ピアニストとはこんな職業だったのか、と知っているようで知らない、初めて知ることも多かった。
必要な資料を読み解き、古の作曲家が綴った一音一音の意味を探って行く膨大な作業を思うと考古学者やキュレーターのようでもあるし、音を「作る」姿は職人のようでもあるし、練習に明け暮れる日々はアスリートのようでもある
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十代の頃には傲慢さもあったというが、今ひたすらに謙虚にピアノに寄り添い聴衆と音楽を共有することを大事にしていることで、聴衆ものめり込めるのだろう。
自分の芯を貫くところもあれば、素直に聞く耳を持つところも他人に影響を受けやすい部分もある。愛煙家の師匠とお近づきになりたくてタバコを吸い始めたり、憧れのピアニストの隣席が空けばお話するチャンスを逃さなかったり、人への好奇心も強いようだ。
達観しているようにも見える一方、まだまだお若いし、危うい面もあることだろう。今後の活躍が楽しみ。
文章も丁寧で上品で、クラシック音楽の形式のように、組み立てがうまいというのか、常に頭の中をクリアにできているのだろうなと思う。