝さんの本。 舞鶴湾を舞台に少年・光太と喘息を抱え海辺で育った姉・皐月の成長物語。 昭和34年に光太が見たものは、舞鶴の風景と祖父母たちの様子。 ちょうど高度成長期の頃に育った光太は、町の変化や車社会になりつつある状況から家業の変化などを...続きを読む見てきたのがよくわかる描写である。 光太よりは少し後の世代になる私自身も、瀬戸内の田舎で育ち、親戚関係の雑多なあれこれを多少は見てきたので少なからず共感するところもあった。
地元が舞台なので記念も兼ねて購入。宮本輝氏、めっちゃ久しぶりに読みました。舞鶴舞鶴舞鶴で、おなかいっぱい。方言に少し違和感。『ちゃった』がひとつも使われず、亜沙子が気にする『ねん』が多用されておりますが、舞鶴では余り使われないかなと思います。
うんと時間が経ったら、あの時はこうだったと思い出すことが多くなるのかも。色々な思い出があるって幸せなことだな。
湾 著者:宮本輝 発行:2026年5月25日 新潮社 初出:「新潮」2024年6月号~2025年4月号、6~12月号 湾とは、舞鶴湾(京都府)のこと。 同じ舞鶴市にあっても、「人」の形をした湾に面した、西舞鶴と東舞鶴とでは世界が違うし、離れていて交流も少ない。東は産業の中心地、西は漁村集合体。物...続きを読む語は、西舞鶴にあるいくつかの集落が舞台。そこに入ってくる人、去っていく人、戻ってくる人、行き来をする人を描く長い物語。1959年から2023年に至るまでの話。 主人公は1949(昭和24)年生まれの光太。3歳、2学年上の姉である皐月とは父親が違う。父親は生後3ヶ月の時に死亡。母親が再婚し、光太が生まれた。皐月は喘息があるため、空気のよい西舞鶴の祖父母宅(母親の両親宅)に預けられていたが、光太が小学5年の時、1959(昭和34)年からは家族全員が西舞鶴に移り住んだ。光太は姉ことを「皐月ちゃん」と呼び、久し振りの再会にときめく。2人きりのきょうだい愛、そして、ほのかな恋心を匂わせる関係。1959年の夏、先だって一人大阪駅から舞鶴へと向かう場面から、2023年現在(74歳)までを一人称で語る。 宮本輝の小説は、それほどストーリー展開がなく、ある意味で退屈ではあるが、それだけに現役作家の中でももっとも純文学的寄りの作家だと思っていた。去年、初めて挑んだ時代小説「潮音」(全4巻)で、前半はエンターテインメント小説を堪能させてくれ、新しい作家宮本輝を見せてくれた。今回はまた純文学に戻ったが、新たな宮本輝の出発点になったと新聞で報じられていた。読んでみて、それも感じた。若い頃の作品は、例えば、庶民の貧しさに対して力が入っていたように思う。体制に逆らうとかじゃなくて、世の中全体の矛盾とか切なさとか、もっといえばこの世をつくったカミに対してとか。今回の作品は、そんな〝肩の力〟みたいなものがすっかり抜け落ち、ごく穏やかにこれまでの人生を語っている雰囲気。 意外だけれど、どこか村上春樹的な作品になった。一言でいうと、小市民幻想的な。僕は村上春樹に関して、それを感じることが多い。この物語は、平和である。戦争が大きな背景となっている小説ではあるが、登場人物同士はきわめて平和であり、トラブルなどは一切といっていいほど描かれていない。しかも、生活には困らないどころか裕福だったりする。 ***** 光太の父、石丸紀夫は戦争で傷痍軍人となり送り返されて京都の病院へ。山中温泉で湯治中に知り合った菜々江と結婚した。菜々江は結婚し皐月を産んだがすぐに夫を亡くしての再婚となった。紀夫は小型レーダーの会社がうまく回って仕事も順調、光太も生まれて一家4人、平和裏に、少し裕福に暮らせるようにも思えたが、菜々江の最初の夫が京都の老舗扇子屋の次男であり、長男(嫡男)夫婦に子供がないため、唯一の跡取りが皐月ということになり、死んだ夫の父親(皐月の父方の祖母)が家督を継がせて婿養子を迎えると決め込んでいた。 