作品一覧

  • その昔、N市では

    カシュニッツ短編傑作選

    小説・文芸

    4.0
    1巻2,200円 (税込)
    兄は船旅に出る妹を見送ったが、それは彼女が乗る予定の船ではなかった。ひと月後、妹から手紙が届く。彼女は、その船では日付も時刻も現在位置も確認できないと書いていた。手紙を読み進めるにつれ、内容はさらに常軌を逸していき……(「船の話」)。ある日突然、部屋の中に謎の大きな鳥が現れる。“わたし”は、なぜか外に出ていかない鳥の正体を突き止めようとするが……(「ロック鳥」)。旅行から帰ったら、自分が死んだとアパートの住人に触れまわった女がいたという奇妙な話を聞かされて……(「六月半ばの真昼どき」)。大都会N市では、死体から蘇生させられた“灰色の者”たちが、清掃や介護などの労働を人間の代わりに行っていた。彼らに生前の記憶は一切なく、恐怖も希望も憎悪も持ち合わせていない。しかしある時、“灰色の者”たちにすさまじい変化が訪れ……(「その昔、N市では」)。日常に忍びこむ奇妙な幻想。背筋を震わせる人間心理の闇。懸命に生きる人々の切なさ。戦後ドイツを代表する女性作家の粋を集めた、全15作の日本オリジナル傑作選!/【目次】白熊/ジェニファーの夢/精霊トゥンシュ/船の話/ロック鳥/幽霊/六月半ばの真昼どき/ルピナス/長い影/長距離電話/その昔、N市では/四月/見知らぬ土地/いいですよ、わたしの天使/人間という謎/訳者あとがき
  • ある晴れたXデイに

    カシュニッツ短編傑作選

    小説・文芸

    3.7
    1巻2,310円 (税込)
    非行の果てに死んだはずの養子に怯え、戸締まりを厳重にする妻。夫との会話から見えてくる真実とは……(「雪解け」)。知らぬ間に手脚に痣や傷が増えていく会社員の女性。親指の付け根を切ってしまっても気づかず、すねを拳骨で打ってもまったく痛みを感じない。自己観察を続ける彼女の生活は、どんどん異様になっていき……(「火中の足」)。広告塔に大きな写真が貼られ、新聞でも連日報道された、行方不明の少年を探すことに取り憑かれた女性は、その少年を見つけたのだが……(「幸せでいっぱい」)。町が消え、家も、学校も、図書館も、なにもかもがなくなる。みんないなくなり、あとは地を這う人間の残骸がいるだけ。――世界が滅亡するXデイが気がかりで、ある母親はその日に起こるはずのことについて詳細な手記を執筆する……(「ある晴れたXデイに」)。日常に忍びこむ幻想。悲劇と幸福が結びついた人生観。歪で奇妙な家族たち。戦後ドイツを代表する女性作家による、『その昔、N市では』に続く全15作の傑作短編集!/【目次】雪解け/ポップとミンゲル/太った子/火中の足/財産目録/幸せでいっぱい/作家/脱走兵/いつかあるとき/地滑り/トロワ・サパンへの執着/チューリップ男/ある晴れたXデイに/結婚式の客/旅立ち/訳者あとがき

ユーザーレビュー

  • ある晴れたXデイに

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ドイツの女性作家、カシュニッツの第二短編集。

    一作目は幻想、不条理がメインの短編が多かったが、今作は主人公たちの異常なほど不安になる気持ち、執着する気持ちが軸となる作品が目立つ。
    死んだ養子が戻ってくるかと不安に怯える「雪解け」、行方不明の男の子を見つけることに執心する「幸せでいっぱい」、滅亡する世界を減少し異常なほど怯える「ある晴れたXデイに」。

    わかりやすいホラーは少ない作家。でも、どの作品も時折、読んでいて息苦しくなる。一気に読むというより、少しずつ、堪能する短編集だと思う。良作。

    0
    2024年12月30日
  • その昔、N市では

    Posted by ブクログ

    書店で何となくパケ買いした1冊。
    自分好みで大満足だった。

    ドイツ人女性作家のカシュニッツが手がけた本書は15作の不思議で少し背筋の凍る短編からなる。
    どの話も何の説明もなく突然始まり、読者は最初置いてけぼりになる。しかし1,2ページ読み進めると状況が掴めてくる、といった自由奔放な構成にも惹かれた。

