ブックライブでは、JavaScriptがOFFになっているとご利用いただけない機能があります。JavaScriptを有効にしてご利用ください。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで100万冊以上配信中!
来店pt
閲覧履歴
My本棚
カート
フォロー
クーポン
Myページ
3pt
「私」とは何か? 「世界」とは何か? 人生の終末期を迎え、痴呆状態にある老人たちを通して見えてくる、正常と異常のあいだ。そこに介在する文化と倫理の根源的差異をとらえ、人間がどのように現実を仮構しているのかを、医学・哲学の両義からあざやかに解き明かす。「つながり」から「自立」へ――、生物として生存戦略の一大転換期におかれた現代日本人の危うさを浮き彫りにする画期的論考。
アプリ試し読みはこちら
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
新書やビジネス書を読むときは、面白いと思った箇所に 付箋を貼ったりするのだけれど、これほどたくさんの付箋 を貼った新書はこれまでになかったと思う。気づきを与えて くれた点や、思わず唸って納得したりする点が随所にあって、 得るものが多かった一冊。 この本の内容をタイトルだけで推測するのは早...続きを読む計。なぜなら、 扱う範囲は「痴呆老人」にとどまらなくて、「認知能力の低下 に対する怖れ」という事象をキーワードに、現在の日本と 日本人が抱えている問題にまで及んでいるのだから。 アプローチは、医学的見地をベースに、哲学や宗教の考え方 を絶妙にブレンドしたもの。哲学や宗教の部分は少し難しい けれど、このブレンドのおかげで説得力が増しているのは 間違いない。 第一章 わたしと認知症 第二章 「痴呆」と文化差 第三章 コミュニケーションという方法論 第四章 環境と認識をめぐって 第五章 「私」とは何か 第六章 「私」の人格 第七章 現代の社会と生存戦略 最終章 日本人の「私」 付箋を貼った箇所の中でいちばん印象に残ったのは、第七章 で「ひきこもり」について触れた部分。 元々、日本の育児法は伝統的に他者とのつながりを重視 するものだったけれど、20世紀後半になってこの国は「自立」 した人間を育てるという方針に舵をきった。そこで何が起きたか というと、疑問を解くため、あるいは判断をするための判断 基準を求める子どもに対して、親や教師は回答を与えずに 「自分で考えなさい」と返すようになった。まだ自己決定に 必要な能力を育んでいない子どもはそこで悶々として、 自己決定をしなければいけない場面から意識的に遠ざかる ようになってしまった。これが「ひきこもり」の始まりだ、 というのが筆者の指摘。 そして、こんな事態を防ぐには、「判断基準というものが どこにあるのかを子どもに教え込む作業が、前もって、 または同時進行的に行われなければならない」と説く。 この作業をきちんと行う重い責任が大人たちにはある。
タイトルの付け方がうまいが、内容も高齢者だけでなく、人間万人に通じる深さを持っている。知性にもました情動の大切さ、自立の強調の偏狭さの指摘は身につまされた。一種の文明論である。痴呆老人やひきこもりだけでなく、乳幼児、知的障がい者からも同じ様な洞察が導かれるのではないかと感じた。「つながり」から「自立...続きを読む」へ急激に転換することの危うさ。 ・認知症が延命努力に値しない惨めな状態…日本「迷惑をかけるから」、米「自分の独立性を失うから」 ・認知症ならば延命措置を断る、というのは乱暴。 ・夜中に騒ぐのは、家族との人間関係。 ・一番良い経済環境は、老人か家族が全てを出すのではなく、双方が負担するのが発現率が低い。 ・偽会話=情動の共有 ・理解することではなく、やさしい声音でうなづく。 ・一貫した態度をとる。 ・「我々の味方でない者は敵だ」は、パニックに陥ったときの認知症の老人の反応と同一。判断能力を超えた不安を感じたから。 ・知力低下が進むほど、その人の人格は若い時分に戻っていく。 ・人間が人格的まとまりを保ちながら生きるために、自信、誇り、自尊心といった、現在の自我を支える心理作用あるいは自我防御機制が働いている。 ・人類史的には人格の単一説は比較的新しい。 ・知覚は期待(記憶も)によって操られている。 ・「わたしは生きている」のではなく、「いのちが私をしている」。 ・うまいつながり…1:周囲が年長者への敬意を常に示す。2:ゆったりとした時間を共有。3:彼らの認知機能を試すようなことはしない。4:好きなあるいはできる仕事をしてもらう。5:言語ではなく、情動的コミュニケーションを活用する ・どの経験にもなにがしかの学びと苦痛と楽しさの要素が含まれている。 ・ひきこもりから。見落とされていたのは、現代社会において「自立」することがとても重要であり、そのこと自体に問題などあるわけはないと認識されていて、それを実現させることに疑う余地はないと思われている。
