★5 密室、予告状、見立て殺人。しかしどれも微妙すぎる現場で… #大雑把かつあやふやな怪盗の予告状
人を小馬鹿にしたような、一風変わった条件が提示される本格ミステリー短編集。
しかしポップな装画や冗談のようなタイトルだと思って舐めていると、丁寧で重厚な論理にびっくりさせられる作品です。
まずテー
...続きを読むマひとつひとつが魅力的すぎる。
密室、予告状、見立て殺人… しかし内容を読んでみると、どれも中途半端というか、未完成なんです。なんでなの…?
もちろんそこには理由があるんですが、雑っぽいところをフックに楽しく読ませてくれる。推理はすべての可能性をあげた上で、ありえない事象は排除していくという、めっちゃ丁寧でロジカルな解法。
全てが明らかになったときは、なるほど、そういうことかと膝を打つこと請け合いです。
そして倉知先生お得意の人を食ったようなキャラクターも最高。
なにより面白いのは、主人公も名探偵も、どこか中途半端なところ。成長するみたいな前向きな姿勢を全く持ち合わせておらず、いい意味でまるで人情味や熱さがない。でも謎解きに関してだけは、ど真ん中ストレートなんですよ。
往年の名作ミステリーを思い出させてくれる、素晴らしい本格ミステリーでした。
■古典的にして中途半端な密室
密室トリックが施されている現場であり、かつ微妙に密室ではない殺人事件。
普通は完全犯罪でも、ひとつくらい穴があってそこから推理を展開していくんですが、見えているもの全てが穴だらけ。なんじゃこれっ
謎解きは論理性はもちろん、想像力も必要で、なかなかどうして痺れました。
■大雑把かつあやふやな怪盗の予告状
怪盗ルパンよろしく宝石略奪の予告状が届くが、日時指定がやたら曖昧な内容で…
ストーリーが良くできてるな~
そして予告状自体が引きが強すぎ、理由がさっぱりわからん。
読んでいると真相はこういうことなんじゃないかな…と何となく予想はできるけど、おそらくは気が付かない。ひっかけが上手い、とだけ書いておきましょう。
■手間暇かかった判りやすい見立て殺人
足が切り落とされるという伝説になぞられた、やたら白々しい見立て殺人。
なぜこういう状態になっているか?
この事件の全体像、骨格が見えてきたとき、おもわずのけ反ってしまいました…そういうことか。まさに本格ミステリーの面白さがつまった作品です。
例によって素晴らしい緻密な推理ですが、特に唸ったのはスーツケースのくだり。単身赴任先と自宅を行き来していた私は、大変よく理解できる。
本格ミステリーを読んでると、頭痛くなってくるんだよね~という方に、是非おすすめしたい。単にロジックが詰め込まれているだけではない魅力がわかる作品です。