紀夫はもちろん京都へは行かせたくかなったし、皐月も最初はそんな気がなかったが、死んだ父親が生まれ育った家がどんな家なのか(詩仙堂近くにある)を体験したくなり、勉強ができた彼女は京都の有名大学系の高校へと進み、その家に住んでみることにした。大学に進学したら独り住まいをするつもりだし、跡取りになるとも宣言したわけではなかったが。 前半は、その前、4人で西舞鶴に暮らした頃の話。母方の祖父であるタワシ爺ちゃんと、その従兄で義弟(妻同士が姉妹)のマジー(マジナイ爺ちゃん)、その妻であるツルさん、カメさん、との関係が描かれ、西舞鶴に点在する漁港(漁村)の様子、美しい自然の様子を紹介されていく。人間関係はのんびりし、お金のやりとりも大らかで綺麗な人たちばかりだった。 ところが、実は一つだけ大きな秘密があった。これが若き宮本輝作品との違い。それは、満州から持ち出した阿片の一部をこっそりいただき、それを売って大金をせしめたという設定である。 満州国に溜め込んだ大量の阿片を、日本の政府と軍部が日本に密輸し、横浜から海外へと売りさばき、資金調達しようとしていた驚愕の事実は「1945最後の秘密」(三浦英之著、集英社クリエイティブ)などで明らかになっているが、その一部を民間人として工事などで雇われていたタワシ爺ちゃんとマジーの二人が、命からがら小さな漁船で運び出し、日本に見事に持ち帰ったのだった。もちろん、そのれは日本の大物軍部高官からの依頼だったが、その一部をいただいたのだった。 2人が残したのは、当時のお金で2億4500万円、ゼロが2つつくほどに増やし、まったく手をつけずに皐月と光太に残したのだった。 皐月と光太も、それぞれの仕事を全うし、それを使って贅沢をすることもなく暮らす。会社をつくり、人に経営を任せ、従業員を雇う。みんな平和に暮らして年をとっていく。 ***** 石丸光太:主人公、昭和24年生まれ、小学5年生、 石丸紀夫:光太の父 石丸菜々江:光太の母、 石丸皐月:光太の姉(異父)、昭和21年生まれ、父親は三ヶ月の時に交通事故死(軍用トラックに轢かれる)、喘息持ち 田鷲公作:菜々江の父、旋盤工、タワシ爺ちゃん、85歳死亡 ツル:ツルばあちゃん、タワシの妻 竹園満穂:マジナイ爺ちゃん、マジー、タワシ爺ちゃんの義弟で従兄、81歳死亡 カメばあちゃん:マジーの妻、ツルばあちゃんの妹 小竹福太郎:小竹家(扇子屋)長男、60歳で膵臓癌死亡、副社長 竜子:その嫁、常務になって経営で辣腕ぶり発揮、芸妓あがり 小竹寛太郎:福太郎の父、外商担当、80歳心臓病で死亡 浪子:その妻 喜美子:女中 しげちゃん:丸昭(釣り船屋兼仕出し屋)の息子、皐月と同級生、63歳で病死 オカベ:皐月と同学年、「毒キノコ」、吉原の船具屋の子、悪ぶりの首領格 美那子:商店街にある小料理店「さより」の娘、「毒キノコ」の名付け親 やっさん:タワシ爺ちゃんの知り合い、漁師?、釣り客を漁場に運ぶ、ハイヤー的な船 タカさん:ツル・カメを乗せてきた人、漁師? 秀雄:マジーの幼馴染み 八幡:白杉漁港の船棚で仕事、ボート預かりの仕事? 大崎:漁協組合長、弟は不動産業 藤尾:白杉漁港の人、猫の三五郎を貰ってくれた 守屋:父親が大正時代に病気の時にお金を貸してくれた せいちゃん:笠原政太郞、牡蠣の養殖、皐月の中学同級生、男子、白杉漁港北端の平屋に住む、48歳で肺がん死亡 くにやん:笠原邦久、せいちゃんの父、酒の飲み過ぎで肝炎入院、妻は男と出奔して大阪で死亡 千沙子:せいちゃんの妹 元七:釣り船の漁師、深海魚を釣らせる 牧田のおばさん:白杉漁港、牧田家は3人家族、母親と娘(高卒後にベニヤ板会社へ) 平河公正(きみまさ):青井小学校教師、教頭になった 柴崎:青井部落、80代半ば夫妻、田口家の娘と柴崎さんの息子が結婚して婿養子として田口家に入った、嫁が死に柴崎家の両親が入って住む、柿が甘い 田口五郎:南アフリカから帰国した、40歳になった 柏木:アジ釣り、牧田のおばさんの仲間?