認知症という抽象的な呼び名で、その実態を不明確にしてしまった高齢者の痴呆を赤裸々に描写しつつ、そこにある種の愛情さえも感じさせられる著者の眼差しに共感を覚える。
認知症であると診断された肉親などを持つ方々だけでなく、多くの人に読んでもらいたい本だと思いました。老人だけでなくひろく人間というものに必要なものがなにかを教えてくれます。 この本を読んでいるのといないのとでは、身内に認知症患者やその他引きこもりや統合失調症などの精神疾患患者が出た時のショックの度合い...続きを読むや接し方が絶対に違うと思います。立ち返ればごく基本的なことですが、その一見誰にでもわかるようなことを手に入れられないときに人は心を病んでしまうものなのだろうなと思います。もしも親が認知症だと言われたら、もう一度この本を手にとって読み返してみたいと思いました。
この本を読むと、きっと人に優しくなれる。 改めて人の一生を考えさせてくれる一冊。 前半は痴呆老人の現実。 後半はそれをもたらす深層心理についてで、 ユングや池田晶子を簡単にしたような感じ。 すごくわかりやすい。 自分たちの思考回路が、 日本人という人間であることに深く起因していることに気づく。
ただの認知症解説の本ではありません。痴呆を入口として自己のあり方、日本文化へと広がっていきますので読み手は後半考えさせられますね。第5章あたりから。終末期医療で無力感を感じるときに。噂には聞いてたけどこの著者はスゴイ方です。
痴呆老人への診療体験を通して「自我」について考察.人が「私」をつくる過程では社会•他者とのつながりが重要で,認知症の老人にも何かしらつながりを与えると自我を捉えることができ落ち着くらしい.認知症への不安についての問いかけで,欧米人は自分の自立性がなくなることが不安と答えるのに対して,日本人は他者への...続きを読む迷惑が不安と答えるとのこと.文化の差異が出ていておもしろい. 最終章はちょっと話が変わってしまった感じもするが,全体的におもしろかった.
[ 内容 ] 「私」とは何か? 「世界」とは何か? 人生の終末期を迎え、痴呆状態にある老人たちを通して見えてくる、正常と異常のあいだ。 そこに介在する文化と倫理の根源的差異をとらえ、人間がどのように現実を仮構しているのかを、医学・哲学の両義からあざやかに解き明かす。 「つながり」から「自立」へ―、生...続きを読む物として生存戦略の一大転換期におかれた現代日本人の危うさを浮き彫りにする画期的論考。 [ 目次 ] 第1章 わたしと認知症 第2章 「痴呆」と文化差 第3章 コミュニケーションという方法論 第4章 環境と認識をめぐって 第5章 「私」とは何か 第6章 「私」の人格 第7章 現代の社会と生存戦略 最終章 日本人の「私」 [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
痴呆老人の奇異な言動の背景には、痴呆老人独特の世界の解釈方法が存在する。というのは、痴呆老人はそれまでの人生におけるアイデンティティを発揮できるような環境の構造を、そのまま今の状況にあてはめ、それに沿った行動をとることが多い、ということ。以上が筆者の痴呆に対する考察だと思われる。(人間とは、自分の置...続きを読むかれた環境や状況の中で自我を拡張していきたがる存在という前提があり、それについても詳しく説明されている。) 具体的なコミュニケーション方法論は少なく、また痴呆の概念や関する記述は定説ではなくて筆者個人の意見である印象をうけた。しかしそれでも、痴呆に対して気が楽になる考え方を提示してもらえたと感じている。 あと老いる事に対する文化差の話しが面白かった。 最後の日本社会に関する考察を展開している章は、痴呆とは直接的には関係ない話だし、筆者の憶測にすぎないのであまりいらなかったかな。あと文章が論理的というより感情的だったのが残念な点。
著者の大井玄さんは、医者で、終末期医療や痴呆(「認知症」という言葉は使わないそうです)について見識の深い方。 その著者が、この本では、痴呆の要因や、痴呆老人がどのように現実の世界と関わっているかについて考察しています。 また、そこから派生して、“「私」とは何か”“多重人格”“ひきこもり”について...続きを読むも述べられています。 (「痴呆」についてはもちろん面白かったのですが、「ひきこもりの考察(“つながり”と“自立”の関係)」もかなり面白かった)
レビューをもっと見る
新刊やセール情報をお知らせします。
「痴呆老人」は何を見ているか
新刊情報をお知らせします。
大井玄
フォロー機能について
「新潮新書」の最新刊一覧へ
「学術・語学」無料一覧へ
「学術・語学」ランキングの一覧へ
いのちをもてなす――環境と医療の現場から
試し読み
人間の往生―看取りの医師が考える―
復興の精神
呆けたカントに「理性」はあるか
「大井玄」のこれもおすすめ一覧へ
一覧 >>
▲「痴呆老人」は何を見ているか ページトップヘ