猪木正道の作品一覧
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Posted by ブクログ
猪木正道「ロシア革命史」(角川ソフィア文庫)
ロシア革命とソ連の第二次世界大戦までの歴史を描く名著。終戦直後、ソ連が輝いていた1947年に書かれた本ということを意識して読む必要がある。
1. 序言:日本ではロシア革命やソ連は徹底的に否認されるか、徹底的に賞賛されるかのいずれかだった。著者はなぜ列強中最後進国のロシアで革命が成功したのか。その成功にもかかわらず彼らが取り組んだ世界革命は失敗に終わったのはなぜかを分析する。
2. ロシアの後進性: ロシアは1861年の農奴解放の後も人工の85%が農民であった。1890年の仏露同盟で鉄道の敷設と軍需工業の建設が起こったが、主要原料の消費量(一人当たり)は西欧の1/10以下だった。精神的にもロシアはローマ文明を受け継がず、ルネサンスや宗教改革とも無縁で人文思想も受容されなかった。アジア的暴君ツァーリの専制のもとにあった。農奴はしばしば一揆を起こしたが持続的な改革につながることはなかった。19世紀の西洋文明の受容により支配層は上からの啓蒙により近代化を目指す親西洋派と、ロシアの国粋的伝統を守り資本主義の流入を嫌う層に分裂。後者の中から「農民への盲目的ない愛情とツァーリズムへの憎悪」を基調とする革命運動ナロードニキが生まれた。一身を捨てて全てを聖なるロシア農民のために捧げるという強心的な行動力は強く、アレクサンドル2世など多くの支配層をテロで倒した。一方、急激に導入された工業では、国家や外資が経営し、農奴出身者を強制的に働かせるなど労働条件は劣悪であった。
3. ボリシェヴィズム: 西欧の労働運動を指導していたのはドイツ社会民主党だった。(書きかけ)
4. ツァーリズムの苦悶
5. 十月革命
6. 世界革命
7. 一国社会主義
8. 結言
Posted by ブクログ
著者が本書の執筆に勤しんだのは1946年で、初めて出版されたのは1948年であるという。読み継がれた本書が文庫化されたのは1994年で、手にした本は2020年に二次的に文庫化されたという代物である。
原版が古いので、巻末に「今日の見地に照らして不適切」という表現が使われているというが、巻末にこのように断りが在るのを視るまで、そういう辺りは気にならなかった。最近の文章では視る機会が少ないかもしれない表現が、少し古いモノ故に交っているかもしれないような気がするという程度のことは在ったかもしれないが、気にはならない。寧ろ「集中して短期間で一気に書き上げた“ロシア革命?”という問いへの回答例」という感じで、勢いも感じられる力強い語りに引き込まれ、酷く興味深く読んだというだけである。
本書を通読すれば、19世紀後半から末というような頃の“革命”への遠い歩みが始まったかもしれないというような時期から、日露戦争期、第1次大戦期、10月革命への歩み、内戦期、第1次大戦後の時期、第2次大戦期というような流れが、史的事実と当時の思潮と或る程度知られている人物達の動向というような様々な側面で、通史的に知ることが叶う。研究者・教員として非常に長く活躍された著名な著者の作なのだが、本当に「力の籠った講義を拝聴」という感でドンドン読み進めた。
本書の冒頭部に添えられた著者の言によれば、執筆時点に在って、<ロシア革命>と呼ばれる一連の出来事の推移、知られている関係者の動向や思潮の変遷というような通史が満足の行くように纏まったモノに思い当たらなかった中で執筆したのだということであった。そういう状態に在ったのは、“赤”と共産党政権のソ連を敵視して、関係事項を学ぼうというようなことを過ぎる程に抑制されていた、逆に“赤”と危険視されながら社会主義系統の運動を進めようとする人達が部外者を寄せ付けないような感であったという、両面の事情であるかもしれないとされている。
実はこの冒頭部を読んで、一寸思った。もしかすると「ロシア」に限ったことでもないのかもしれないが…現在に在っても、例えば「<ロシア革命>と呼ばれる一連の出来事の推移、知られている関係者の動向や思潮の変遷というような通史」というような、国外の事象、歴史が「存外に学ばれていない?」というような気がするのだ。殊に「ロシア」に関しては、例えば“北方領土”とか“樺太”という程度の「特定テーマだけを中途半端に取り上げる“編集”」のようなことが罷り通り、共産党政権が“赤”と危険視された流れなのか、ソ連が旗を下ろした頃の混迷というようなイメージが必要以上に増幅されていて、「古い経過が積み上げられて現在に至っている“とある社会”」として客観視されていないかもしれないような気もしている。
「ロシア」は、好むと好まざるとに無関係に、自身が住む国とは異なる経過を有する“近隣国”である。少し位、色々な事の一部を知りたいものだ。そういう中、「20世紀のあの国の流れ“そのもの”?」という側面も否定し悪い<ロシア革命>を本書のような一冊で復習してみるのも好いように思う。
実に長く読み継がれている“古典”という価値も高い本書であるが、極最近に改めて文庫化され、手軽に入手して気楽に読めるようになったというのは、非常に善いと思う。