残ってるものの赤裸々さと、残っていないもの、わからないことの重たさが、そのまま丁寧にまとめられていて、ここはわからないんだな、ということの方にむしろ締め付けられるような気持ちになりました。
家族には、記憶装置としての機能があると聞いたことがあります。お兄ちゃんは麻疹にかかったことあるよとか、おばあち
...続きを読むゃんはコーヒーが好きなんだよとか、そういう、他の人にはどうでもいい記憶を、家族は価値判断せずに持っていられる、という意味だったと思います。
シンプルな幸せとは対極にあるように見える家族が、これほどの記憶を残し整理してきた事実が、意外でもあり、救いのようにも感じました。
ひとくくりにした属性ではなく、ひとりに注目する意味も、周辺化された人や物事に注目することの意味も、改めて感じました。おかしいなという感覚を、押さえ込まずにいようと思う本でした。