教えないスキル
ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術
小学館新書 391
著:佐伯 夕利子
良書、おもしろかった。
プロ選手の引退後の過酷な現実から、本書は始まります。
NBAの選手の60%が、現役を退いて5年以内に、自己破産するそうです。
高級車から軽自動車に乗り換えられる感覚が備わっていないと、プロとしてキャリアを積んでいくことができない。だから、プロ選手を育てるのではない。人を育てるのだと語っています。
指導者は、選手の学びを創出するファシリテーターに過ぎない。
著者は、持続可能な人材育成術といっています。
教えないスキルとは、脳科学、行動科学、心理学、教育学のエビデンスをもとに、10人の心理学者のサポートを得て作り上げたものであると語っています。
気になったのは、以下です。
■reflection
・指導方法をカメラやビデオをとって俯瞰することが重要。
・選手の動きをただ声に出している、リアクション・コーチングを行っていないか
・内省すること これって意味があるのかな、これって、選手のためになっているか、コーチ同士で顔を見合わせてノーとため息をつく
・練習や試合での態度、声掛けをチェックして仕分けをする
①選手を肯定したり鼓舞するようなポジティブメッセージがどれだけあるか
②ダメ出しをを含めたネガティブメッセージはどうか
③同じ選手に何回声をかけたか
・意識や意図が芽生えることがいかに重要かを個人的に学んだ
・(選手が)自分たちで気づいたものを学びにする
・(コーチが)自分たちは答えを持っている人間ではないし、問題を解決する仕事でもない
・私たちが、自分で気が付いたように、選手にも気づいてもらう。
自分たちと同じ道のりをたどれるよう、選手たちに施せばいい
・アンラーンから始めよう。アンラーンは、学び壊しというのがしっくりしているかもしれません。
①ラーン
②アンラーン
③リラーン
この繰り返しこそ、指導者に不可欠です。
・流れる川に小舟がながれてきました。あなたは、小舟にのりますか、それとも、岸からみてますか?
⇒小舟に乗る=感情に執着する⇒本質を見失う
⇒岸でみている=自分の感情と距離をとる⇒本質なものの優先順位を間違わなくなる
⇒だから、岸でみてましょう、一緒に流れるのではなく、岸から眺める
・心から子供たちをリスペクトをもって接する。そうでなければ、私たちもあなたに対し、リスペクトをもって接することができません
・絶対やってはいけないこと、ここだけの話し、ひそひそ話、組織として成長ができなくなる
・問題(苦情)を持ち込むときは、一緒に、解決策をもっていく。これがルール
■question
・プレーするのは選手、自分に力が及ばないことに時間を費やすのは無駄
・指導者が、勝敗に意識を奪われていたら、選手の学びや成長に気を配れるはずはない
・自分ができることをやる、自分が行動すれば変化が起きる
・何を言っても、何をやっても、受け入れてもらえる、安心安全な環境でこそ、選手たちは成長できる
・オープンクエスチョンをなるべく心がける。言えないときは、二択、三択のクイズで誘導的な問いかけをする
■words
・サンドイッチ話法
①良いところを伝える
②聞きたくもないかもしれない改善点などを伝える
③それに対する期待を伝える
・人は知っていることしか、見ない
・見るべきものが見える、選手を育てる
■knowing
・あの子はやる気がないと思う ⇒主語が指導している自分自身 ⇒主語を選手に変えよう
・個人目標は2カ月スパンで見直す⇒個人目標の振り返りや気づき、現在地の確認のため
・3つの学び
①主観だけで考える癖をなくす
②自分の考えを一方的に伝えない
③答えに正解はない
■equality
・コーチから一方的に教え込むのではなく、選手同士が学び合う環境を作る
・指導者の役割は、失敗しないように導くではなく、失敗を恐れずに出せる、失敗を糧にできること
・コーチのミーティング まとまりがつかない⇒振り出しにもどる、選手の学びの機会が増えたかどうか?
・上司が命じてやるではなく、社員が自ら取り組みたくなる環境を整備する、が正解
■centred
・ガミガミと怒られながら学ぶなど、意欲が生まれるわけがありません
・手取り足取り教える ではなく 心地よく学べる環境を用意し、学習効果を高める
・教え方がうまい ではなく、 子どもたちが学べる環境を作ることが育成術
・生命線
①考える癖をつけることに重きをおく、考える余白を用意してあげる
②一方的なコーチングをせず、問いをつくる
③子供たちが、学びたいと自然に意欲がわくような環境を用意する
■cognitive
・認知力を身につける 時間、空間、スピード、変化、シチュエーションなどの不確定要素を認知する
・がんばる ⇒ 創造する へ
・認知力は、禁止事項はすくなく、たくさんの選択肢から選べるような環境で養うことができる
目次
教えないスキル 目次
序章 持続可能な人材育成を目指して
第1章 自分の言動に意識をもつ reflection
第2章 「問い」を投げる question
第3章 パフォーマンスを生む言葉を選ぶ words
第4章 伸ばしたい相手を知る knowing
第5章 丸テーブルに変える equality
第6章 「教えないスキル」を磨く centred
第7章 認知力を育てる cognitive
終章 好きだからこそ本質を探究したい
ISBN:9784098253913
出版社:小学館
判型:新書
ページ数:192ページ
定価:800円(本体)
発行年月日:2021年02月
発売日:2021年02月06日第1刷
発売日:2021年05月29日第3刷