    個人的に「船の話」「ロック鳥」「幽霊」「長い影」辺りが特に印象に残っている。10ページにも満たないであろう短編を読んでここまで不思議で不安な気持ちを植え付けられることは中々ない。

    これを機に彼女の他の作品も読んでみたいと思った。

    0
    2024年10月05日
  • その昔、N市では

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    戦後ドイツの作家、マリー・ルイーゼ・カシュニッツの日本オリジナル短編集。

    一編一編が高級チョコのように味わえる作品集。幻想的でありつつも、どこか人間の普遍的な不安感が漂う。その暗い感じがクセになる作家。

    以下、作品毎の感想。

    ◯白熊 ★おすすめ
    帰ってきたのに何故か電気を付けたがらない夫と妻の会話。出会った動物園で、妻は本当は誰を待っていたのか。会話しているのは本当に夫なのか。不安がピークになるころ意外な展開に。

    ◯ジェニファーの夢
    夢を見たという娘のジェニファー。日を追うごとに夢が日常を侵食しているようで、得体の知れない娘への不気味さが描かれた作品。

    ◯精霊トゥンシュ ★おすすめ
    大学から派遣された番人と現地民たち。相容れないためか、現地民たちは番人に作ってはいけない人形を作らせる。やがて番人は無惨な死体となって発見される。ミステリタッチの作品。

    ◯船の話 ★おすすめ
    予定した船に乗れなかった妹からの頼りが来る。妹が乗った船はなんだったのか。じわじわと恐ろしい作品。

    ◯ロック鳥
    自分にしか見えない鳥。鳥とはなんだったのか。

    ◯幽霊
    ゴシックなゴーストストーリー。非常にテンプレートな話。

    ◯ 六月半ばの真昼時 ★おすすめ
    カシュニッツ夫人が旅先から帰ると、アパート中に夫人が死んだと触れ回っていた女がいたことを知る。カシュニッツ夫人には娘がいたことを知るとすぐに立ち去ったようだが。。。
    これもよくよく考えると非常に不穏な作品。

    ◯ルピナス
    姉を置いて列車から脱出した妹。姉の夫と暮らすが思い描いた風にはならず。。。可哀想な小話。

    ◯長い影
    バカンスに来た思春期の女の子のひねくれた気持ちを描いた作品。家族と一緒にいるのが嫌、自分だけの世界を思い描くが、ふとしたことから不安に囚われる。

    ◯長距離電話 ★おすすめ
    電話での会話だけで構成される作品。身分違いの恋人たちを別れさせようと家族たちが頑張るが。。。意外な結末。

    ◯その昔、N市では
    表題作。タイトルからは意外だったが、ゾンビのような、フランケンシュタインのような、死者をリサイクルして使用人とした近未来を舞台とした作品。結構絶望的な話。

    ◯四月 ★おすすめ
    決して美しいとは言えない女性の机の上に置かれた花束。同僚たちは、支配人からあなたへの贈り物だと言うが。。。
    意外な着地点で、幻想味が強い作品。

    ◯見知らぬ土地
    知らないと言うことがいかに人を不安にさせるか、いかに少しの衝撃で壊れてしまうかを描いた作品。

    ◯いいですよ、わたしの天使 ★おすすめ
    部屋を借りた娘に、ゆっくりじわじわと家や人生を乗っ取られる話。それでも娘のことを許せるお婆さんが切ない。

    ◯人間という謎
    バスで隣り合った女性から、女性自身の妄想を聞かされる話。霧に囲まれるようなぼんやりとした読み心地の作品。

    0
    2024年04月21日
  • その昔、N市では

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    これはいい。一話一話は簡潔だけれど、人物描写・ストーリー展開・オチが巧みで、いい感じに後味が悪くてサバサバしている。日常的幻想プチイヤミスって感じか。

