最初にタイトルを見た時は全滅エンドを回避した程度でパーティが病むとか有り得るのか?なんて疑ったのだけど、読んでみればこりゃ病むわと納得させられましたよ…
リゼルアルテ達が単純に異性としてウォルカに惚れているだけだったら、ああは成らなかったかもしれない。けれど、彼女らは異性としてより先にウォルカの剣技に惚れていたわけだ
しかも単純に惚れるだけじゃなく、その剣技は歴史に残るものに成るだろうと確信のような尊崇の念を抱いている。だからこそ、崇高な剣技が無力な自分を守る為に失われたという事実に耐えられず、病んでしまうというわけか……
これって辛いよなぁ……。ウォルカとしては自分達が居る世界の元ネタとなる漫画にて命を喪うよりも手酷い仕打ちに遭ったリゼルアルテらの姿を知っている。そういった事態を回避できた時点でウォルカにとって僥倖なのだけど、彼女らはそんな知識ないから自分達が何から助かったかよりもウォルカが何を失ってしまったかばかりを見てしまう
その意識差はウォルカに彼女らの荒む心境を理解させず、尚更に彼女らに病みの暴走を許す土台となってしまうね
また、本作の構成は面白いね
全滅未遂のシーンから始まり、少しだけリゼルアルテらの極端な反応を描いてから、リゼルアルテ達がどのようにウォルカと出会い彼に心酔するようになったかを描いている
急場から始まって過去回想なんてまどろっこしいと感じてしまうかもしれないけれど、過去の出会いにて語られるのはリゼルアルテ達がウォルカの男性としての面に惚れるよりも先に剣士としての面に惚れた点を丁寧に描いている
あの過去編を見れば、剣を振るのが難しくなったウォルカに対する衝撃も察せられるし、その原因に自分の無力が絡んでいるかもしれないという点を加えれば彼女らがその衝撃を受け止めきれないとも理解できる
リゼルアルテは元々重い素養を持っていた為にウォルカへの依存が深まったようだけど、ユリティアとアトリはどちらかというと自分はどこに存在して良いのか、自分をこの世界にどう認めせるかという迷えるアイデンティティをウォルカが肯定した、つまりは彼が拠り所となった形と感じられる
ユリティアとアトリもリゼルアルテとは形が違いながらも依存が見えるが面白いのは魔法使いであるリゼルアルテと違い、ユリティアとアトリの場合はウォルカが死中で見せた絶技に感銘を受けている。あれがどれだけ貴重なものだったかを理解している
既に存在せず、自分の為に失われた剣技に焦がれてしまった彼女らは下手をするとリゼルアルテよりも重症かもしれない
と、ここまでアカン病み具合の3名を描いて表題にも「パーティ」とあるのだから、病みの被害者はこれ以上広がらないだろうと思っていたら、全くの別方向から被害者が現れた…
しかも、アンゼの場合はウォルカの認識としては深い交流も何も無い相手だから何で妙な反応を示すのか判らないというのがもう重症
彼女の過去編も描かれているのだけど、これまたウォルカとの交流は少ないと云うか、あの出会いで病みの種が蒔かれてしまうとなれば、ウォルカの方に何か天賦の才のような素養が有るのではないかと思えてくるよ(笑)
ヒロイン達を病ませてしまうのは歴史に残る筈だった剣技が自分のせいで失われたという衝撃からなのだけど、なら当のウォルカはこの事態を本当に受け止めきれているのかという点が遅れて描かれる展開は真に迫っているね
最初はリゼルアルテ達を助けられた事で満足していた。でも、実際に自分が剣を触れなくなったと成れば絶望に似た衝撃が襲い来る
でも何度振り返ってもあの全滅未遂のシーンにおけるウォルカの動きはこれ以上無いのだから、彼は過去を悔やむ事は出来ない。未来を見遣るしか認められない
この点は彼の前向きな人柄を示す流れとなるのだけど、こうした姿を見て余計にリゼルアルテ達が病むのは本当にどうしようもないな……!
こうなってくるとウォルカがパーティから病み要素を取り除くにはあの欠損があったとしても以前と同じかそれ以上に強くなって満足に戦えるようになるしか無いと思えるのだけど、それはそれでロッシュが案ずるようにリゼルアルテ達の拒絶を生む可能性があって
だとしたらウォルカが戦う羽目になるかもしれない<ならず者>の罠はパーティの病み具合にどう作用するのだろうね?