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東京で派遣社員として働く琴美は、父親の介護のため30歳で札幌へ戻るも、大事な「推し」がいたから後ろ髪を引かれたまま日々を過ごす。 閉鎖的な環境の中、生き続けるためのよすがを求めて懸命にもがく姿を描き切った、著者の新境地。
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Posted by ブクログ
河崎秋子さんが描く現代劇は 介護がテーマ。 教育者だった父。 昔から覚えがめでたく、今は遠くアメリカで暮らす妹。 主人公は東京暮らしで推しを見つけたが、 介護のために北海道に移住する。 コロナ禍も重なって、 価値観と価値観が交差し、 ときに衝突し、ときに混ざり合い、ときに和解を生む。 決して...続きを読む“できた娘”ではない。 優等生ではない“評価D”だからこその 行き詰まりとこれからの物語。
私の父は82歳、認知症はないけれど、同じく年老いた母がおり、現在、独身の弟が両親と同居している。 弟は高卒で、事あるごとに大卒の私と比べられ、両親からD評価を受けて来た。 そんな弟は現在契約社員でVチューバ―とやらを推している。書店で帯を見た瞬間、吸い寄せられるように手に取った一冊。 今年、ベスト3...続きを読むに入る本だった。 最後は、泣けた。自分がどの人物に共感して泣いたのだろうかと思えば、きっと「家族」として共感したのだ。 それは、老いを受け入れる父であり、推しに救いを求め先の見えない不安と戦う主人公であり、また、娘達の未来を見届けることなく突如命を奪われた母であり、姉にすべてを押し付けておきながら、日々の忙しい日常で罪悪感に蓋をする妹であり。 だから、最後の父の決断、主人公の光に涙が出た。 どんなに老いても、親は子を思う。子に決断を委ねない親の姿は哀しいながらも美しかった。 最後、主人公がゆなに妹の姿を重ねたシーンで、彼女は介護者としてはDランクでも、姉としてはAランクに他ならない、そう思えた。
東京で派遣社員として働く琴美は独身で30歳。アイドルのゆなが心の支えで、ささやかな楽しみとして暮らしていたが、北海道の父が卒中で倒れた。後遺症は左脚麻痺くらいで、ヘルパーなどを使って生活できる程度だったが「雪かきができない」という口実のもと呼び戻され、雪の季節が終わってもそのまま介護の生活。ヘルパー...続きを読むも父はとっととやめさせてしまっている。降りかかるストレスを描いていく。 読んでいて本当に苛立たしく、読み進めるのが困難だったほどだった。
河崎秋子『介護者D』朝日文庫。 これまでの河崎秋子の小説とは風合いの異なる小説であった。タイトル通りの介護小説である。読んでみて、閉塞感を感じるばかりで、余り良い思いはしない。 実家に住み続け、両親と暮らすためには公務員か開業医、自営業を選択するしか無い時代である。自分の離れて暮らす父親も大腿骨...続きを読むを骨折してから急速に衰え、要介護4と認定され、母親の負担も大きくなり、特別養護老人ホームに入所させるという選択をした。しかし、新型コロナウイルス感染禍でなかなか会いに行けず、面会はガラス越しかタブレットという状況だった。そんな父親は昨年末に老衰で亡くなった。母親は父親が生きているうちはと気を張っていたようで、この秋くらいから身体を壊し、家に籠もるようになってしまった。月に何度か兄弟で顔を出し、買物や掃除を手伝い、公的な支援も使いながら、何とか面倒をみている。最近になり、母親の身体の状態が大分回復してきたようだ。 そんな自分の経験もあり、主人公が好きな推し活も出来ずに父親と飼い犬の介護に奮闘する姿に身につまされる思いで読んだ。 東京で派遣社員として働いた30歳の猿渡琴美は、父親の介護のために札幌へ戻るが、5年前に母親を轢き逃げ事故で喪った直後に出会い、励まされた大事な女性アイドルの『推し』が忘れられず、東京での生活に後ろ髪を引かれる日々を過ごしていた。 父親にアメリカで暮らす優秀な妹や既に結婚して、子供まで居る同級生と比較されながら、閉鎖的な環境の中でやっと生き続ける琴美だったが、新型コロナウイルス感染禍で派遣社員として働いていたコールセンターが閉鎖し、父親と2人きりで家に籠もる生活になる。 すると飼っていた犬のトトが認知症になり、介護が必要となる。さらに新型コロナウイルス感染禍で思うように推し活も出来ず、ますます息苦しい生活の中に身を置くことになる。 本体価格880円 ★★★★
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