著者は、ゼロワングロースの丸井達郎氏(社長、元マルケト)と廣崎依久氏(取締役COO、元マルケト)。
感想。とても良かった。備忘録もたくさん。実践的かつ、腹落ちする説明で、どんどん読み進める。楽しかった。
備忘録。
・組織全体の成果最大化に向けて、個々の活動が最適化されただけではダメ。というか構造的な課題にぶつかる。課題の原因は「ターゲット定義の曖昧さ」にあるケースが多い。システムやKPIの前にここが大事。
・それを整理するためのアプローチ方法。①バリュークリエイション(誰に、なぜ、何を届けるのか)。データ等の根拠に基づいて、顧客を定義して、提供価値を明確にする。②GTMモーション(部門...続きを読む 横断の実行計画)。定義した価値をどう届けるのか。プロセスを設計する。③GTMテックスタック(データとテクノロジーの仕組み)
・GTM(Go To Market)戦略とは、新たなサービスを市場に投入し、競合を排して顧客から選ばれ、継続的な関係を築いていくための、体系的な実行計画。価格設定、販売チャネル、バイヤージャーニー、市場戦略といった要素も内包。
・2021年ごろまでのゼロ金利・金融緩和時代は、資金調達がしやすいこともあり、とにかく成長最優先。どんなコストを払っても成長する考えが受け入れられていた。現在は金利上昇・資本コスト上昇・資金調達環境引き締めがあり環境が変わり、収益性と成長性のバランスが企業評価の判断軸になった。
・新規事業に必要なのは、フェーズごとに適した規模と方法で戦略を描き、実行結果を次の戦略に活かしていく循環。大企業でよくあるのは「片手間での取り組み」や「前者総動員での一発勝負型のローンチ」。正解は「段階的」という中間解。
・シリーズAの調達後に失速する企業の共通点で最も多いのは、売上優先で顧客価値の創出を疎かにしたケース。投資家へのポテンシャル説明を優先し、顧客を後回しにし、解約の波がやってくるパターン。
次に多いのがPMFの誤認。顧客が喜んでいる、契約が増えている、などの表面情報だけでPMF達成と判断し、リソース増に踏み出して失敗するパターン。
もう一つは、資金調達できたことだけをよりどころに、体制や戦略を整備する前にあるリソースを増強し、機能せずに崩壊するパターン。
・上記を提唱したハーバードビジネススクールのロベルジュ氏によれば「スケールはイベとではなくペースだ」と。行きにリソースを増やすのではなく、段階的に増やすんだと。
・GTM戦略で最初に固める問いは「誰の、どのような課題を、なぜ解決するのか」という極めて本質的なもの。この問いへの答えが曖昧だと、どれほど洗練されたプロセスやツールを導入しても、戦略と合わず、機能不全になる。
・特に重要なのは「ICP(ideal customer profile、理想的な顧客像)」。ICPが決まれば、ペインやプライシングが決まり、その結果提供価値やマーケティング方法が決まり、プロセスやテクノロジーが決まり、KPIが決まる。ICPが変わると全てが変わる。
・ICPは「会社」までではなく、「その会社の誰か」までこだわっていきたい。CTOなのか、営業担当者なのか。
・ICPの決め方。まずは精度7割程度で複数の候補を出そう。定性・定量的に候補を評価して3つくらいに絞り込もう。
・解決すべき課題は一つに絞らない方が良い。顧客の中では課題は複数の階層や要素が重なり合っているから。課題について、①課題の内容、②解決できない理由、⑧解決できなかった場合の問題点、の3点で整理しよう。
・ICPと顧客課題を整理したら、バリュープロポジションを決めよう。そのためには、先行してその課題の解決に取り組んでいる競合を分析して、自社のポジションを検討しよう。
・競合との差別化を検討する際に、多くの企業は機能や価格に絞って差別化ポイントを考えがち。成功している企業はサービスの利用体験そのものを差別化の軸に据えている。売るものではなく顧客体験からも差別化ポイントを設計する。
・バリュープロポジションの設計にあたっては、①自社が設計提供できる価値、②競合が提供できない/競合より優れている価値、③顧客が求めていること、の3点で整理するのが一般的。
・以上の、ICP、顧客課題、バリュープロポジション、つまり誰の・どんな課題を・どうやって解決するのかが定まらずに、流行りの営業プロセスとKPIだけ導入すると組織はパフォーマンスを最大化できない。例えば営業はKPI達成だけを意識して質の悪いリードも積み上げ、ソリューション部隊は営業があげてくるリードの質に不満を持つ。ソリューション部隊はKPIが売上高やコストコントロールならば、早く適当に仕事を仕上げて、カスタマーサクセス部隊に引き継ぐ。その結果運用フェーズで問題が勃発する、など。
・逆に、ICP・顧客課題・バリュープロポジションが固まれば、効果的な戦略を検討できる。インバウンド、アウトバウンド、パートナー活用、プロダクトプッシュ、コミュニティ主導型など、どれが適切かを効果的に検討できる。流行りのものをなんでもやると失敗する。例えばイベント型は、もはや競合が多すぎてしんどいとか。
・なお、部門間でSLAを交わす、というのもある意味とてもハッキリする。SLA‥サービスレベルに関する具体的な約束事。
・ベンチャーキャピタルの世界では、ARRが15億円を超えるまでは複数のマーケティングモーションを回すべきではない、という格言がある模様。大企業での新規事業は別だろうが。