サーシャ・フィリペンコの作品一覧

「サーシャ・フィリペンコ」の「赤い十字」ほか、ユーザーレビューをお届けします!

作品一覧

  • 赤い十字
    4.2
    1巻2,178円 (税込)
    青年が引っ越し先のアパートで出会った、90歳の老女。アルツハイマー病を患う彼女は隣人に、自らの戦争の記憶を唐突に語り始めた。モスクワの公的機関で書類翻訳をしていたこと、捕虜リストに夫の名前を見つけたこと、ソ連が赤十字社からの捕虜交換の呼びかけを無視していたこと――。ベラルーシ気鋭の小説家が描く、忘れ去られる過去への抵抗、そして未来への決意。

ユーザーレビュー

  • 赤い十字

    Posted by ブクログ

    奈倉さんの訳という事で触れた当作。思った以上の素晴らしい内容、展開、心が打たれた。
    読みながらも胸のビブラードがふるえ、サーシャの心中、タチヤーナの本懐がすれ違う様で、クロスして行くプロセスに、笑えない現実の重さを感じさせられた。

    彼女が経験してきた人生航路の壮絶さは語りの軽やかさと反比例して居るだけに、圧倒されんばかりの熱が地中で迸っている・・静かなるマグマの様に。

    ただでさえ「鉄のカーテン」が惹かれたソ連、外務省、翻訳という業務・・・そして捕虜名簿。
    フィリペンコという冷たく熱い才能の作家を知れたことは幸い~「理不尽ゲーム」を是非読みたいと思った。

    この数年、ロシアは遠くて未知の国と

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    2022年08月27日
  • 赤い十字

    Posted by ブクログ

    認知症のタチヤーナばあさんが、向かいの部屋に引っ越してきた青年サーシャに自身のこれまでのことを語る。戦時下のソ連で夫は捕虜になって帰らず、当局の粛清に怯えて暮らすうち、突然逮捕されて幼い娘と引き離され収容所に送られる。
    当時のソ連が自国民を粛清し、外から差し伸べられる手を無視し続けたことなどがタチヤーナの語りと電文で伝えられる。淡々としているようだが彼女の国家に対する疑問や怒り、深い悲しみが静かに胸に迫ってきた。
    タチヤーナの認知症は、こうした体験が語られることなく風化していくことの象徴なのか?そしてまた似たようなことが繰り返される。

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    2022年07月05日
  • 赤い十字

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    アルツハイマーを患っている91歳のタチヤーナの第二次世界大戦前後の話を、妻を失って越してきた30歳の青年サーシャが聞く話。
    後書きで訳者が述べる通り、象徴の使い方や歌謡・赤十字の交信資料の引用が巧みで、ゆっくり読み解いたらもっといろんなものが見えると思う。
    赤い十字は、タチヤーナがソ連外務省で翻訳してタイプしていた赤十字とのやりとりであり、タチヤーナの娘アーシャの埋葬地にタチヤーナが立てた錆びた鉄パイプの十字架であり、タチヤーナの出身地ロンドン・友人パーシカの出身地ジェノヴァの印でもあり、タチヤーナが埋葬され「安らかに眠らせてください」と刻まれた御影石の墓石でもある。人間ではどうしようもない苦

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    2022年04月19日
  • 赤い十字

    Posted by ブクログ

    一気に読んだ。とても面白かった。恐らく膨大なアーカイブから着想を得た、粛清のソ連を描いた作品。運命等という軽い言葉では表せない時代。

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    2022年01月25日
  • 赤い十字

    Posted by ブクログ

    ばあちゃん、安らかに眠れ
    国家に、全体主義に、独裁者と権力側に虐げられた人々よ、安らかに眠れ

    戦争において敵国は脅威
    ぶん殴ってくる
    自国も味方ではない
    平気で踏みつけてくる

    戦争、紛争は各地で続いている
    新たに起こるかもしれない
    酷かった過去のお話ですまないことを皆知っている
    繰り返してしまう歴史に恐れ慄かなければ

    0
    2025年09月27日

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