とても迫力のある作品で、ぐいぐいと引き込まれました。
イメージとしては、山崎豊子の小説のように、不条理な社会・制度に虐げられても、なお歯を食いしばって上を向く主人公の闘いを、手に汗を握りながら追いかけるような読書体験でした。
ただ、山崎作品と違うのは、「北朝鮮」という日本で暮らしている私達の生活と
...続きを読むはかけ離れた舞台であることや、同一民族でありながらも複雑な関係である韓国の脱北者への対応など、主人公の「努力」だけでは太刀打ちできない「壁」があることでしょうか。
作中で描かれている目を覆いたくなるような苛烈な体験談は、脱北者である著者が実際に見聞きしたことをもとに描かれている、「事実」である、と解説にはあります。決して大団円とは言えないエンディングも含めて、面白いと単純に楽しむだけでは終えることのできない作品でした。