、漁師?(180P) コーヨーレーダー社員 石丸紀夫:社長 林田幹元:副社長(社長代理者として引き抜く) 高峰洋一:コーヨーレーダー社員 鶴田彦斎(げんさい):同上 沼田みち子:経理と総務を兼任 山瀬通太郎:営業部員 田鷲公作:製品管理部 コーヨーソナー 樋口:社長 檜山大吾:あけぼの塾、薬学部を光太に勧める 佐田七郎:光太が師事した大学の教授 吉川仙蔵:北海道(道南)の鵡川(むかわ)に住むホタテ漁師 *********** 64年前の7月30日、大阪駅。小学5年生。 昭和34年の夏から、西舞鶴で8人にて住む。 田鷲家、竹園家、石丸家 舞鶴出身の菜々江は、西陣で糸染めの修行をしたが、四条大橋近くにある老舗扇子屋「竹古堂」(小竹家)の次男と知り合い、説得されて糸屋を辞めた。次男は誂え専門の扇子屋を本店となりに開店、菜々江はそこで働き、2ヶ月ほどで結婚(でき婚で名家としては不謹慎)。 本店の兄夫婦(小竹福太郎、竜子)は子供がおらず。 皐月が生まれて3か月後に次男が交通事故死。 光太は京都の大学で薬学を学ぶ。大徳寺近くに下宿(借家)。 大学→大学院→製薬会社(京都、中堅)就職→カリフォルニアの系列会社で5年間研究員→帰国して製薬会社で研究開発一筋→研究開発室長で定年退職→相談役→K薬科大学講師→74歳 千沙子は上七軒の「浜岡」で21歳のときに芸妓「ちはな」となり、「すみ花(谷口葉子)」と並んで「上七軒に二花(にか)あり」といわれる存在になった。 タワシ爺ちゃんとマジーは、横浜のおちゃらけ3人組に羊羹35貫目を七掛けで買ってもらった。2億4500万円。その後、ゼロが2つつくほどに増やした。 ツルマイ興産株式会社 光太が社長 近江屋カウンセリング株式会社 株式会社丹後屋 皐月が社長 (283P) 貝野秀樹:「カイノ・コンサルティング株式会社」社長、おちゃらけの1人 *3社はカイノ・コンサルティングに業務の多くを委託 貝野津奈子:秀樹の孫、カイノ・コンサルティングを継いでいる マイケル・ヘンドリック:サンディエゴの英語教室教師 横尾亜沙子:マイケル・ヘンドリックの補佐役、UCSD学生、3歳下、光太の妻に ブラム・アッケルマン:オランダ製薬会社の薬学博士 藤尾公志郎:「丹後桜墓苑」の設計を依頼、公園の専門家、ウィーン大学・大学院で都市造園学を学んで帰国、妻子あるが皐月が好意を持ち不倫 河瀬:青井部落の農家、墓苑近くに住む 山下:同上、河瀬の妹 この姉妹に墓苑の管理を任せるつもり 谷山里佳子:墓苑の従業員第一号、農家(河瀬)の娘 2023年9月22日現在 光太:74歳 皐月:77歳 亜沙子:2年前に69歳で死亡(卵巣癌から膵臓と十二指腸に転移) 光太の子 光和(みつかず):長男、43歳、精密機械メーカーでシンガポール赴任、来年にはコーヨーソナー(魚群探知機でシェア2位)に入社予定、2人の子 日菜子:長女、39歳、2人の子の母、京都市内で教師、夫は放射線科医師 菜美:次女、35歳、京都市内の総合病院で検査技師、独身、光太と同居 和大(かずひろ):次男、22歳、大卒後に大手電池メーカーの工場で技師→一昨年よりコーヨーレーダー営業部、結婚し今年の春に男児誕生 義和:大学2年で中退、東山区の有名料亭で修業→フレンチシェフの下で8年修業→独立準備中で光太のマンションに居候 ・みどり:光和の妻 ・由梨:光和の長女 ・由衣:光和の次女 石丸紀夫は2002年死亡 菜々江は2006年死亡 笠原千沙子は2019年死亡 小竹竜子は2006年死亡
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