【感想・ネタバレ】介護者Dのレビュー

あらすじ

東京で派遣社員として働く琴美は、父親の介護のため30歳で札幌へ戻るも、大事な「推し」がいたから後ろ髪を引かれたまま日々を過ごす。
閉鎖的な環境の中、生き続けるためのよすがを求めて懸命にもがく姿を描き切った、著者の新境地。

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Posted by ブクログ

河崎秋子『介護者D』朝日文庫。

これまでの河崎秋子の小説とは風合いの異なる小説であった。タイトル通りの介護小説である。読んでみて、閉塞感を感じるばかりで、余り良い思いはしない。

実家に住み続け、両親と暮らすためには公務員か開業医、自営業を選択するしか無い時代である。自分の離れて暮らす父親も大腿骨を骨折してから急速に衰え、要介護4と認定され、母親の負担も大きくなり、特別養護老人ホームに入所させるという選択をした。しかし、新型コロナウイルス感染禍でなかなか会いに行けず、面会はガラス越しかタブレットという状況だった。そんな父親は昨年末に老衰で亡くなった。母親は父親が生きているうちはと気を張っていたようで、この秋くらいから身体を壊し、家に籠もるようになってしまった。月に何度か兄弟で顔を出し、買物や掃除を手伝い、公的な支援も使いながら、何とか面倒をみている。最近になり、母親の身体の状態が大分回復してきたようだ。

そんな自分の経験もあり、主人公が好きな推し活も出来ずに父親と飼い犬の介護に奮闘する姿に身につまされる思いで読んだ。


東京で派遣社員として働いた30歳の猿渡琴美は、父親の介護のために札幌へ戻るが、5年前に母親を轢き逃げ事故で喪った直後に出会い、励まされた大事な女性アイドルの『推し』が忘れられず、東京での生活に後ろ髪を引かれる日々を過ごしていた。

父親にアメリカで暮らす優秀な妹や既に結婚して、子供まで居る同級生と比較されながら、閉鎖的な環境の中でやっと生き続ける琴美だったが、新型コロナウイルス感染禍で派遣社員として働いていたコールセンターが閉鎖し、父親と2人きりで家に籠もる生活になる。

すると飼っていた犬のトトが認知症になり、介護が必要となる。さらに新型コロナウイルス感染禍で思うように推し活も出来ず、ますます息苦しい生活の中に身を置くことになる。

本体価格880円
★★★★

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2025年11月14日

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