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レイキャヴィクのアパートの一室で、刃物で喉を切り裂かれた若い男の死体が発見された。男はレイプドラッグと言われるクスリを所持しており、バーやレストランで出会った女性にクスリを混入した飲み物を飲ませて意識を失わせ、レイプしていた常習犯らしい。被害者による復讐か? 犯罪捜査官エーレンデュルが行方不明のなか、同僚のエリンボルクは現場に落ちていた一枚のスカーフの香りを頼りに捜査を進める。世界のミステリ読者を魅了する北欧の巨人の人気シリーズ第7弾。
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Posted by ブクログ
北欧のミステリーシリーズ。エーレンデュルかと思えば彼の部下のエリンボルクが主人公。 彼女の日常が細かく描かれていてとてもリアル。緻密な捜査や被害者の家族の感情が前面に出ている。エーレンデュルはどうしたのか、刑事仲間でなくとも気になる。
『エーレンデュル捜査官シリーズ』は非常にメッセージ性の高いミステリーだ 今回は卑劣極まりない犯罪の被害者たちに対して、あなたたちは悪くない、あなたたちに責任はない、世間から隠れて暮らす必要はない、堂々と生きろ!と強く主張している だけどその主張はまず「社会」に向けられるべきだと思うのだ 「社会」...続きを読むこそが犯罪被害者たちを日陰の存在に押しやっているのではないか、声を塞いでいるのではないかと思う そして、作者のアーナルデュル・インドリダソンはこのシリーズを通して、常に家族の絆についてスポットを当てているように思う そして今作は主人公がいつもと違ってエーレンデュルの部下、女性刑事のエリンボルクとなっている つまりいつもと違う家族が登場し、また違う種類の家族の問題が母親視点で描かれている 明確な答えは用意されていない 読者に提示されるのは問題だけだ 答えはそれぞれが自分の力で見つけるべきだとアーナルデュル・インドリダソンは言っているのだろうか そして今、私が強く思うのは、素晴らしい物語なんだが、アーナルデュルとかエーレンデュルとかエリンボルクとか聞いた時点で心折れてる人多いだろうなってことですw
『湿地』以来、いずれも高水準を保っているこのアイスランド・ミステリーは『エーレンデュル捜査官シリーズ』として出版社より紹介されてきたが、本書では当のエーレンデュル主任警部が不在というシチュエーションで女性刑事エリンボルクが初の主演を果たす。時に助け役なのか邪魔する役なのか判断が難しいかたちで三人目...続きを読むの刑事シグルデュル=オーリが登場するが、こちらも友情出演程度の顔出し。本書は、一作を通じてあくまでエーレンデュルを主役とした作品なのだ。 序章にして既にトリッキーである。まず女性にデートドラッグを飲ませレイプするという目的を持つ病的な犯罪者が一軒のバーで獲物を狙うシーンから本書はスタートする。続いて死体発見現場で本書のストーリーは正式発動されるのだが、思いに反して被害者はレイプされた女性ではなくデイトドラッグを仕掛けたほうの犯罪者の方であり、彼は自分の住むアパートの部屋で喉を掻き切られるという無残な姿で死んでいた。 アイルスランドという、北極圏に近くフィヨルド地形が目立つような小さな国。人口は30万ととても少なく、しかもその大半がレイキャビックに集まっているという。この小さな国で世界の言語に翻訳されている作家と言えば本シリーズの原作者の他にラグナル・ヨナソンで、ぼくはこちらの作家も日本語翻訳作品は全読して注目しているのだが、こちらはアイスランド北部にあるシグルフィヨルズルという田舎町の警察署に所属する若き警官アリ=ソウルを主としたシリーズ。ヨナソンでは女刑事フルダのシリーズ三部作が立て続けに翻訳されその衝撃的内容に震えたものである。 