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Posted by ブクログ
日本の未来について語ろうとすれば、誰もが微妙な表情を浮かべざるを得ない。産業が頭打ちになり、後発国に追い抜かれ、活路を見い出せない現代の日本に、希望はあるのか、と。しかし、それでもなお、他を上回るものがあるとすれば、それは日本の「美意識」ではないか。そしてそれはこの本のサブタイトル「未来」が示すように、日本の過去を振り返ることではない。そして、タイトルの言う「デザイン」の本質とは、消費者の欲望をルーズに具体化することではない。「潜在する可能性を可視化し、具体的な未来の道筋を照らし出していくこと、あるいは多くの人々と共有できるビジョンを明快に描き出すこと」(「まえがき」)なのだ。日本文化の伝統から、「未来素材」としての合成繊維の可能性までを縦断し、美意識への欲望が社会を新しくしていくビジョンを語る。この刺激と希望に満ちた一冊を知らずに済ますのはあまりに惜しい。著者の名を受験界に広めた評論 『白』 がそうであったように、原研哉の著作は、どの章からも、どの行からも、発見があり、驚きがある。そして、間然とするところのないその文体を経験することは、ひとつの濃密な交響曲を聴く趣ですらある。◆さらに言えば、デザイナーによる著作はその多くが刺激的だ。それはおそらく、色彩、造形、空間、音響などを意識するその職業が、論理だけに頼った思考とは異なり、感覚経験から直観された発見に満ちているからではないか。「思ってもいなかったことに気づかされる」ということ以上に、読書の本質的な喜びがあるだろうか。〈K〉
紫雲国語塾通信〈紫のゆかり〉2014年12月号掲載
Posted by ブクログ
無印良品、愛知万博等を手がけたデザイナー、原研哉の本。
デザインするということは装飾的に着飾ったり、ものをお洒落にするということではない。
例えば「考え方」だってデザイン出来るし、するべきだ。
デザインするということの本質、核心に迫りながら今後の世界、そしてその中での日本の立ち位置や振る舞い方を提案している。
「デザイン」は日常の中に溢れている。
お勧めの一冊。
まえがきより引用。
「中国、そしてインドの台頭はもはや前提として受け入れよう。アジアの時代なのだ。僕らは高度成長の頃より、いつしかGDPを誇りに思うようになっていたが、そろそろ、その呪縛から逃れる時が来たようだ。GDPは人口の多い国に譲り渡し、日本は現代生活において、さらにそのずっと先を見つめたい。アジアの東の端というクールな位置から、異文化との濃密な接触や軋轢を経た後にのみ到達できる極まった洗練をめざさなくてはならない。
技術も生活も芸術も、その成長店の先端には、微細に打ち震えながら世界や未来を繊細に感知していく感受性が機能している。そこに目をこらすのだ。世界は美意識で競い合ってこそ豊かになる。」
Posted by ブクログ
日本を代表するデザイナーのひとりである原研哉による、岩波書店の月刊誌『図書』における「欲望のエデュケーション」という題名の連載(2009~2011年)をまとめたものである。
著者は、連載の題名「欲望のエデュケーション」について、「製品や環境は、人々の欲望という「土壌」からの「収穫物」である。よい製品や環境を生み出すにはよく肥えた土壌、すなわち高い欲望の水準を実現しなくてはならない。デザインとは、そのような欲望の根底に影響をあたえるものである・・・よく考えられたデザインに触れることによって覚醒がおこり、欲望に変化が生まれ、結果として消費のかたちや資源利用のかたち、さらには暮らしのかたちが変わっていく。そして豊饒で生きのいい欲望の土壌には、良質な「実」すなわち製品や環境が結実していくのである」という。
また、本書の題名については、「こうなりたいと意図することがデザインであり、その姿を仮想・構想することがデザインの役割である。潜在する可能性を可視化し、具体的な未来の道筋を照らし出していくこと、あるいは多くの人々と共有できるヴィジョンを明快に描き出すことこそ、デザインの本質なのである」と語る。
著者は、「ものの作り手にも、生み出されたものを喜ぶ受け手にも共有される感受性があってこそ、ものはその文化の中で育まれ成長する。まさに美意識こそものづくりを継続していくための不断の資源である」とした上で、日本の「美意識」の中心は、「繊細」、「丁寧」、「緻密」、「簡潔」を旨とし、簡素さや空白に価値を見出していく感受性にあると言い切る。
そして、今後、日本に求められるのは、西欧中心の既成の価値観において「評価される」ことではなく、日本発の価値観において「機能する」ことであり、日本が如何にして世界で「機能する」べきかについて、移動手段、家、観光、素材などについて具体的に語っている。
著者のいう“デザイン”の意義・価値に大いに共感するとともに、その未来について考えさせてもらった。
(2014年3月了)
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