猪木正道のレビュー一覧
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猪木正道「ロシア革命史」(角川ソフィア文庫)
ロシア革命とソ連の第二次世界大戦までの歴史を描く名著。終戦直後、ソ連が輝いていた1947年に書かれた本ということを意識して読む必要がある。
1. 序言:日本ではロシア革命やソ連は徹底的に否認されるか、徹底的に賞賛されるかのいずれかだった。著者はなぜ列強中最後進国のロシアで革命が成功したのか。その成功にもかかわらず彼らが取り組んだ世界革命は失敗に終わったのはなぜかを分析する。
2. ロシアの後進性: ロシアは1861年の農奴解放の後も人工の85%が農民であった。1890年の仏露同盟で鉄道の敷設と軍需工業の建設が起こったが、主要原料の消費量(一人当たり -
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著者が本書の執筆に勤しんだのは1946年で、初めて出版されたのは1948年であるという。読み継がれた本書が文庫化されたのは1994年で、手にした本は2020年に二次的に文庫化されたという代物である。
原版が古いので、巻末に「今日の見地に照らして不適切」という表現が使われているというが、巻末にこのように断りが在るのを視るまで、そういう辺りは気にならなかった。最近の文章では視る機会が少ないかもしれない表現が、少し古いモノ故に交っているかもしれないような気がするという程度のことは在ったかもしれないが、気にはならない。寧ろ「集中して短期間で一気に書き上げた“ロシア革命?”という問いへの回答例」という感 -
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戦前から戦後、現代に至るまで各分野の知の巨人らが述べた良書である。
多様な著者の文学研究以外の物理学や法学、社会学など様々な研究で得られた知見と知のバトンを次世代に受け継ぐ本である。
興味があれば、中学生からでも読み始めている人は多いだろう。研究者とは「研究しない自由はない」と本著で述べている通り、全ての学問に対する研究に責任があると説く。第一線で活躍していた研究者の言葉を聞き、現代の価値観や様式、世界規模での情勢をその時の生きた時代の研究者へバトンは渡され、人類は発見と修正を繰り返しながら前に進んでいく。世界は広い、本著でも紹介されきれない研究者は山ほどいるだろう。そして、今生きる現代の次世 -
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19世紀後半に入ってもなお
ロシアは絶対君主制…ツァーリズムを堅持しており
ブルジョワの近代的自我を悩ませていた
帝国主義がグローバルスタンダードになりつつあった時代
農奴制を経済基盤におくツァーリズムは
世界の流れからはっきりと遅れていた
農奴への依存がもたらす文化的後進性は
ロシアの近代化を足踏みさせ
資本主義の発達を大きく阻害した
ロシアがツァーリズムの家父長性を必要としたことには
おそらく地政学的な解釈があてはめられるべきなんだろう
しかしラスプーチンの台頭など見るに
当のツァーリ、ニコライ2世自身
ロマノフ体制において現実と向き合うことに疲れていた節はある
慈父ではなく、怖い父を演 -
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本書に掲載された最終講義について一言ずつ。
桑原武夫…仏文学者以上に隲蔵さんの子息、というイメージが強い。垣根を越えた研究という事では共同研究も論語の著作も同じなのかも知れない。
貝塚茂樹…大学者一族の一角、湯川秀樹は弟。東洋史学者の模範的な最終講義だと思う。
清水幾太郎…60年安保前後で言論が大きく変わった、という印象の人だが、コントに興味を持つ面白い講義だった。
遠山啓…存じ上げない方だったが、数学論がほんのちょっと分かった気がした。
芦原義信…ゲシュタルト心理学から都市空間を観るのは面白い。
家永三郎…教科書検定裁判の人、として子供の頃から名前は知っていた。大人になってから読 -
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タイトル通り。
共産主義を、その起源から、1970年代まで一本の流れでつかむことのできる本です。
お恥ずかしながら、40代になるまで共産主義とは何か、その中身に無関心に生きてきました。
読書会で齋藤幸平さんの『人新生の資本論』を読み、初めてマルクスの思想の一端を理解した次第です。
作中語るべき気づきはたくさんありますが、一番の発見は、共産主義と言葉一言でいっても、その中身は千差万別だ、ということです。
マルクスが描く資本の共有と富の分配は
スターリンが目指した、一国主義とは似て非なるものです。
その後を継いだフルシチョフはすぐに非スターリン化を打ち出しました。
では隣のシンパ、中国共産 -
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防衛大学校長も勤めた著者が、戦後日本の空想的平和主義 ー著者は、考え方が独善的で、国際的視野を欠いて一国主義的であることは、戦前・戦中の軍国主義と双生児のように似ている、と指摘するー を克服するためには、軍国主義へ至る歴史を振り返ることが必要と考えて、近代日本の歴史を概説したものである。
外交・軍事等の対外政策や、その時々の為政者や軍人の姿勢、態度に対する著者の見方や評価がかなりストレートに表されており、賛否はあるだろうが、非常に面白い。
特に興味深かったところ
・P93〜96 日露戦争勝利後の満州問題について
1906年5月の「満州問題に関する協議会」において、満州に地歩を築