和田博文の作品一覧
「和田博文」の「近現代日本思想史 「知」の巨人100人の200冊」「シベリア鉄道紀行史 ──アジアとヨーロッパを結ぶ旅」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
シベリア鉄道初心者が、区間の勾配差や開業初期の機関の出力などを知りたいとふと思い、どこから手をつけるべきかとよく考えもせずに手に取った。目的は達成できなかったが、実に有意義な読書となった。
シベリア鉄道着工直前から第二次世界大戦集結後までの、シベリア鉄道が関係するイベントを史料から列挙している。そういう切り口から納得させられることがあるものだ。
例えば一つ、日露戦争前の日本がロシアに抱いていた恐怖、危機感というもの。大津事件というものを知っていたとしても、動機や背景について理解が及んでいなかった。朝鮮に向かって鉄路がどんどん伸びてくるという一事によって強力な説得力をもたせられた印象がある。
当時は世界中が帝国主義で、清は抵抗も虚しく列強にされるがままだったし、弱さを見せたロシアもまた例外ではなかった。シベリアという難しい土地でなかったならば、切り刻まれていたかもしれない。それについて分厚い本を読んでも今ひとつピンと来なかったシベリア出兵の意味も、鉄路が距離を短縮し得たという背景を踏まえてみるとよりよく分かってくる。
非常に有意義な一冊だった。
Posted by ブクログ
まずその分厚さに驚きますが、1878年~1942年(日本で言うところの明治~昭和戦前期、美術史で言うところの印象派が隆盛してからシュルレアリスムの辺りぐらいまで)のパリに主軸を置き、美術修行として留学している日本人の視点を通しての美術界の動向を描いた一冊。
参考資料のベースになっているのが、日本人が美術雑誌や現地日本語新聞などに書き残した動向・エッセイ等なので、本書を読み進めながら、リアルタイムでの彼らの肌感覚と言いますか、時代感がくみ取れてとても面白かった!
単純に「西洋画の美術史」ではなく、日本人が体験してきた海外留学での苦悩や、「画家」の流行廃り、美術館での展覧会から画商による展示販売へとマーケティングの主戦場が変わっていく流れ、そこに割り込む大恐慌や戦争の影響など、興味深い点がいろいろありました。
Posted by ブクログ
シベリア鉄道の紀行文を辿りながら、シベリア鉄道とそれを取り巻く社会情勢を解説する本。「シベリア鉄道目線でシベリアとその周辺域の戦前史を語る本」と言ってもいい一冊。
シベリア鉄道とセットで作られた東支鉄道(満鉄の北半分)の歴史も含まれ、それが中国との関係ではなく、ロシアやソ連との関係から語られる。かなり興味深い視点を提供してくれる一冊だった。
第一次大戦後のシベリア出兵に関する記述が特に興味深かった。「シベリアに出兵したが、諸外国の干渉で撤兵した」以上のことを中学歴史レベルでは教えてくれないわけですが、その出兵領域がウラル山脈近くまで伸びていたのは初耳。「第二次大戦直後、ソ連にはひどい目にあった」的な日本の文脈に誤りがないのは確かだけど、「シベリアでやられた分、満州・千島でやり返した」という見方をソ連・ロシアが持っていたとしても不思議はない。
文中でも交戦相手の組み合わせの変化で、対日感情が大きく変化する様が紹介されている。また、シベリア鉄道の整備が注目される際、そこから期待される経済効果という利点と、軍事的行為という難点の双方が取り上げられてきたことも紹介されている。
移ろいやすい国民感情に必要以上引っ張られないようにすること、日ロ親交化のデメリットばかりが語られる昨今のマスコミに一定の疑念をもつべきであること、この二つを教訓とすることができた一冊。
なお、鉄道紀行史であるにも関わらず「じゃあ、これに自分も乗ってみたい」といまいち思わせない一冊でもある。
作中の紀行体験に、一番バリエーションがあるのは日欧直通の切符が発売されている時期。「とりあえず乗ってみよう」の気楽さで行けない制度的なめんどくささが、シベリア鉄道の旅情をそそらないのかな、と邪推したくなる一冊でもありました。