アイスランド・ミステリーに何よりも注目を集めたのが本エーレンデュルのシリーズで初邦訳された『湿地』であり、その後も主人公が抱えている過去(雪山で見失って以来行方のわからないままの弟、という未解決な事件)のトラウマは、執拗にシリーズに影を落とし続ける。さらにその事故、あるいは事件の真相究明にのために、エーレンデュルはレイキャビックから毎年決まって姿を消してしまう。 本書でもエーレンデュルが不在であるわけはおそらく雪山の事故を思い出し真実に辿り着くための旅なのだと思う。なので本書では主人公をエリンボルクが務め、日頃あまり語られなかった彼女の私生活の描写が随所に語られつつ、彼女が執拗に本書の事件究明に携わる姿のどこかに、改めてエリンボルクという女性の大切にしているものが明確になってゆく。ちなみに料理へのこだわりが強く料理本を出版までしていることは過去作にも書かれていたたが、その辺りの拘りは本書でも頻出、刑事というよりも女性という側面を主体に男性作家によって書かれた作品である、という捩れのようなものも面白い。 また真相に辿り着くための執念、そしてたった独りの捜査を通じて知り合ってゆく関係者たちとの接し方も通常捜査というよりは、より個人的な被害者である<悪い男>への怒りと殺害者への情さえ感じ取れてしまう辺りが通常のミステリと完全に逆転していて面白い。おそらくこの作品にしか登場しないキャラクターたちも、皆どこか魅力的でしっとりした情景描写に、いつもながらのインドリダソン作品のディープな味わいを感じてしまう。 次作は同じ時期(つまり真の主人公であるエーレンデュル不在時)のシグルデュル=オーリを主人公にしたものだそうである。87分署みたいに人数はいないけれど日替わり主人公のような楽しみまで加わってきた本シリーズの今後、そして何よりもいずれ明らかになるであろうエーレンデュルの行方知れずの弟の行方という解に辿り着くまで本書は読み続けてゆかねばならない。その意味でも順に辿って全作を読んでゆきたいシリーズなのである。
本作はエーレンデュルが不在で、同僚のエリンボルクが主役。 今までは脇役だったエリンボルクが、女性への暴力に対し、毅然とした態度で忍耐強く事件解決に向けて奔走する様子が描かれ、好感が持てた。 また、彼女の家族との関わりにも焦点を当てており、新鮮だった。
読書備忘録872号。 ★★★★☆。 これも大好物なシリーズです。 本作は7作目。 カテゴリは北欧警察(ミステリー)小説という感じでしょうか。 舞台はアイスランド。高緯度にある人口40万弱の小さな島国。 冬は極夜で一日中暗いイメージ。そんな暗くて寒い街で起きる犯罪をレイキャビク警察の主人公たちが...続きを読む陰気に解決していく!寒い寒い・・・。 本来このシリーズは犯罪捜査官のエーレンデュルが主人公なんですが、今作は同僚のエリンボルク(40代の女性、4人の子供と旦那あり)を主人公に据えたミステリー。 エーレンデュルはどこ行った? なんか2週間の休暇を取得し、東部に出かけていき行方不明・・・。謎でしょ? そうなんです。このシリーズの主人公や同僚は漏れなくプライベートに問題を抱えているんです。 犯罪捜査と並行して、このあたりの枝葉ストーリーが作品に深みを与えていることは間違いないです。 物語はレイキャビクの夜、パブらしき飲み屋で男が女を物色しているところから始まる。 どうやら男はレイプドラックを使ってレイプを企てている様子。 そして男のアパートの部屋で、男は下半身裸の状態で頸を鋭利なナイフで切られ殺されていた。 周りには使用済みのコンドームが。女性の髪の毛と思われる微細証拠。 口にはレイプドラックが押し込まれていた。 ベッドの下には女性の遺留品と思われるスカーフ。 男の名前はルノルフル。電気通信会社の技師。 現場にいたと思われるレイプ被害者?は誰なのか? ルノルフルを殺したのは誰なのか? 普通に考えれば、レイプ被害者が男の隙をついて殺害して逃げた? エーレンデュル不在のなか、エリンボルクが捜査の指揮を執る! ここにリンカーン・ライムがいれば現場の微細証拠の科学分析から全てを明らかにしていくことろですが、そこは北欧ミステリーです!