前半少しだるかったが、後半、そこで得た時代背景や状況をベースに、喜八の心情や作品の解釈へと迫っていく筆致に感動を覚える。
自分が何故、喜八に惹かれるのか、自分が何を大切にしたいと考えているのかを明らかにしてくれる。
様々、この本を読んで、喜八の姿勢を身に着けたいこと、考えること・探究したいことが出て
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【喜八から学びたいこと】
・「喜劇っていうのは、だから、本当に痛烈だなって思う。見ているときは、可笑しくて仕方ないんだけれど、おかしゅうて、やがて悲しい・・・、とそういうものを、どうしてもやりたい」
・人の心の中にあるものを、手艇的に大事にしてくださる方でした。それは相手が二十歳そこそこの青二才であっても、人のこころを絶対に否定しようとはならなかった。
・監督さんは、その場にいる立場の一番弱い人のことをずっと気にかけていらっしゃいます。常に一番弱い人の味方をされましたので。
・五木寛之の喜八論(p340):岡本さん、温かいところがあるからね。人間に対して絶望的な、皮肉な眼をもてない。
・妻みね子さんの評:彼の喜劇は、人を笑わせようとしているのではなく、一生懸命やっていることがおかしいってこと。(中略)彼は根本で、人間の苦しい時の素直な姿や、人を温かく見ていたから。人間の一生懸命やっている姿は立派なものではない。戦争がそうでしょ。
そのほかにも、同じ戦争を経験している人達の間にも、ジェネレーションギャップが、より深刻なギャップがあったことを知れたことも、大きな収穫であった。今の若手と我々のギャップなどという気持ちと、世代間のギャップがあることは当たり前という観点を得る。
筆者が、戦中派の祖父の思い出や思慕を元に、戦中派への関心を持ち、そして、祖父の語らなかった心情を喜八作品を通じて感じていると述べている。私も祖父がシベリア抑留を経験した戦中派の人だったので、まさに同じ慕情と喜八作品への愛着、喜八の眼差しに惹かれているのかも知れない。そして、この著者への大きな共感を覚える。
良質なノンフィクション。
社会学でのフィールドワークを元にした、エスノグラフィとルポタージュとの関係などを学んだ上で、こうしたノンフィクションのアプローチも学びたい。