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日本はすでに「移民国家」だ。この30年間で在日外国人の数は94万人から263万人へと約3倍に増加し、永住権を持つ外国人も100万人を突破した。2019年春からは外国人労働者の受け入れがさらに拡大されることも決まっている。私たちは「平成」の時代に起きたこの地殻変動を正しく認識できているだろうか? いま必要なのは、この「遅れてきた移民国家」の簡単な見取り図だ。「日本」はどこから来てどこに向かうのか?
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Posted by ブクログ
技能実習生の低賃金・劣悪な労働環境の問題については従来からニュース等でみていたが、単に受け入れ側の問題ではなく、構造的にこのような結果を生まれてしまう状態にあるということが、この本を読むとよくわかる。 かなりデータに基づいて事実が整理されており、批判目的ではなく事実を目の当たりにして読者自身が考え...続きを読む始めることを目的とした本だと思った。
日本は年々外国人受け入れ数が増えているが、その環境は整っているとは言いがたい。特に労働目的の移民、迫害から逃れた難民への対応は改善しなければならないと著者は述べている。難民認定率や劣悪な労働環境、日本社会への適応など課題はたくさん。
発売当初から読みたいと思いつついつの間にか時間が経ってしまった本。やっと読めた。そして読んで良かった。 「移民」この言葉にはさまざまな定義があり得るがどんな定義をとるにしてもすでに日本には「移民」は多数存在する。 そのこと自体は知っていた。それこそ色々な意味合いで。私の育った地元は工業地帯がある...続きを読むためかそこで日系のブラジル・ペルー人が多く、小学校の同級生の5〜10%はにそうした日系移民の子どもたちだった。そして、都市部で居住する多くの人と同じように私も日々多くの外国人留学生バイトの方が支える店のサービスを受けて生活してもいる。 そして直接触れ合うことはないけれど「技能実習生」という制度が過酷なものになり得ることもニュースレベルでは知っていた。 とはいえ、そうしていくつも知っていても全体として「日本における移民とは?」と聞かれてもなんとも答えようがないというか、何をどう捉えて議論すれば良いのか分からなかった。 それが本書を読んでイシュー全体の構造を大まかに掴むことができた。 ・移民や外国にルーツを持つ人たちには様々なレベルがあり、労働や生活面で様々な制約の違いもあること ・移民政策は採らないという自民党の保守政党としての建前と経済界からの労働力確保ニーズの狭間で本音と建前が分かれ、不合理や不条理が罷り通っていること 今後どうしていくか、という議論をする際にすでにある現状に向き合った上で考えていくべき問題であることを知れたことがとても良かった。
タイトルは分かりにくい(それが本書の唯一の欠点)。サブタイトルこそが本書の内容を的確に表している。『「移民国家」の建前と現実』。 日本は「移民国家ではない」と言いつつ(建前)、大量の移民を受け入れている(現実)。それを本書は「フロントドアを閉ざしつつ、サイドドアとバックドアから移民を入国させている」...続きを読むと表現する。上手い例えだと思う。 そして、いないことになっている外国人労働者がいることによって生じる問題やリスクは(いない人に対する支援はできないから)、すべて外国人労働者に押し付けられている、という。 知っているつもりになっていたけど全然知ってなどいなかった。望月さんの文章はニッポン複雑紀行などで読んでいるけれど、その聡明さは本書でも健在だった。政府の政策や送り出し側の国や日本そして世界の経済状況といったマクロと、AさんBさんという一人一人のマクロの両方。数字(統計情報)と文章(エピソード)の両方がしっかりと説得力と彩りを携えていて読みやすく心にしみる。 以下、いくつか印象的な箇所の引用。 トルコ出身の政治学者であるセイラ・ベンハビブは外国人への政治的な成員資格の付与について「永遠によそ者であることは、自由民主主義的な人間共同体の理解と両立しない」と書いた。この言葉は、成員資格の付与だけでなく、むしろそれ以上に社会統合のテーマにこそ関わる。(p.30) 人によって賛否はあるだろうが、外国人労働者を受け入れる業種やスキルの水準について何らかの形で限定するというスタンス自体は存在しうる(中略)しかし、ここに根本的な欺瞞が存在することは明らかだ。