    ■白熊 夫が夜中に電気をつけないワケ
    ■ジェニファーの夢 娘が見る奇妙な夢と奇行
    ■船の話 間違った船に乗ってしまった娘の末路
    ■ロック鳥 自宅にデカい鳥がいたら
    ■その昔、N市では 灰色人間とディストピア

    0
    2023年10月27日
  • その昔、N市では

    Posted by ブクログ

    『「それから?」 夫はきつい口調でたずねた。「白熊がなにをするか知ってるくせに。首を左右に振るのよ。いつまでも右に左に」「きみみたいにな」「わたしみたいに?」女はおどろいてそうたずね、闇の中でいまいわれたとおり首を左右に振った。「きみはだれかを待っていた」夫がいった』―『白熊』

    初めて読む作家、マリー・ルイーゼ・カシュニッツの短篇集。最初の幾つかの短篇を読むかぎり、これまで読んだ欧州の怪奇譚の雰囲気と似ている語り口で、初めてのような気がしない。例えば最近読んだものだとアラン・ノエル・ラティマ・マンビーの「アラバスターの手」とか、シルヴィア・プラスの「メアリ・ヴェントゥーラと第九王国」などが思い浮かぶ。更に言うなら、もう少し前に読んだゾラン・ジヴコヴィッチの「12人の蒐集家/ティーショップ」なんかにも似ている印象を受ける。要は、あちらの世界とこちらの世界が何やら薄暗いところを通して繋がってしまう話とか、人間がいつの間にか獣のような邪悪な存在になってしまって悪さをするとか悪魔が出て来るような話。それが西欧的な世界観に由来するものかどうかは不明だけれども、似たような話を極端に単純化して要約してみると、本邦の番町皿屋敷のように個人的な恨みや怨恨を持って張本人の前に現れるというような話は案外少なくて、何だか人智を越えた存在にふっと誘われ(あるいは、さらわれ)そうになる展開というのに彼の地の人は関心があるのかなとも思ったり。そう書いてみて気付いたけれど、小泉八雲の「怪談」なんかもどちらかといえばそういう話が多いような気がするのは、やはり西欧の人の関心の為せる業なのかも知れない、などと思考が脱線する。

    『その昔、大都会であるN市の黄金時代が終わった。メイドやウェイターや売り子や車掌や道路清掃人や郵便配達人や墓掘人の黄金時代が。雇い主に奉仕すること、スープを給仕すること、商品をだしたり、包装したりすること、子どもの体を洗うこと、老人に付き添うこと、瀕死の患者の介護をすること。たとえ高給がもらえても、だれひとりそういう仕事につこうとしなくなったのだ。オフィスでは数十万人のビジネスマンがデスクワークをしているというのに、路上はきたないまま。食堂は店じまいし、郵便は配達されなくなり、車掌、切符売りを必要とする公共交通機関は運行を停止した。新聞各紙がこの憂慮すべき状況を打破するべくさまざまな提案をしたが、どれも不発に終わった』―『その昔、N市では』

    ところが後半に入ると、ぐっと現代的な要素が色濃くにじみ出た作品が多くなる。その構成については翻訳家と出版社の仕掛けという側面があるにせよ、半世紀以上前の作品に現在の社会的な問題を見い出してしまうというのは、作品が根源的な人の業を描いているからに違いない。例えば表題作でもある「その昔、N市では」を読みながら、感染症に喘ぐ都市が抱えている問題、例えばいわゆる「エッセンシャルワーカー」の問題や、貧富の格差の問題などを想起しないでいることは難しい。そこまで大きな社会問題のようなテーマを扱っている作品はこの短篇集では他に「ルピナス」位だけれど、人間の性悪(これを、しょうわる、と読むか、せいあく、と読むかで意味も少し変わるような気がする)な部分(あるいはそれを人間性というのかも知れないけれど)が強調されて描かれたディストピア的世界観がこの作家の根底にあるようにも思える。それはひょっとするとナチス政権下の第二次大戦を経験した作家ならではの思いなのか、と想像しながら読み終える。

    1
    2023年01月11日

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