ひたすら足を使った聞き込み捜査。 太陽に・・・の山さんか、踊る・・・の和久さんか!っていうくらい地道な捜査。 スカーフからインド料理の香辛料の匂いを手掛かりに・・・。 ルノルフルにレイプドラックを売ったと思われる売人に・・・。 ルノルフルが配線工事した家の聞き込み・・・。 ルノルフルの地元に、友人に、親族に聞き込み・・・。 登場人物の数が半端ない(巻頭に一覧があるので助かります)。 全ての登場人物から聞き取り、推理、聞き取り、推理を繰り返すエリンボルク。 そして、残り数ページでやっと事件の全容にたどり着く! エリンボルクと共に聞き取り捜査を体感するのがこの作品の醍醐味なので、毎度ですが全て割愛(;^ω^) そしてエリンボルクの抱える家庭問題。 4人の子供のうち、一番上の長男は夫の甥であり養子。 自分の子供たちと分け隔てなく育ててきた。それでも長男は家を出て行ってしまった。 それを母親のせいだと母親を目の敵にする次男。次男をお手本と崇める三男。唯一母親の味方の末っ子長女。 どこまでも優しい旦那。 だからこそ、捜査に明け暮れ、家のことが疎かになる葛藤に悩む。 レイプ事件と自分の娘を重ねて苦しむ。 エリンボルク家に幸あれ!と願わずにいられない! そして肝心のエーレンデュル。ホントにどこ行ってしまったのか・・・。 例によって亡き弟と向き合うために山を放浪しているのか・・・。 巻末の訳者柳沢由実子さんによれば、次作第8巻でもエーレンデュルは復活せず。 エリンボルクに代わり、同じく同僚のシグルデュル=オーリが主人公とのこと。 これまでちょろちょろとしか触れられなかった彼のプライベートが明らかになる!? めちゃくちゃ楽しみです。
エーレンデュル捜査官シリーズ7作目。 エーレンデュルは行方不明中。なので同僚のエリンボルクが主役。女性と犯罪の関係に焦点が当たってて、どこの国も女性は弱者と暗い気分になってしまった。 エリンボルクが作るアジア料理を食べてみたい。
もともとこのシリーズの良さは、 謎解きの楽しみというよりも、 事件の暗さに絡められた エーレンデュルの内面の深堀りにあると私は思う。 その片鱗は見られた。 エリンボルクの家庭の様子が描かれ、 親子の問題をどう語っていくのかに私は興味津々だった。 ラスト数十ページまで来たときに、 この本は恐らく前...続きを読む編で、 もう1冊を後編として出して、 謎解きも、エリンボルクの子どもとの葛藤も、 深く描かれるのだろうと思っていた。 それが、事件はあっけなく解決し、 子どもとの話も描かれずじまいだった。 とても良い取っ掛かりを持った作品だっただけに、 もったいないなあと思う。 風呂敷を広げるだけ広げて、 終了までの時間が足りなくなって、 慌てて風呂敷を閉じてしまった印象。 もしかすると、 エリンボルク同様、 インドリダソン自身も、 問題がつかみ切れていないまま書き終えたのかも。 インドリダソンが得意とする内面の描写を、 エリンボルクとルノルフルにやってくれたら、 これもまた傑作のひとつになったと思うのだが。
期待を裏切らないシリーズ、 今回はいつものエーレンデュルではなく 彼の部下の エリンボルクが主役。 面白かったー。 当たり前のことだけど 彼女にも家庭があり、 悩みがあり。 そして悪い男を征伐したのは誰か? そして終盤で誤植を見つけましたよ、 編集者さん。 再開→再会 ですよね。