表向きは「いわゆる単純労働者」の受け入れに伴う様々な懸念を表明しておきながら、裏側では「いわゆる単純労働者」をサイドドアから積極的に受け入れてきたのだから。自分自身で並べ立てたもっともらしい懸念は一体どこに行ってしまったのだろうか。(p.92) 実習生や留学生が陥る構造的な問題は、これまで真正面から外国人労働者を受け入れてこなかった日本のサイドドア政策自体から帰結した矛盾の現れだと言える。忘れてならないのは、その矛盾から生じるリスクを一手に引き受けてきたのが、彼らを受け入れる日本社会の側ではなく、外国人労働者たちの側であるということだ。実習先から「失踪」した実習生や、上限を超えて働いてしまった留学生の報道に触れるとき、このことを覚えていてほしいと思う。(p.140)
前々から尊敬する望月さんの本をようやく一読。 多様性で溢れた世の中にしたい、とほざいてた自分を殴りたいほどに、自分自身の勉強不足さを目の当たりにし、我が国における外国人の方の現実を構造的に知ることが出来た。 特に第5章の強制送還者が収容される収容所の話などは、アウシュヴィッツの繰り返しではないか...続きを読むと疑うほどだった。 また国籍を持たない者に対する対応には政府や裁判所はあまり関与せず、法務省や入管という行政機関が大きな裁量を持ち意思決定を行っている所にも国家の役割や国民と市民の関係性などを考え直す必要があると感じた。
日本に住む外国人の方の急増や2018年のいわゆる「特定技能」という在留資格の創設などもあり、興味があったのでこの本を手に取りました。 在留資格のことなど、これまであまり理解できていなかったのですが、簡潔に整理されていてとても分かりやすかったです。とくにそれぞれの在留資格間の関係性や、そこに「特定技能...続きを読む」がどのように埋め込まれるものなのか、といった点です。 個人的には日本政府がいつまでも「外国の方を便利に使いたい、制度さえ作ればいくらでも来てくれる」というスタンスを今でも取り続けている(いろいろな方面へのポーズの部分があるにしても)のがちょっと信じられないです。いろいろな国で蓄積された取り組み(成功も失敗も含めて)も大いに参考にできるはずなので、今からでも遅くないですし、継続して考え続けてほしいです。 日本に住む誰しも関係があり、考えていかないといけないテーマであるので、新書という媒体にとても適した内容だったように感じました。
移民国家としての日本を統計や制度面からしっかり理解できる本。 ナショナルとグローバルの間にあるレイヤーで使い捨てられる外国人労働者たち。彼らへの視点もこの本を読めばきっと変わってくるはず。 特に「特定技能」についての章は、ニュースに触れていてもわかりづらい点を丁寧に説明してくれているので役立つ。 ...続きを読む 終章はこれから何度でも読み直したいほど示唆に富む。 「大いなる撤退」の時代というバウマンの問題提起が、今の日本にはピッタリ当てはまる。 『今、目の前にふたつの道がある。ー撤退ではなく関与の方へ、周縁化ではなく包摂の方へ、そして排除ではなく連帯の方へ。これは「彼ら」の話ではない。これは「私たち」の問題である。』
「移民」を「周縁化」し、不可視化、排除する社会は、いずれ日本人の弱者も同じように扱うようになる、と洞察はなかなか本質をついていると思う。 「今、目の前にふたつの道があるーー撤退でなく関与の方へ、周縁化ではなく包摂の方へ、そして排除ではなく連帯の方へ。これは「彼ら」の話ではない。これは「私たち」の問題...続きを読むである。」
2019年からの「外国人材の受入れ/総合的対応策」にかかわる解説としては、これを読めばばっちりな1冊。ただ、日本の外国人政策の根っこにある在日コリアンの歴史にほとんど触れていないのが、竜頭蛇尾というか画竜点睛を欠くというか…というのが私のちょっと不満なところです。ゆえに☆4つ。
入管制度の建前と実態の乖離、そのことがもたらす人権問題の現状をコンパクトにまとめている良書。過度に感情によらず、数字に基づきつつリアルタイム感のある報告。良い本。
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ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実
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