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Posted by ブクログ
2025年刊。2014年に出た『翻訳教室』の改題増補文庫版。もとの10章に、「AI翻訳なんか怖くない」の章が追加されている。
語り口が軽めの、翻訳をめぐるエッセイ。音楽会に行くなどの日常も織り込みながら、仕上げたばかりの翻訳の裏話。ヴィアン『うたかたの日々』、ウエルベック『地図と領土』、ネミロフスキー『フランス組曲』も出てくる。
引き込まれたのが森鷗外。4つの章に登場する。始まりは、好んで聴くマーラーの交響曲第8番の話(翻訳作業のBGM)。この曲の題材として使われているのがゲーテの『ファウスト』。マーラーは『ファウスト』をどう曲として翻訳しているか。そこから話は、鷗外の『ファウスト』の日本語訳に及ぶ。その訳がいかに素晴らしいか。ちなみに、Symphonyを最初に「交響曲」と訳したのは森鷗外。そういうオマケもついている。
作家の森茉莉は鷗外の娘。その茉莉の息子は山田爵、長じて東大のフランス文学の教授になった。野崎歓は、学部の3・4年次に、定年間際の彼に教わった。その授業風景が描かれている。爵(じゃく)という名前はフランス語のJacques、命名は祖父の鷗外。
鷗外と言えばドイツ。しかし、フランス文学や文化にも詳しかった。小倉の左遷時代には、フランス人神父からフランス語を習っていた。娘や息子につけた名もMarie、Anne、Louis(茉莉、杏奴、類)。結構なフランスオタクだったのだ。
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