「奪われてきた怒りを奪還することだ。これは、人間性を回復することでもある。」(「はじめに」より引用)
突発的に生じることの多く、支配の難しい"怒り"の感情。どうすれば"怒り"を発散し、さらにはプラスの結果に繋げるかについて、著者の経験を交えて書かれている。
本書を読もうと思ったのは"怒り"への
...続きを読む関心からで、具体的には以下の2つ。
①「怒って良いことなんて一つもないのに、何で怒ってしまうんだろう?」という、漠然とした"怒り"への関心。
②父の怒りの沸点が低いためなのか、自分以外の誰かの怒りを目にすることも少なくない。「この"怒り"は相手に上手く伝わっていないな…」と客観的に思うことがよくあった。
"感情"は、優秀とされる"理性"の対極に置かれており、二分法(男=理性的、女=感情的)によって、"感情"は女あるいは子どもの側に押しやられたという。そうして、知らず知らずに言葉を奪われてきた男。そして女も…と著者は説く。
怒りは扱い方によってプラスにもマイナスにもなり得る。怒りの表現の仕方、それから、怒りを向けられたときの対処の仕方が様々な視点から説明される。
個人的に、特に響いたのは以下の二つ。
「他者に対して怒れるためには、正しいこと、良いこと、美しいこと、公平なこと、合理的なことなどについて、価値観や基準が自分の中になければならない。」(34頁)
「『無知』との戦いは、今までのようなデモや集会をするだけでは勝てない。一部のエリートだけが学べて無知から解放されたとしても、弱者は助からない。」(157頁)