Posted by ブクログ
2011年10月22日
とあるブログでお薦めされていて、ずっと気になっていた。中古の値が下がらないか待っていたんだけど(失礼)、とりあえず上巻だけ買ってみた。読んで数十ページで、下巻を購入した。……おもすれえぇ!
異世界に時々トリップする妹の具合が悪くなり、助けるために初めてトリップした姉の話。西洋風ファンタジーの異世界で...続きを読む、妹・ヒナタは年若い王様であるザキの恋人となっている。勢いで突っ走らない大人な対応ができる姉・コカゲの年齢と、決してヒロインタイプとはいえない性格が絶妙。もしもコカゲの話だったら、右も左も分からないながら困難を乗り越えて王子と結ばれる、少女漫画の典型のような、既視感を覚えるものになっていたと思う(この筆者だったら、それでも面白いものが書けてしまいそうだけど)。コカゲは本当に姉という感じ。自分でも気付かないうちに我慢して、「お姉ちゃん」をして、それが普通になっている。愛想がいいわけでもなく、素直で明るいわけでもない。クラスのヒロインにはなりそうもない。むしろヒロインタイプはヒナタ。だからこそ、面白い。ヒナタから聞いていた話と違うお城の人達、想像できない考え方……人と関わるという、生きていく中で必要で切実なことで躓き、考え、行動し、振り回される。上巻では、コカゲがトリップしてから2週間ちょっとしか経っていない。もっと長い時間を過ごしているような気がするくらい内容は濃密。
「人が人と関わる」ことがちゃんと描かれているから、この物語の世界は優しいのだと思う。目を合わせて言葉を繋いで、感情を吐き出して、心配したり気を配ったり。そういう当たり前にできればいいのに難しいことを、登場人物らは気負いなくやる。みんなが善人というわけではない。それでも、この世界に優しさを感じるのだ。