作品一覧

  • ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実
    3.9
    1巻880円 (税込)
    日本はすでに「移民国家」だ。この30年間で在日外国人の数は94万人から263万人へと約3倍に増加し、永住権を持つ外国人も100万人を突破した。2019年春からは外国人労働者の受け入れがさらに拡大されることも決まっている。私たちは「平成」の時代に起きたこの地殻変動を正しく認識できているだろうか? いま必要なのは、この「遅れてきた移民国家」の簡単な見取り図だ。「日本」はどこから来てどこに向かうのか?
  • 密航のち洗濯 ときどき作家
    4.4
    1巻1,980円 (税込)
    〈密航〉は危険な言葉、残忍な言葉だ。だからこれほど丁寧に、大事に、すみずみまで心を砕いて本にする人たちがいる。書き残してくれて、保存してくれて、調べてくれて本当にありがとう。100年を超えるこのリレーのアンカーは、読む私たちだ。心からお薦めする。 ――斎藤真理子さん(翻訳者) 本書を通して、「日本人である」ということの複雑さ、曖昧さ、寄る辺のなさを、多くの「日本人」の読者に知ってほしいと切に願います。 ――ドミニク・チェンさん(早稲田大学文学学術院教授) 【本書の内容】 1946年夏。朝鮮から日本へ、 男は「密航」で海を渡った。 日本人から朝鮮人へ、 女は裕福な家を捨てて男と結婚した。 貧しい二人はやがて洗濯屋をはじめる。 朝鮮と日本の間の海を合法的に渡ることがほぼ不可能だった時代。それでも生きていくために船に乗った人々の移動は「密航」と呼ばれた。 1946年夏。一人の男が日本へ「密航」した。彼が生きた植民地期の朝鮮と日本、戦後の東京でつくった家族一人ひとりの人生をたどる。手がかりにしたのは、「その後」を知る子どもたちへのインタビューと、わずかに残された文書群。 「きさまなんかにおれの気持がわかるもんか」 「あなただってわたしの気持はわかりません。わたしは祖国をすてて、あなたをえらんだ女です。朝鮮人の妻として誇りをもって生きたいのです」 植民地、警察、戦争、占領、移動、国籍、戸籍、収容、病、貧困、労働、福祉、ジェンダー、あるいは、誰かが「書くこと」と「書けること」について。 この複雑な、だが決して例外的ではなかった五人の家族が、この国で生きてきた。 蔚山(ウルサン)、釜山、山口、東京―― ゆかりの土地を歩きながら、100年を超える歴史を丹念に描き出していく。ウェブマガジン『ニッポン複雑紀行』初の書籍化企画。 【洗濯屋の家族】 [父]尹紫遠 ユン ジャウォン 1911‐64年。朝鮮・蔚山生まれ。植民地期に12歳で渡日し、戦後に「密航」で再渡日する。洗濯屋などの仕事をしながら、作家としての活動も続けた。1946-64年に日記を書いた。 [母]大津登志子 おおつ としこ 1924‐2014年。東京・千駄ヶ谷の裕福な家庭に生まれる。「満洲」で敗戦を迎えたのちに「引揚げ」を経験。その後、12歳年上の尹紫遠と結婚したことで「朝鮮人」となった。 [長男]泰玄 テヒョン/たいげん 1949年‐。東京生まれ。朝鮮学校、夜間中学、定時制高校、上智大学を経て、イギリス系の金融機関に勤めた。 [長女]逸己 いつこ/イルギ 1951年‐。東京生まれ。朝鮮学校、夜間中学、定時制高校を経て、20歳で長男を出産。産業ロボットの工場(こうば)で長く働いた。 [次男]泰眞 テジン/たいしん 1959‐2014年。東京生まれ。兄と同じく、上智大学卒業後に金融業界に就職。幼い頃から体が弱く、50代で亡くなった。

ユーザーレビュー

  • 密航のち洗濯 ときどき作家

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    ネタバレ

     1911年蔚山生まれ、戦時期を東京で過ごし、1946年に密航で再び日本の地に渡った尹徳祚(尹致遠)とその妻・大津登志子、息子・泰玄と娘・逸己の生の軌跡をたどったドキュメンタリー。ライターの望月氏と研究者の宋惠媛氏との協働作業を通じて、戦争と国家・社会のはざまで翻弄された家族が懸命に生きた時間がたどり直される。戦後日本の入管管理政策と朝鮮人政策、戸籍制度がいかに場当たり的で矛盾に満ちたものだったか、そして、その事実に対して日本のマジョリティがいかに無知で無自覚だったかを改めて突きつけられた。そのひとびとも、マジョリティのすぐ近くで生きていたのに。

     おそらくこの本と宋惠媛氏が世に送り出した尹

    0
    2025年05月19日
  • 密航のち洗濯 ときどき作家

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    日本の植民地支配からようやく解放された人びとが、祖国朝鮮が貧困と分断、戦乱に陥る中、生き延びるために旧宗主国への「密航」という手段を択ばなければならなかった時代に、その体験を書き残すことができたほぼ唯一の作家、伊紫遠。極貧生活の中で洗濯屋の仕事の合間を縫って小説を書き、若くして死んだ彼とその家族の人生の足どりを、ていねいにたどりなおしていく。
    国籍の剥奪や戸籍の変更など、おおまかな事実としては知っていた帝国日本の崩壊(と再編)にともなうさまざまな政策制度が、個人のうえに轍を刻むときにどれほど残酷なことをするのか、本書を読みながら何度も深くため息をつかなければならなかった。表紙のイラストは、貧し

    0
    2025年03月19日
  • 密航のち洗濯 ときどき作家

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    尹紫遠 ユンジャウォン
    植民地期に12歳で渡日し、戦後に「密航」で再渡日する。日本女性と結婚。洗濯屋など仕事をしながら、作家としての活動も続けた。

    彼の数少ない作品や日記,手紙,又三人の子供達のうち今存命の二人の子供達からのインタビューから浮かび上がって来る「尹紫遠」の人生を辿る“旅” 。まさしく二人の著者達と写真家は「尹紫遠」の足跡を一歩一歩訪ね歩く。

    そこから彼と彼の家族が翻弄された“国家,戸籍,外国人登録。教育,労働、福祉,社会保障。”
    戦後日本社会における少数者であるが故に彼らが受けた苦しみ。朝鮮の人々の民族史でもある。

    日本の植民地期、戦前,戦後の朝鮮の人々の苦難については 少

    0
    2025年02月08日
  • 密航のち洗濯 ときどき作家

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    一人の在日韓国人とその家族を追ったノンフィクション。実際に転換点となった土地を訪れるルポルタージュでもある。
    日本史において朝鮮人というのは重い存在。事実から目を瞑る人も多いが、消せない歴史であろう。
    併合期の挑戦から日本へ、その後終戦後に朝鮮へ、さらに南北分断のさなかの再来日。海峡を密航する切ない内容。本書の主役尹紫遠(ユンジャウォン)の日記と数少ない小説を題材に家族の歴史を膨らませた良作。

    0
    2024年09月09日
  • 密航のち洗濯 ときどき作家

    Posted by ブクログ

    心に沁みました。
    「一人の人間の故郷を奪い、そこに戻ることを阻んだ諸要因を肯定するつもりはない。だが、人も場所も変わり続ける。尹紫遠の居場所はとうの昔になくなっていたはずだ。そういうものだろう。 」

    0
    2024年06月22日

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