周浩暉『7人殺される』ハーパーBOOKS。
何度も何度も刊行予定が先延ばしになり、ようやく刊行。半年以上は延びたのではないだろうか。
ハヤカワから刊行された『死亡通知書 暗黒者』の前日譚にあたる前作の『邪悪催眠師』でも主人公を務めた凄腕刑事の羅飛を主人公にした中国の警察ミステリー小説である。
読み進めば『邪悪催眠師』の続編であることが少しずつ見えて来る。となると俄然、『死亡通知書 暗黒者』も読みたくなるのだが、勿体ぶるだけでなかなか文庫化しないドケチなハヤカワでは期待は出来ないだろう。
タイトル通りとするならば、作中で『7人殺される』のだろう。異常な状況で遺体となって発見される被害者たちの共通点とは一体何か。
連続殺人事件を描いた華文警察ミステリー小説とは時代は変わったものだ。劉慈欣の華文SF小説『三体』三部作にも驚かされたが、周浩暉の羅飛刑事シリーズも全く引けを取らない程の驚きである。何とも見事なプロット。冒頭から読者をみるみる間に物語の世界へと引き摺り込まれ、予想はあっさり覆されるという所に面白さがある。
見事に周浩暉の術中にハマり、二転三転四転と目まぐるしくストーリーは展開し、全く予想もしなかった結末に愕然とした。まさか、あの映画が……最終番は少々やり過ぎのようにも思ったが、それはそれで良いのかも知れない。
中国の龍州市にある高層マンションの一室で21歳の美しいモデル女性、趙麗麗が奇妙な遺体となって発見される。彼女は二酸化硫黄が溶けた亜硫酸の風呂に浸かり、肌を焼きながら恍惚の表情を浮かべていたのだ。刑事の羅飛が劉東平と共に現場を調べると彼女が亡くなる前に宅配便の配達員から彼女の元恋人から荷物を受け取っていたことが判明する。その荷物こそ、二酸化硫黄を発生させた恐るべき装置であった。
さらに彼女の元恋人の24歳の男性、姚舒澣が、自宅で全裸でラブドールを抱きながら局部から大量出血した極めて異常な状況で遺体となって発見される。やはり、彼も亡くなる前に宅配便の配達員から荷物を受け取っていたのだ。
被害者に宛てた荷物の送り主が次の被害者になることに気付いた羅飛と劉は荷物の送り主であるネットショップの経営者、李小剛の元を訪ねるが、既に所在不明となっており、翌日、異常なる状況の中、遺体となって発見される。
羅飛と劉が3人の被害者の意外な共通点から犯人の身元を調べると何と催眠師の蕭席楓に辿り着く。蕭席楓の話から見えて来た犯人像。しかし、その正体はなかなか掴めない。
と思っていると、犯人は意外にあっさりと捕まるのだが……
本作にも描写があるが、中国出張に行った時、街中を走るバイクが殆ど全て電動バイクだったことに驚いた。しかも、殆どの電動バイクにはパラソルみたいな雨除けが付いていた。中国の街中は車であふれ返り、常に渋滞しているので、車の隙間を縫ったり、歩道を走れる電動バイクの方が有利なのだろう。
定価1,700円
★★★★★