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精神科医の六麦克彦は、医局から派遣された要鹿乃原少年院に勤務して5年になる。彼がそこで目にしたのは、少年院に堕ちてきた加害者ながら、あらゆる意味で恵まれず、本来ならば保護されてしかるべき「被害者」と言わざるを得ない少年たちの姿だった――。累計100万部を超えたベストセラー新書の世界を著者自ら小説化、物語でしか伝えられない不都合な真実を描きだす。
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Posted by ブクログ
『ケーキの切れない非行少年たち』の続刊、同書を小説形式にして読みやすくしたもの、と読めた。
万引きで少年院に入ったものの、出所後も生活が上手くいかず詐欺に加担してしまった上に人を殺めてしまう「田町雪人」のケース、若年妊娠の上、教師への暴力でやってきた「門倉恭子」のケース、男手一つで自身を育てる父と上手く行かず放火を行いやってきた「荒井路彦」のケース、幼児に性加害を行い、出所後も再犯を重ねてしまった「出水亮一」のケースが収録されている。
全体として終わりが中途半端ではっきりしない……と思われたが、それが実際のケースから例を取っていることの表れでありリアルさであるのかもしれず、その点を考慮すれば批判には当たらないだろう。
彼らの犯行の背後にある、虐待、両親など家族の不仲や離婚、いじめなど様々な事情を知り、犯行以外に選択肢を絶たれた(自ら絶ってしまったともいえるが)少年少女を思うと切なくもなるが、しかし被害者からしてみればそんなことは関係なく加害者は加害者であり、犯罪行為であって許されざることであり、反省や謝罪、補償を求める気持ちも何ら不自然なものではないだろう。一方では当の非行少年たちが事物を上手く認識できず、様々な要因が重なって犯行に及んでしまったこと、反省の気持ちを上手く持てないことも、当人の意識というより器質的な問題であり、加害者の背景と被害者の感情とのバランスを取るのは大層難しいことのように思える。
また、本書に取り上げられたケースでも4例のうち田町雪人と出水亮一の2例が再犯、門倉恭子のケースでは再犯とまでは言えないものの幼児虐待として児童保護施設が介入しており、少年犯罪の加害者が出所後どう過ごすか(過ごせるか)についても大きな問題であろうと思われる。本書において著者はこれらの社会的課題に対する答えを必ずしも提示していないが、田町雪人のケースを見ると出所後仕事が上手く行かなかったことが再犯のきっかけとして描かれており、これは著者からの再犯防止策として社会が行えることのひとつの提起であるように思われる。
全体として解決策ははっきりとしないが、社会全体で考えていくべき問題であると認識させられた。
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