エーレンデュル捜査官シリーズ第7弾。 6弾は、エーレンデュルがほぼ1人で捜査をしていたが、今作は女性であるエリンボルクが主人公として事件解決に乗り出す。 エーレンデュルの場合も家庭内のことも事件を追いながら絡めてきていたが、エリンボルクも同様に始めて知る彼女の家族ことが明らかにされる。 バツイチ...続きを読むであることや夫が自動車修理工であり、夫の亡くなった姉の子どもを養子にしたことやそのあと3人の子どもを生み、今は高校生の長男の反抗期に悩まされていること。 料理が得意で、でき得る限り手料理をも食べさせたいと思っているなど。 今回、アパートの一室で喉を切り裂かれた男の死体が発見され、レイプドラッグが見つかっていることから常習のレイプ犯かと…。 被害者による復讐なのか?をエリンボルクが追う。 殺害現場に残っていたものを手掛かりに捜査するが、決めてとなったのは匂いである。 エリンボルクが料理好きなこともあり、スカーフに残っていた香辛料の匂い。 そして、夫が修理工であることでエンジンオイルの臭いなどを嗅ぎとる。 ラストには、まだ探しものがあるという雰囲気で終わる。 この余韻はいつも感じることなのだが今回はすっきりとしないという不穏さが強い。 それにエーレンデュルが行方不明であることが気になる。 これは繋がっていくのだろうか…。
殺害された被害者はレイプドラッグを所持しており… 家族の絆を細やかに描いた社会派ミステリ #悪い男 ■あらすじ アイスランドの首都レイキャヴィークで発生した殺人事件、アパートの一室で男の死体が発見されたのだ。部屋からは女性のスカーフが見つかり、さらに彼はレイプドラッグを所持していたことが判明する。...続きを読む主人公である捜査官であるエリンブルクは、彼に乱暴された女性を探すために捜査を始めるのだった… ■きっと読みたくなるレビュー シンプルかつストレートな北欧ミステリーですね、胃にずっしりと来ました。タイトル『悪い男』とは間違いなくこの被害者であるのは想像がつく、一体この事件にはどんな背景があるのだろうか。 本作エーレンデュル捜査官シリーズの第七弾ということなんですが、実はこのシリーズまだ一冊も読めてないんですよね、あはは(湿地をはじめ、もちろん手元には何冊かあるけど)。でもシリーズ初読みでも前作以前のネタバレもなさそうでしたし、目一杯楽しませていただきました。 じっくり、本当にじっくりと捜査が進む。この静かさと重々しさが一番の魅力ですね。関係者や街の人々に聞きまわっても、解決の糸口すらつかめないというこの行き詰った重々しさ。それでもひたすら捜査を続けるエリンブルクの粘り強さが渋すぎて素敵です。 しかもこの女性捜査官であるエリンブルク、彼女の日常やプライベートがたびたび描写されるんです。夫との距離感、多感な年ごろの子ども達との関係性など、家族の間に吹く隙間風が針の筵のように彼女の背中に突き刺さってくる。 特に末っ子の娘に対して贔屓目に見てしまったり、猫かわいがりが転じて自分の甘える矛先になってしまう感覚なんかはホントよくわかるの。さらに娘を持つ親として、本事件の背景にある恐ろしさに対する震えを肌で感じ取ることができるのです。 そして物語の後半になってくると、他の家族との巡り合わせがやってくる。被害者家族と加害者家族が背負っている十字架が、彼らのとってあまりに重大過ぎて辛すぎますよ。読めば読むほど苦々しさが胸を襲ってきて、許せない感情が爆発しそうになりました。 ずっと水の底で本を読んでいるような錯覚に陥る、でも強い勇気も感じる渋いミステリーでした。 ■最近わたしが思っていること 性的同意アプリって知っていますか? 性的同意を証明するものとして、書面での手続きはその場の雰囲気を壊してしまうため、比較的手軽に手続きができるように作られたらしいです。効果とかセキュリティの問題など、いろいろ批判が多いですが、こんなアプリがでてくること自体が悲しくてならない。 そもそも手続きの問題なのではなく、愛している人とだけ性交渉に及びべきという、あたりまえの愛のカタチを目指すことのほうが重要ではないでしょうか。正しく教育され、ひとりひとりが成長していけば、同意なく人を襲うなんてことは起きないんですよ。 ただ…きれいごとだけでは問題がなくならないことも知ってまして。もし本作のような被害者を減らせるのであれば、この性的同意アプリもきっと意義があるのではないか。辛い思いをする人が、ひとりでも少なくなるようにしたいです。
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